結論はシンプルだ。狂気の科学者とは、科学系の学科を押しつける両親によって人生を台なしにされた欲求不満の文学青年のなれの果てである。
教訓 子供の進路には気をつけよう。

これは先に読んだ「Zの喜劇 」の主人公フェリックスが「ドクターZの迷論」として綴る
Z級映画愛してるブログへの書き込みの一節。


ここで槍玉に挙がっているのは怪物を生み出してしまったフランケンシュタイン博士でして、
博士のことを「欲求不満の文学青年」と呼ぶのは、

実はフランケンシュタインの怪物は作られておらず、
あの話全てが妄想(要するに文学青年のなれの果ての産物)だ…というわけです。


まあ、そのこと自体を掘り下げようとかいうつもりは毛頭無いわけですが、
(だいたい話の作者はメアリー・シェリーですし…)
引っかかるところは「両親によって人生を台なしにされた」云々のところと
「教訓 子供の進路には気をつけよう」の部分でありますね。


さらっとこういうことを差し挟んでくるものですから、全編ばかばかしさの連続でありながら

「Zの喜劇」の作者を舐めてはいけないとも言えましょうけれど、
とまれ唐突にここで思い出したのは、しばらく前に見たインド映画「きっと、うまくいく」なのですね。


きっと、うまくいく [DVD]/アーミル・カーン,カリーナ・カプール,R・マーダヴァン


英語でのタイトルが「3 idiots」という身も蓋もないものですので、
ともするとZ級映画として引き合いに出したのでは?

と思われるやもしれませんですが、そうではなく。


直訳では「三ばか大将」みたいなものにしかならないことから、
さすがに邦題の「きっと、うまくいく」はよかれと考えてつけたものでありましょう。
もちろんストーリーと関係なくて付けられたものではなく、

あわやの場面を乗り切る際に呟く主人公ランチョーの
ひと言(All is well.)から持ってきたようでありますね。


何かしら「こりゃ、まずい!」という事態に直面したとき、

胸に手を当てつつ「All is well.」とつぶやく。
即座にどう対処したらいいか分からなくとも、「All is well.」と自分に暗示を掛けて、

まず落ち着き、ポジティブな方向で考えてみれば、妙案が浮かぶかも…。


インドでも有数とされる工科大学を舞台に
ランチョーと学友のファルハーン、ラージューの3人がドタバタ学園コメディーを繰り広げる。
こうした一面の陰でファルハーンが悩みを抱えていることがだんだん分かってくるのですね。


敷かれたレールに乗るならば、通う工科大学を優秀な成績で卒業することで
エンジニアとしての将来は約束されたようなもの。
ファルハーンの父親としてもそれを見越して、息子をこの大学に入れた経緯があるようですし。


ところが、当のファルハーン本人は少しもエンジニアになりたいと思ってはおらず…

というところで、ようやっと冒頭の引用との繋がりが詳らかになってきました。


ここで思案のしどころなのは、

子供の将来に親がどこまで口出しできましょうか…ということなのでして、

親には親のものさしがあって、そのものさしを当てて考える限り
こうあって欲しい(あるいはこうあって欲しくない)と考えてしまうことは当然あろうかと。


それが子供の考えるところと折り合いが付くのであれば、問題は表面化しませんが
(場合によって子供が考える年齢以前にレールを敷いてしまうケースもありますね)
子供なりに考えたところとどうもうまく折り合わない場合…難しいですね。


映画の中のファルハーンの場合も、
先ほどまで書いたところでは父親の強引さが目立つばかりになってしまっているものの、
ではファルハーンの望みは何ぞ?ですが「夢は動物写真家になること」と知ってしまうと
こちらはこちらで現実的か(それで食っていけるのか…)?とも

思ってしまうところなのではないかと。


「子供の将来に親がどこまで口出しできましょうか」という疑問を呈したですが、
結構この点は一般的な話としてどうだということになってしまいますけれど、
かなり属人的な環境やら素養、才能(の予感)やらに関わってくる問題なのでしょう。


仮に親子が一致してこうだと邁進した結果となることだって無いとはいえず、
個別具体的な話にならざるを得ないように思うところです。

それでもどの場合にも、親も子も相互に相手の考えに耳を傾ける必要はあるでしょうけれど。


と、大層な問題を振ったわりにはきっぱり結論に至っておりませんが、

まあ、映画自体はとても面白いものですので、未見の方は機会がありましたら、どうぞ。
インド映画 らしく171分という長尺ながら、いつもながらの盛りだくさんな内容は飽きさせませんし。


…というところで、個人的には将来のことに

およそ口出しすることのなかった両親のところへ行ってまいる関係で、明日はお休みを賜ります。

母親の誕生日が近くなって、外で少々宴でもということになっておりまして。

ではでは…。


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