さてはて、かくも熊本市内であれこれ と見て廻っておきながら言うのもなんですが、
このほど熊本を訪ねた一番の目的はそれらにあらずなのですね。


熊本市からは東南の方角になりましょうか、バスに乗って1時間半弱、
熊本県熊本県上益城郡山都町にある「通潤橋」という石造りの橋を見に行く

というのがメイン・イベント。


そも友人と語らって「行きたいと思うところには行っておかねば」となったその場所が

通潤橋でありました。


場所が場所だけに、とても熊本城下紀行の範囲内ではない。
ですので、取り敢えず「番外」と注釈をした上で、通潤橋探訪記の始まりであります。


江戸時代末期、嘉永七年(1854年)に完成した石造りのアーチ橋というだけでも興味深いですが、
これが実は人を対岸に渡らせるための橋ではないのでして、渡すものは「水」、

つまり水道橋なのですね。


今でも現役で使われて、橋の内部を水流が通り、地域の農業に役だっているという。
ですが、農繁期を除き、橋の中央部分から水を放出させる観光放水を見ることができ、
貴重な観光資源ともなっている。で、その放水を見に行ったわけです。


先にバスで1時間半弱と言いましたですが、なかなかに不便なところで
多くの人は自家用車だかレンタカーだかで来るようですし、
曜日によっては熊本市内から定期観光バスが走るようので、

それを利用する人もいるでしょう。


が、あいにくと定期観光バスは日曜だけ運休するのに、
友人とスケジュールを合わせられたのが自動車でまさに日曜日。
路線バスでもって、12時の放水に間に合わせるためには

市内の交通センターを8時55分に出るバスしかない。
ゆったり構えて向かうことにしたですよ。


路線図によりますと「通潤橋前」なるバス停はあるものの、

この8時55分発のバスはどうやらそこを通らず途中で別方向へ曲がってしまう路線だったもので、

その曲がってしまう直前の「浜町」というバス停で下車。


山中の小さな町の、おそらくはメインストリートである道を、

友人と語らいつつ歩いて行ったのでありました。

それまで真っ直ぐだった道が右に回り込むようにカーブし、

少し上り坂でもあるなとなったと思ったところ、
実に唐突にそれは姿を現したのでありますよ。


通潤橋遠景


実のところ、このような出現の仕方は想定外でありまして、
先ほど来の道を進んでいくと、まず道の駅通潤橋というところに到達し、
その辺から今少し山道っぽいところを進んだ先でもあろうかと予測していたわけです。


それだけに、この不意打ちはファーストインプレッションとして実に刺激的で、
たぶん「通潤橋前」のバス停まですいーっと来てしまって、

バスの中から「あ、あれね」という出くわし方をしたら、
これほど印象的な出会いにはならなかったろうと思うと、

途中から歩くしかない選択肢に反ってありがたみが。


通潤橋を望む布田保之助像


てなことを思いつつ、ずいずいと橋に近づいていきますと、
この橋の建設に尽力した布田保之助(近在の惣庄屋だったそうな)の像が

橋に向かって立っておりました。
山がちで利水に苦労があったところに、相当な尽力をした人のようです。

通潤橋への登り道


橋の脇から登って行きますが、間近でみるとお城の石垣と同じような積み石で、
「ひとつ外れたら、あっという間に瓦解するだろうなあ」と思ったり。
橋の上には「本来、人が渡るための橋ではないんで、自己責任で」みたいな注意書きがありましたっけ。


通潤橋の橋の上


確かに端っこに手すりなんぞもありませんし、
20.2mの高さが何ら遮るものなくそこにあるという感じ。
高所恐怖症気味の者としては、近づくに近づけない…。おお、怖っ!


橋の上から見下ろせば…


ともかくも無事に渡りきったですが、放水時間にはまだ間があるということで、
最初の晩に入った呑み屋のお姉さんが「いいですよぉ」と言っていた滝を見に行くことに。


渡りきった先をいったん登り、廻り込んだ後、急降下すると果たして立派な滝がありました。
名づけて五老ヶ滝というそうな。


五老ヶ滝


滝の大きさをご想像いただくには、人が写り込んでいた方がわかりやすかろうと

敢えてこの写真をUPしましたですが、相当な水量であることが伝わりましょうか。


実はこの滝の流れ落ちている元が通潤橋の下を流れる川でありましたので、
たいそう急降下したわけですが、これを登り返して元のルートに戻らねばならない。


なかなかしんどいところですが、

これを登って橋の方へ戻らないと放水が見られないとなれば、登るしかない…。


まあ、そんなこんなをしながら橋の周囲を歩き回ったりしたこともまた
後から思えば、感慨深さを弥増すものであったのですが、
ここから廻り込んで橋の放水に至るまでのところは、また次に…ということで。