例によって予備知識無く見た映画。
「築城せよ!」というタイトルからしててっきり時代ものと思ってましたが、
実のところ舞台は現代だったのでありますよ。
愛知県豊田市に猿投(さなげ)という変わった地名の町があることは知っておりました。
以前の仕事で豊田市(トヨタ自動車の本拠地ですな)に出張する機会が何度かあり、
名古屋から地下鉄鶴舞線から直通する名鉄豊田線に乗ったり、
はたまた豊橋から乗った名鉄本線を知立で名鉄三河線に乗り換えて行ったりもしたですが、
慣れない土地では路線図をじっくり見るもので、その際に目にとまったのが
猿投だったわけでして。
とまれ、そうは言っても猿投自体には行ったことが無かったですが、
果たしてこの「築城せよ!」は猿投の町おこしの話でもあったのですなあ。
見る限り結構な田舎町であることから、
猿投公園という大きなスペースをどうしたら市の活性化に繋げられるかが
懸案事項になっていたという(すでに実際の話でなくて、映画の話ですが)。
市長は工場を誘致して雇用の創出(と企業とのいい仲?)を目論んでいるのですが、
猿投公園に残る石垣にかつてあったろう城を再建することが郷土の誇りにもなり、
また観光資源にもなるであろうする側と対立を深めているのですな。
そんなところへ、城の完成を見ずに亡くなり浮かばれないままになっていた戦国武将、
恩大寺隼人将(歴史的には「隼人正」が普通かと思いますが、映画ではこのように)の魂が
役場の小役人(片岡愛之助)の体を借りて蘇り、領民(と殿様は思っている)に
「築城せよ!」と命じることに。
ところが、自らの蘇りは次の満月のときまで(4日後でしたか)という設定で、一刻の猶予もない。
何となく勢いに気圧されたのと、いささかのお祭り気分で近隣住民こぞって協力、
見事に段ボール造り(!)ながら見上げるような天守を作り上げてしまうのでありますよ。
いやあ、他愛もない話だと分かってはいるものの、
段ボールを重ねて貼り付けて強度を増したりするリアリティーを持たせたりしながら、
どんどん城が立ち上がっていく姿を見ると感動を禁じえないと言いますか。
先に、城を作って町おこしと考えていた面々も、
実際に事を運ぶにあたってはヒト・モノ・カネが無いことで具体化には行き詰っていたわけで、
そのままでは例え段ボールとはいえ、城そのものの姿を目の当たりにすることは
永遠になかったかもしれない。
市長側の計略(この市長というのがかつて殿様を裏切った家臣の末裔という設定)によって、
あとは天辺にしゃちほこ(もちろん段ボール製)を据えるばかりとなったときに
もろくも猿投城は突き崩されてしまうのですが…。
その後の段ボール撤収に勤しむ関係者らの表情は、むしろイキイキしてような気も。
ようするに、考えているだけでは何も出来なかったことが、やり始めてみればできたじゃんと。
町おこしを何にするとしても、自信のようなものが湧いたのではないですかね。
「千里の道も一歩から」ではありませんが、
とにもかくにも「初めの一歩」が無いと事は始まらない。
予めの思案、事前の準備が必要でないということではもちろんないにとしても
始めてみなければ結果に少しも近付くことはないのだよなあ…と改めて。
ばかばかしくも、何だか見た甲斐の感じる映画でありました。
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