…ということで、
シャガール展@静岡市美術館
の話までし終えたところで「薩埵越紀行
」は終了なのですが、
ちと細かなことばかりになりますが、落穂拾いということで。
まずはJR東海道線の蒲原駅から由比宿に至るまでの道 すがら、
ガイドマップなどには特段の記載はないものの、何だか立派な石造りの蔵が見えたのですね。
近づいていくと屋並みの陰になって見えなくなってしまったものですから、
ちと脇道から裏へ廻り込んでみたらどうだろうと行ってみますと、このように見えました。
さりながら、裏に廻り込む途中で、すでに関心は蔵から別のところに。
入っていった脇道の突き当たりにあったものの方に目が向いてしまったのでして。
そこにあったのは、やおら東海道線の線路なのでありましたよ。
塀も柵と言えるようなものもない。
「通り抜け無用で通り抜けが知れ」の川柳ではありませんけれど、
「危険ですから近くの踏切を通行してください」とあるからには、
向こう側へ行くのに、さぞやここの利用者の多いことだろうことが想像されるという。
同じ東海道線でも例えば川崎・横浜間なんでふらりと線路に入ろうものなら、
生きて帰れないこと必至でもありましょうけれど、ちなみにこの蒲原・由比間ですが
平日の昼ごろは上り下り併せても1時間に5~7本くらいしか列車が通らない区間。
時には駅の時刻表では分からない貨物列車なども通るにしても、
渡ってしまう気持ちは分からなくもない。
しかも、ここの利用者は大人だけでなくって子どももいるようで、
子ども向けの注意書きはこのように。
「とびだすな でんしゃはコワイぞ」と、ばしっと言ってるわりには
最後の「コワイよ」というのがいささか腰砕けなような。
「でんしゃはコワイぞ」までだと語呂が悪いと思ったのか、
「コワイよ」と添えたのやもですが、反って七五調の極端な字足らずで…。
ですが、やっぱり渡っちゃいけませんですね、はい。
続いて、今度は興津宿 。
一碧楼水口屋ギャラリー の敷地内にあった竹ですけれど、
解説板付きとあっては何かしらのいわくがあるのでしょう。
興津を愛した西園寺公望の「私設秘書を自認」していた中川小十郎(立命館大学創立者)が
台湾銀行総裁として赴任した先から持ち帰ったものということでして、
「竹を好んだ西園寺に」中川自らが作った竹筆を贈ったりしたのだとか。
この泰山竹は株分けされて、立命館大学衣笠キャンパスにもあるとのことですが、
そもそも立命館は西園寺が創設した私塾が閉鎖のやむなきに至ったときに、
これを惜しんだ中川が京都法政学校として引き継いだところから今があるわけでして、
創立者は中川小十郎ながら、立命館では西園寺公望を学祖としているのでありますよ。
お次は薩埵峠 (さったとうげ)ですけれど、
薩埵峠には由比側、興津側とあり、結ぶ道も平坦で、
そこここに「薩埵峠」「薩埵峠」という表示があるものですから、
本当の本当にピンポイントで薩埵峠はどこなの?とも思ってしまうところなんですね。
で、そうした表示の中でひときわ存在感を示しているのが、こちらではないかと。
かなり重量級のようですし。
先に触れましたとおり、峠道が開かれる以前は、
海沿いに波の加減を見ながら飛び石伝いに通り過ぎた「親知らず子知らず」の難所であったとの
歴史に鑑みると、何やら子を愛おしく抱いた親に似姿にも見えてくるのでして、
オブジェのような表示でありましたですよ。
そしてその峠道で、あちらこちらに小さなモノレールの軌道のようなものが見られるのですね。
以前、TVで見たことがありますけれど、斜面を利用したみかん作りで収穫物を運ぶためのものと
思われます。
でもって、その収穫物の一端がこうした道端の無人販売所で売られるわけですなあ。
それにしても、こうした柑橘系果実の名前は初めて目にしたですが。
と、食べ物の話になったところで、最後には静岡駅での昼飯のことを。
南口の静岡ホビースクエア から北口の静岡市美術館へ向かう間での昼食でしたので、
そこはお手軽に駅ビルASTYの中で済ませたわけですけれど、
それがこの「静岡弁当」とやらでありました。
何でも静岡のうまいものをぎゅっと詰め込んだ的盛合せのようなのでして、
手前左側がかの有名なしぞ~かおでんですな。
本来は串にささっているものなのでしょうけれど、この際食べやすくということでしょうね。
手前右側は金目鯛の煮付けでありまして、
静岡のうまいものとは静岡県内のうまいものという意であるらしく、
金目鯛の水揚げ量日本一は静岡県下田市となれば、入っていてもおかしなことはない。
奥の左側のお造りは、由比で食べた桜えび再び、そして清水で食したまぐろ再びに加え、
釜あげしらすもたぁんとのっておりましたですよ。
と、奥の右側ということになりますが、
フライであることは間違いないながら、口にいれても「いったい何?」という感じ。
思い余って?店の人に聞いてみれば「はんぺんのフライ」であるというんですが、
はんぺんと聞いて思い浮かべる、あのふわふわ食感とは全く異なる噛み応えが。
「ふうむ?」と思いつつ、ぱらぱらお品書きに目をやってみれば「おお!」と。
これは「黒はんぺんフライ」ではなかったか?!
どうやら静岡では「はんぺん」というと、あのふわふわでなくこの黒はんぺんを指すそうな。
ですので、地元の人ははんぺんとしか言わないながら、余所から来た人にはわからないので、
白くない(色味は黒というより灰色と思いますが)黒はんぺんと言っているらしいですよ。
味わい的には、同じ海産物の練り物である「つみれ」にそっくり(形が違う)と思ったですが、
この期に及んで「ああ、静岡に来たんだな」と思いましたですね。
何だか締めくくりになったんだかどうだか…ではありますが、
これにて薩埵越紀行、全巻の読み終わりでございます。