ノーベル生理学・医学賞を受賞することになった大村智・北里大学特別栄誉教授が

卒業生とあって、盛り上がりムードの東京理科大学ですが、

理科大卒業生として初めてのノーベル賞 というだけでなく、
日本の私立大学の卒業生として初めてのことなんだそうですね(あまり気に掛けたこともなく…)


と、そんな理科大の神楽坂キャンパスに隣接する東京理科大学近代科学資料館では、
一般相対性理論の発表から100年ということでアインシュタイン展を開催中(12月10日まで)。


HPに「本企画展では、相対性理論を分かり易く解説する…」とありましたので、
「分かりやすくということなら、どれどれ」と覗きに行ってみたのでありますよ。


アインシュタイン展@東京理科大学近代科学資料館


飯田橋駅から外堀通りを市ヶ谷方向に歩いてしばし。
ここには通りに面した部分に大小のビルが軒を連ねて立ち並んでおりますが、
研究社(英語の辞書で有名ですね)のビルの裏側にひっそりと見えてくる二階建ての洋館、
これが東京理科大学近代科学資料館でありました。


東京理科大学近代科学資料館


明治後期の東京物理学校(理科大の前身)の校舎はこんな外観だったようですが、
1991年にその外観を復元して建てられた記念館を今では資料館としているようです。


で、資料館の中でありますけれど、

何せ入場無料でもあり、あまりを多くを期待してはいけないような。


展示の仕方などの点でも1階の常設展部分は田舎の方の郷土資料館かくやの雰囲気でありますし、

2階の企画展(今回はアインシュタイン展ですね)も貴重な一品もの(書簡ですとか)の展示が
多々ある一方で、なんとなあく学園祭での物理部発表コーナーっぽい雰囲気が漂っていたものです。


だからといって決して腐しているわけではなく、
壁面の掲示は(さすがに模造紙にマジックインキではありませんが)
HPの記載のように「分かりやすく」することに腐心したのだとも思います。
それに学生ボランティア(バイト?)が一所懸命に展示解説をしてくれていたり。
(それが反って学園祭らしさを醸すことにもなっているわけですが)


なんだか腐しているような言い方になってしまっているのは本意ではないのですが、
結局のところこの展示で分かったことは「相対性理論が難しい」ということだという体たらくに

我ながら「ふぅ…」という思いがあったからでもありましょう。


時間・空間は絶対的なものでなく相対的なものである…ということの
理屈は何となく分かる気がするものの、感覚としては未だにすうっと入ってこないものですから。


それでも、相対性理論はアインシュタインという一人の天才の賜物と思ってしまうところが
実はそうでなくして、先行の研究者の業績、同時代に研究を進めた学者たちとの切磋琢磨、
こうしたことの上に成り立っているもので、場合によっては他の誰かが先に発表していたかも
ということだったのですなあ。


そんな状況でしたので、翻って1階の常設展の方に目を向けたわけですが、
これが先ほども触れたようにちいとばかり片付いた古道具屋のようではありながら、
(やおら思い出したですが、しばらく前に訪ねた浅草橋の日本文具資料館のよう)
意外に面白いものがあるではないかと。


大きく分けて「計算機の歴史」と「録音技術の歴史」という2つの技術革新史・技術開発史を

展示品で辿ることになってましたけれど、まずもって計算のそもそもは指折り数える次の段階、

小石を置いていって数を数えることになった、その小石のことを古代ギリシアでは

「カルクリ」と言ったそうな。


ラテン語では「カルキュラス」となるようですが、これはさすがに文系頭にもピンとくる。
英語の「calculate」の語源は「小石」にあったとは思いも寄らず。


も少し時代が下って小石では転がりやすいと、その代わりに

「菱の実」を使ったという展示には「まきびし」と書かれていて

「撒き菱?それじゃあ忍者だろうよ」と突っ込みたくなる場面も。


さらに下っては金属メダルが用いられ、近世まで使われたとのことですが、
これをヨーロッパでジュトン(ジェトン、ジェットーネなど)と呼ばれた…となれば、
思い出すのは公衆電話用のコインでありますなあ(何のことやらという世代もおられましょう)。


一方、東洋では中国から日本へと算木が伝わり広く使用されたということで、
映画「天地明察」にも算木で計算するシーンが出てきたと思いますけれど、
そのシーンはここの資料館所蔵の算木を貸し出して撮影されたのだそうでありますよ。


その後には珠の数や形の異なるそろばんのあれこれ、
ネイピアが対数表を作成したことから生み出された計算尺のあれこれが展示されて、
やがて実用的な計算機の時代へと入っていくことになるという。


ちなみに「世界最初の歯車式デジタル計算機」を発明したのはパスカルであったそうな。
ここでわざわざ引用を施したのは「デジタル」という部分に目が留まったからですね。


「デジタル」と「アナログ」という言葉の対比では
前者の方が新しく進歩的なイメージで捉えがちですけれど、
パスカル(1623-1662)の時代のことを「新しく進歩的」とは言いにくいわけで、
両者が必ずしも対置概念でないことに遅まきながら気付いたりするのですよ。


この誤解は多分に、その後の展示にあった「録音技術の歴史」と関わってくるところながら、
ちと長くなってしまいましたので、この辺にしておこうかと。


ということで、アインシュタイン展では「へたれ」ましたが、
いろいろ教えてもらった東京理科大学近代科学資料館なのでありました。


ブログランキング・にほんブログ村へ