「君にそんなことを言う権利はないよ」
またまた藪から棒ですけれど、
この一言を耳にしたときにどのようなシチュエーションを思い浮かべるでありましょうか。
まあ、おそらくはこのような感じではなかろうかと。
シチュエーションその1です。
部下:「課長、今度の人事、絶対おかしいと思いませんか?」
上司:「どうして?」
部下:「Aが昇進するっていうじゃないですか」
上司:「ああ、そうだな」
部下:「そうだなって、そうとう金に汚いって噂ですし」
上司:「噂だろ」
部下:「ですけど、私が人事部長だったら…」
上司」「つべこべ言わずに君も頑張りたまえ。君にそんなことを言う権利はないよ!」
例え話だと思って、それなりの状況を推測してもらえればと思いますが、
要するにここでは「君はそういう権利を持たない」ことを言っているわけですね。
ですが、字面だけから想像を巡らすと全く違った状況になってくるような。
シチュエーションその2です。
部下:「課長、Aのやつが今度の失敗は私のせいだって言うんですよ」
上司:「でも、あの件に君は関わってなかったよな」
部下:「そうなんですよ。でも、私が手伝ってれば納期には遅れなかったって…」
上司:「そりゃ、言いがかりだなあ」
部下:「そうですよね。なのに、お前が始末書書けって言い張っていて」
上司:「ひどいもんだな。君にそんなことを言う権利はないよ、Aには」
シチュエーション1に比べると、多少流れに無理があるようにも感じられますが、
全くあり得ない言い回しとも言えないような。
こちらは「君に対してそういう権利を持たない」ことを言っているという。
もちろん会話の中ではその一言に至る状況がありますから、
両者の状況の判断がつかないということはないでしょう、日本語母語の者にとっては。
ですが、そうでない日本語学習者とってはこういう使用法というのも
受け止めた方に戸惑うところがあるのではないですかね…。
しばらくぶりに膝の痛みを抱えてしまって、思うように展覧会やら何やら出歩けない週末に
ぼんやりしつつもこんなことに気が付いたりした…と、まあ、そんな話でありました。
