朝一番に母親から電話が。

こういうときは必ず良くないことなわけですが、近頃の中ではもっともよろしくなさそうな話。


いつもは朝早く起きだして散歩に出かける父親がいつまでたっても起きない。

どうやらくらくらして起きられないらしい。

血圧も高いようだ。

顔色も悪い。

朝ごはんは少し食べたが、もどしてしまった…云々。


病院に連れていこうにも母親は足が悪く、思うに任せないものですから、

救急車を思ったが、それは父親が嫌だ!と言っているらしい。

嫌だとかどうとか言ってる場合ではないように思うのですが…。


とまれ、取るものも取りあえず「そっち、行くから」とは言ったものの、

ドアツードアで1時間半強の移動。

まあ、高齢者の二人住いだから、こういうこともあるだろうことは頭の隅におきつつも、

普段の元気さに油断していたといいますか。


向こうの最寄駅から家の前まで乗り付けたタクシーに父親を連れ込んで、病院に急行。

ですが、大きい病院というのは繁盛してるというのか、とにかく患者が多いですなあ。

くらくらするとか、多少もどしたとか、そんな患者は山のようにいるわけですね。


そして、血圧が高いとなると普段もらっている薬のことがあるから

とにかくかかりつけの医師に相談してくださいとのこと。

すなわち、ここでは診られません、診るにしても順番待ちが長いですよ云々。


そこで、母親から近所の掛かり付けに電話をしてもらって、

またタクシーで移動、ようやっと診察を受けて…という経過をたどったわけでして。


結局のところ、大したことは全くなくって、

掛かり付けからの帰りにはしっかり歩いて帰ってきました。


で、後から考えたわけですが、

何せ年齢が年齢なので、何が悪いのか検査してもらったりした方がよかろう、

掛かり付けの医院というのが、自分が子供の頃に行ったことのあるところで

型どおりの診察に「風邪ですね、お注射しときましょう」と言うのだけが記憶に残っていたもので

「あそこか?!」と思ったものですから、大きめの病院に連れてってしまった。


ところが、大きな病院というのは、皆似たようなことを考えてくるのか、

次から次からわんさか患者がやってくる。


おそらく中には大したこともないのに、早めの処置を大騒ぎして求めたりするような、

そんな患者もままおるのでしょう、そんなのにいちいち構っていられない…となる

病院側の気持ちも分からなくはない。


誰にとっても家族を思う気持ちはあるわけで、

冷静に他人の病状と比べて、ずっと後回しでいいですてなことを言う人はいないでしょうし。


ともかく考えたことのひとつは、

「ああ、こういう状況だから、ついつい救急車を呼んでしまうのだな」ということなのですね。


そして、もうひとつですが、近所の掛かり付けというのを侮ってはいけんということ。

結局、改めてそちらに出向いてみれば、これが何十年も前の記憶にある町医者とは

ずいぶん趣きの違うものになっていたのでありました。


小さな病院然としていて、診察室やら処置室、採尿室(トイレじゃない)なんつうのがあったり、

看護師が何人もいたり、連れていったものにまで分かるように説明をしてくれるしと、

ともかく昔の面影は全くなし。


考えてみれば、普段の体調をいちばん知っている人でしょうから、

そこの見立てで自分のところで手に余る処置なり、検査なりが必要なら

大きいところに回してくれましょうし、そんなふうに考えると近所の掛かり付けてのは

侮るどころか大事に付き合った方がいいのだなぁと思ったですよ。


そんなふうなことを考えながら、

家に戻ったところで父親にレトルト粥を食べさせたところ、

その顔つきに「物足りないのか」と問えば、素直にうなづく。


まあ、朝飯みたいなものだからなぁとは思ったものの、

午前中すっかり振り回された感が募るのでありました。

ま、何事でもなく良かったんですけどね…。