六本木の21_21 DESIGN SIGHT に行ったとなれば、
近くのそこここに美術館、博物館があるわけですけれど、
それらの中からわざわざはしごするのが「これ…?」と、我ながらも。
しかも、青山までてくてく歩いていったのですから。
それほどに興味をそそられたのか?となれば、それもそうなんですが、
会期終了間際の切迫感に後押しされたもの事実ではありますね。
ということで行ってしまった「ニッポンの前掛け」展@伊藤忠青山アートスクエアでありました。
昔は酒屋さんを主によおく見かけた紺地の前掛けですけれど、
「おしゃれじゃない」ということなのか、目にする機会はおよそ無くなっているような。
ですが、この展示では「ニッポンの!」といささか誇らしげに言っているのは訳があるようで。
世界各国を見渡してみても、腰から下にまとう布に広告宣伝が入り、腰を守る仕事着としても使われてきた衣類は他に見られず、日本独自で発展した文化と言えます。
なるほど、およそ気にかけていませんでしたが、
「腰骨をグッと締めつけるので、重たい荷物を持つ労働でも腰が悪くなりにくい」として、
「腰を守る仕事着」という性質を兼ね備えていたのですなあ。
しかも効能はそればかりではないそうな。
紐を前にまわし、丹田のあたりグッと締めることで、体の軸が安定し、体内の気の流れや、血液の循環も良くなると言われています。同時に、心の落ち着きにもつながっていきます。
いささか「ほんとかよ」との印象ではあるものの、
例えば「腹を括る」、「腹を据える」といった用例からも、
お腹(丹田)をグッとしめることの意味合いが日本古来のものでもあろうかと言われれば、
なんとなくそんな気もしてくるところです。
で、会場内のようすですけれど、いやあ、壮観ではありませんか。
確かに酒屋系が多い(今にして思えば、品物が重いだけに腰を気にしたのでしょう)ものの、
決してそればかりではありませんですね、業種は実にさまざま。
あっちでもこっちでもこの前掛けが使われていたことがわかります。
先に日本古来なんつうことをつい言ってしまいましですが、
起源としては15世紀にさかのぼるようであるものの、その実、
どこでもかしこでも使われるという一大ブレイクは1950~60年代なのだそうで。
(そんなに昔じゃないと思うかどうかは、人それぞれで…)
そんな中で一枚だけ特別扱いでガラス越しに見ることになる前掛けがありまして、
何でも100年前の前掛けなんだそうです。レアものなんですかね。
ただ、実用品として見る限り、何度も繰り返し洗われてきた結果の、
あたかも洗いざらしのジーンズのような風合いが味わい深く、
長持ちする点も好印象ではなかろうかと。
そうなりますと、やっぱりこれの復古に目をつける人もいるわけで、
現代の前掛けは色とりどりでデザインもさまざまに、じわじわ展開中であるようす。
忘れかけられたようなものでも、きちんと評価できるいいところがあればリバイバルする。
これでニッポンの個人商店も元気になるといいのですが…。
てなことを考えたりする「ニッポンの前掛け」展なのでありました。


