例によって古い映画などで、
録画はしたものの長らくほったらかしにしてあるてなものがいくつかありまして、
消化試合的に見てしまおうと思ったひとつ。
松本清張原作だったなと思い込んでいたところが
どうも様子がおかしいと思えば、西村寿行の原作。
映画のタイトルは「化石の荒野」で、よく考えてみれば松本清張のは「球形の荒野」でしたですね。
似てるのは「荒野」だけかと…(老人力、老人力)。
そうは言っても見始めてしまったものですから、取り敢えずは見てみたですが、
どうも日本のハードボイルド風ってのは性に合わないのですよね。
しばらく前にNHKでレイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」を
日本に置き換えたドラマが放送されましたですが、試みに初回を見て「もう、だめ…」と。
おそらくハードボイルド風味の話には
乾いた空気みたいなものが必要な気がしてるといったらいいですかね。
場面として、トレンチコートの襟を立て、ソフトを目深に被り、
じょぼじょぼ雨に降り込められて…なんつうシーンが浮かんだりもすると、
「雨にぬれそぼってんだから、乾いた空気じゃないじゃん」と一人ボケ突っ込みしてますが、
それでもやっぱり空気感が違うというか…。
台詞にしても(そのまんまを覚えてはいませんが)、
何かしらいわくはありそうながらどうも悪い奴らとしか思えない連中の
罠にはまった刑事(渡瀬恒彦でございます)が、
いっそのことこちら(悪い奴ら)側で働かないかともちかけられて、
「…事が終わったらオレのどてっぱらにどかんとボーナスのお返しなんてことはないだろうな」
みたいなことを言うわけですね。
ハンフリー・ボガートあたりの映画字幕ならいざ知らず、
すっと(日本語で)語られてしまいますとね、引けますね…。
と、のっけから腐しまくりの感ありですけれど、
「お!」と思いましたのは、果たして故意か偶然にそう思っただけなのか、
「こりゃあ、アメリカ映画へのオマージュを意識しているのかなということ。
まあ、有体に言うと、どこかで見たようなシーンだ…というのが、
気付いただけで3箇所ほどあったのでありますよ。
まずは剣山から下山してというところですから、おそらく高松市街の設定でしょうけれど、
香川県警のパトカーとのカーチェイスのシーン。
こう言ってはなんですが、香川県警にこんなにたくさんパトカーが配備されているの?というほど
寄ってたかって主人公が乗っている車を追いかけ回すわけですが、
結局のところはパトカーどうしのクラッシュが生じて、追われる方はまんまと逃走。
このパトカーにパトカーが追突し、さらにその上に折り重なって、
パトカーのスクラップの山ができあがる…「ブルース・ブラザース」ですよね。
場面は変わって、悪い奴らと対決に及んだ主人公が奴らのリーダーを追い詰めての一騎討ち。
その追い詰めた場所というのが、オフでひと気のない野球場でありますよ。
1982年製作の映画で、ロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)の看板がありましたら、
スタンドの急傾斜が懐かしい川崎球場か?!と思うところですが、それはともかくとして、
誰もいない野球場での追いつ追われつの果てに敵はグラウンドの中央で倒れ込む。
これを見下ろし、銃を構える主人公…って、「ダーティー・ハリー」ですよね、これ。
最後の最後、悪い奴らの陰にはさらに別の悪い奴らがおり
(この辺りの筋書きは手が込んでいるところではありますが)
それとの最終決戦が北海道の大雪山中で繰り広げられる。
(何故、大雪山かにはちゃんとストーリー上の理由はありますので、念の為)
ここでまたも敵との一騎討ちとなるわけですが、ほとんど相撃ちかという状況ながら
立ち上がるのはもちろん主人公だけ。
撃たれた自覚はあるのにと、胸をまさぐって取り出したのは
決戦に臨むにあたってこの事件を通じて関わりを持つに至った女性(浅野温子)から
渡されていたペンダントでありました。
敵の弾はこのペンダント・ヘッドに当たったがために、
主人公は一命を取り留めて…とは、考えるまでもなく「荒野の一ドル銀貨」!
ということですね、製作側の意図とはおそらくかけ離れておりましょうが、
苦笑しきりで、ある意味、面白く見ることができましたですよ。
こういうこともあるんですなあ…。
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