先にも書きましたように、館林というところは
決して楽ではないながらも東京に通勤できない距離ではないわけでして、
そこにわざわざ宿泊するというのも「どうよ…」と思うところではありました。


ですが、どのみち1日では周りきれないことが想定されましたし、
日帰りを2回繰り返すというのもこれまた「どうよ…」感があったものですから、
ここはいっそのことお泊りにしてしまったという。


だからこそ、館林での晩飯をゆったりとれるてなことにもなるわけですが、
ではゆったりと何を食したらよいのか…これにはいささかの悩みが。

何せ館林と言ったら偏に「うどん」なのでありまして、
それ以外にめぼしい名物料理もなさそうだったものですから。


と、そんな折に登場するのが、旅の友としていた田山花袋の「田舎教師」
こんな一節があったのですね。

利根川を渡って一里、其処には板倉沼というのがある。沼の畔に雷電を祭った神社がある。其処等あたりは利根川の河底よりも低い卑湿地で、小さい沼が一面にあった。上州から来る鮒や雑魚の旨いのは、此処等でも評判だ。

「田舎教師」の舞台は、館林の南、利根川を渡って東京寄りの埼玉県羽生でありますから、
そこでも上州から来る川魚の旨さが評判であったというわけです。


となればですよ、その上州にあっては川魚…と思うところでして、

なるほど何軒かは川魚料理というのがありそうなようす。
ただ、今では基本的にうなぎ屋であるようなんですが、

他のものも食せる可能性無きにしも非ず…と、方針決定をしたのでありました。


館林駅から歩いて5~6分でしょうか、料理屋に到着。
壁に貼られたお品書きを見るに、「やっぱりうなぎ屋であったか…」と。


ですが、これは落胆ではなくして、たちどころに喜びに変わったわけでありまして、

何となればその値段!うな重が特上で2,700円!

こりゃあ、東京では絶対に食べることのできない値段です。


うなぎの品薄が報ぜられて以来、高止まりの傾向ではありますが、
どの程度で留まっているかには地域差があるのですなあ。


店のご主人の曰く、材料が入りにくいのは如何ともしがたく多少の値上げはやむなしとしたか、
市内というか近所の人と観光客を含む遠来者との来店者比率が
かつては8:2であったものが6:4に変化したそうな。


ご近所さんの反応は「値上がりしたなら控えよう」であるのに対して、
例えば東京からは「安く食べられる」とやってくる人が増えたというわけですね。
実際、東京人の感覚からすれば、交通費掛けても来ちゃおかなとも思いますですよ。


で、お品書きによれば、鯉のあらいがあるので、まずはこれとビールを頼んで、
うな重の仕上がりを待つことに。


鯉のあらい


どこで育った鯉なのか、締まった身の歯ごたえがよく、
ビールのおともに好適でしたですなあ。


がっつりうなぎだけでいくなら特上としたところですが、こちらも食べたいとの思いから、
うな重は三段階の真ん中(いちばん下は「うな丼(並)」と書いてありました)にして、
待つことしばし、出てまいりました。


館林のうな重


いやあ、うなぎは旨いですなぁ。
てか、蒲焼という旨い食べ方を発明した人が偉い。
それがない外国ではさほどうなぎを食するでなく、
うなぎのほとんど全部を日本人が食しているといっても過言ではないわけですから。


帰りがけ、今度は出入口前にパックに入れて積んである「川えび」が気になることに。
これも土産代わりに(って、自分で食べるんですが)ひとパックもらって帰ることにして、
「川えび、ここらでとれるんですか?」と、聞くんなら買う前にすればよかったなと。

「いいやあ、この辺ではねぇ…。印旛沼じゃないですかね」と(千葉県か…)。


川えび(印旛沼の?)


お酒の肴に摘んではむしゃむしゃ、

まあ、旨かったのでもはやどこ産でもとは思いますけれど…。