アントニオ・ヴィヴァルディはなかなかに多作な作曲家でありますけれど、

分けても協奏曲は500とも600とも言われるほどにたくさん残っていますですね。


ですが、同じ曲を500回書いた…てなふうに揶揄されることもあるだけに

ああ、これは作品番号○○番のあの曲ね」と即座に認識できるのは

根っからのバロック音楽ファンかヴィヴァルディ好きか。

もちろん個人的にそんな域にはとてもとても…。


ということからしても

「ヴィヴァルディの曲は区別がつかない…とお嘆きの諸兄に

 ♪やぁっぱりぃおぉおれはぁ~あぁあ~あ、カルミニョ~ラぁ!」…なのでして。

(これがさる日本酒のCMのパクリであることは、分かる方には分かるのではないかと。笑)


三鷹のホールで、ジュリアーノ・カルミニョーラ(Vn)とヴェニス・バロック・オーケストラの

演奏会があったものですから、聴いてきたのでありますよ。


ジュリアーノ・カルミニョーラwithヴェニス・バロック・オーケストラ演奏会@三鷹市芸術文化センター風のホール


バロック系のアンサンブルの来日公演プログラムといえば、

ヴィヴァルディの「四季」かバッハかてなところが定番メニューなわけですが、

今回の演奏会はそれほどにとっつきやすいものでは一線を画しているのですね。


全8曲のうちヴィヴァルディによるヴァイオリン協奏曲とされるものが5曲。

そのタイトルたるや、「ヴァイオリン協奏曲ホ短調RV281」、「ヴァイオリン協奏曲ハ長調RV187」、

「ヴァイオリン協奏曲ニ長調RV232」…といった具合で、

いずれも曲名を見てメロディーが浮かんでくるなんつうことは全くない(威張れた話ではないですが)。


それだけに、ともするとずうっと演奏されている曲がいつまで聴いていても

「さっきの曲とどう違う?」てなふうに思ってしまったりする恐れがあるところながら、

カルミニョーラは違うのですなあ。


かつて聴いたときに比べて(歳のせいもあってか?)トンガリ具合は少々陰をひそめた気もしますが、

それでも緩急、強弱、メリハリの聴いた演奏には自ずと曲の個性が出て来るというもので。


また、パフォーマンス色豊かなボウイングや高揚感に応じて踏みならされる靴音は

ライブならではの興趣を添えますし、またソロの出待ちをする間の、

曲に身を委ねた浮遊状態とも思われる自由な動きなどからも、

ヴィヴァルディを聴く(見る?)のはこんなにも楽しいことであるかと思ってしまうのでありますよ。


フライヤーの左上に配された写真から想像するのとはかなり異なる異様なまでの存在感。

初めてライブを聴いたときには「魔術師か、はたまた錬金術師か?!」てな印象を残しましたけれど、

つくづくカリスマ性のあるヴァイオリニストだなと思うわけです。


ところが、そんな雰囲気とは違ってサービス精神旺盛でありまして、

以前もそうでしたが今回もまた、疲れ知らずにアンコールをばんばん演奏してくれるという。


疲れ知らずにといいますのは、終幕に穏やかな曲で締めるみたいな発想はないのか、

シャープにエッジの立った演奏で攻めまくる感じですかね。

アンコール3曲目にして、「ここで出たか!」のヴィヴァルディ「四季」ですが、

よりにもよって「夏」の第3楽章という疾風怒濤の音楽でありますよ。


むしろ聴いている方がさすがに疲れてきて、またこの疾風怒涛に満足したこともあって

「夏」の終わりに席を立ちましたですが、ホールを出るころにはどうやらアンコール4曲目が…。

いやはや、大したもんですなあ。こちらはこちらでいやあ、スカッとしたなあと。


ところで、カルミニョーラの演奏による「夏」は

映画「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い」の冒頭で聴くことができますので、

機会があればお試しくださいまし。


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