例によって内容も知らず、そう言えばこれも見てなかった…というだけで見てみたのが、
映画「キャプテン・フィリップス」でありました。


キャプテン・フィリップス [DVD]/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


トム・ハンクス演ずるところは貨物船の船長、これがキャプテン・フィリップスですが、
船長以下の船員を乗せた船がアラビア海を航海中、

ソマリア沿岸からやってきた海賊に襲われるというお話。


ここでもまた世間知らずが露呈しますが、昨今の海賊とはこうなんだ…と思いましたですね。

「海賊」という言葉はどうしても大航海時代あたりを想起させるような「古さ」を纏っている気がして、
それだけに「海賊」といって像を結ぶのはカリブの海賊キャプテン・スパロウとか
「ピーター・
パン」のフック船長とかになってしまう(だいぶディズニーの感化が強いのかも)。


相手の船を威嚇するに十分な大きさを持った船にどくろのマーク。

近づいていって縄梯子やらで相手側に大刀を持って乗り込む海賊たち。
守る側も負けてはおられんと剣を取り出して、やおらはじまるちゃんちゃんばらばら…。


ところが、今日びの海賊の船はなんとも小さいのですな。
その代わり、スピードボートとも言われるように沖釣りに乗せてってもらうような小さな船、
その船体にはずいぶんと不似合いな出力のエンジン(ヤマハ発動機製が人気とか?)を取り付け、
猛然と巨大なコンテナ船やタンカーに追いすがってくるという。


そして、体格の彼我の差をものともせず舷側に近寄って、

先っぽがフック状になった鉄ばしごを引っかけ、
あれよあれよという間に3~4人の海賊が乗り込んでしまうわけです。


が、たったの3~4人?と思うところですが、
古えの海賊とは全く異なってサブマシンガンで武装していますから、
たった一人で何十人もの船員を黙らせることができてしまうのですね。


もっとも、貨物船の方でもかつての帆船時代に比べて格段に船体が大きくなったにも関わらず、
コストとして掛かるのは船員の人件費であることからも、

どんどん少人数で操船できるような進化を遂げたがため、
乗り込まれた側もまた少ない人数なのですけれど。


ところで、たかだか3~4人で乗り込んでいって

「海賊だぁ~」と言ったところで(本人はそう名乗りませんが)
その後はいったいどうするのかと思いきや、船ごと乗っ取ってしまうということもあるそうで。


現実の話として、奪い去られた船が塗装を代えて、航海していた…てなこともあったようです。

そして、海賊にとって最も大きな金儲けというのが、船員たちを人質にして身代金をとるというもの。


映画「キャプテン・フィリップス」でも(紆余曲折は端折りますが)船長が人質とされ、
身代金が要求される場面がありましたですね。


この辺り、古えの海賊には

海の男のロマンみたいな雰囲気が漂っていたですが(と、これも映画っぽいのかも)、
現代の海賊はそうしたところは皆無、非常にビジネスライク。
金が払われないなら、即座に殺してしまうとか。


ですが、何だってこんなことを生業にすることになってしまったのか。
映画では、海賊グループの主犯格である漁師あがりの若者が
「大国が大きな船でやってきて、ソマリアの海の魚を皆捕って行ってしまう…」

てなことを呟く場面があったりしまして、こうなりますと

大型店の展開で店じまいを余儀なくされた小売店のようであって、「あわれやな」とも思ったり。


ですが、職にあぶれた漁師グループが数人集まったからといって、

俄かに海賊業に従事できるわけでもなかろうにと。


映画の冒頭部分でちらり示唆されていたように、

小さな海賊グループを牛耳る黒幕組織が控えているわけですね。

でなければ、小舟に不似合いな大型エンジンを用意することも、
ましてやサブマシンガンで武装することなどできようはずもない。


必要な品々は全部貸与するから、船を襲ってこいと。

成功すればそれなりの見返りを、てなことですが、
先ほどの言った身代金にしても当たり前のように億単位の金銭で、

そのほとんどは黒幕組織のものとなり、

それなりの組織であるが故にマネーロンダリングもできて、新たに武器も買い…と連鎖していく。


長らく内戦の続いたソマリアでは、

無政府状態で誰も何らの治安維持も取り締まりもできないし、してこないところから
密輸の一大拠点になって、それこそ武器だの麻薬だのが通り過ぎ放題の状況で、
羽振りをきかすのは悪知恵に長けた連中ばかりというわけですね。
普通の人はそうした連中の使いっぱになって生きるしかない…。


と、映画で見たのは単に切り口であって、すっかりソマリアと海賊の話になっていて、
「どうして、世界はこんななんだ、コンチクショー」と大酒を飲んだときの小室等のような言葉を
(昔、ラジオ番組で吉田拓郎との対談で出た話をふいに思い出しただけですが)
吐いてしまいそうにもなりますですね。


2012年に正式な政府ができているようですので、

少しでもいい方向へ向かうとよいのですけれど。


ちなみにここでの話は映画を見た後に

「世界を動かす海賊」というちくま新書を参考にしたのですけれど、
ソマリア沿岸の海賊のことがどうしてそうなってしまったか…といった点には「ふ~む」と思ったですが、
全般的には個人的に全くテイストの合わない本でありました。
海上自衛隊が海外では「Japan Navy」と言われているてなことを
さらっと書かれましてもねえ…。