戸田 でタカアシガニを食した後は西伊豆の海岸線に別れを告げて、
山懐に抱かれた中伊豆へと戻っていくことに。


海を目の前にした海抜数メートルのところから、
金冠山(816m)と達磨山(982m)の鞍部にあたる戸田峠を越えるべく
ぐんぐんと道は登っていくのですね。


気付いてみるとこんなに登ってきたんだぁ!と振り返るのにちょうどいいのが
瞽女(ごぜ)展望地というところ。もそっとで戸田峠という辺りでしたでしょうか。


戸田港遠望@瞽女展望地


このアングルだと富士山は右手奥になって入れ込むことはできませんで、

正面にうっすら見える対岸は三保の松原あたりの海岸線ではないかと。


ところで先に立ち寄った「煌めきの丘」では、そのネーミングに少々異を唱えましたけれど、

こちらの「瞽女展望地」とは、もそっと謂われあるものを感じるところでありますね。


今では行き過ぎる人が足を止めるのはもっぱらその展望の良さからと思われるものの、

ここには瞽女観音像が祀られておりまして、そうしたことが先にある場所というのが本来のよう。


瞽女観音@瞽女展望地


傍らにはその由来が記されていましたが、引用すると長いので、

ここでは沼津市観光WEBから引かせてもらうことにします。

戸田を一望できる戸田峠(愛称・霧香峠)の先端にある瞽女(ごぜ)展望地。 瞽女とは、三味線を弾き語る盲目の女旅芸人であり、かつて、この戸田峠の山道で大雪に遭い亡くなった瞽女の冥福を祈るため建てられたのが、この観音像です。

その場の「由来」には

「芸事が上達すると伝えられ、芸能人の信仰が厚いと言う」とも書かれてますが、

伊豆の山々を旅芸人が踏み越えて旅籠々々を訪ねては、

旅の無聊を託つ旅人たちに一夜の興趣を施していた…てなことを思うと、

ついつい「伊豆の踊子」を思い出したりしますですね。

(伊豆の踊子は瞽女ではありませんけれど)


しかしまあ、西伊豆を巡って束の間とはいえ、その温暖さの恩恵に預かってきた身には

いかに峠道でも、そこから程ないところで雪に巻かれて命を落としすとは…と思うところながら、

同じ伊豆でもいざ海から離れ、山中に分け入ると趣きはずいぶんと変わるようです。


もうずいぶんと前ですが、

伊豆長岡の温泉街に近い葛城山ロープウェイ(今では伊豆の国パノラマパークになってる)で

山頂に登り、尾根道ハイクを目論んだことがありました。


東京に比べればずいぶんと南になる伊豆は「温暖であるに違いない」と疑うこともなく、

冬場の空気の澄んだ見晴らしを求めてきたのですが、温泉につかって一夜明けると一面真っ白。

はっきりと靴が潜るくらいに雪が降り積もっていて、軽装なるが故に山に入るのを断念した…

ということがあったのですね。伊豆の山は侮れませんです。


瞽女展望地を後にやがて戸田峠を越えると、

今度は中伊豆方向へとひたすら下りにかかりますけれど、

こうした山中になると道路の上にも日の射さないところがままあって凍結はしてますし、

また山肌に目を転ずればうっすらとながら雪の名残りも見える。

しばし前にも雪があったのでしょう。


そうこうしているうちに、沼津市から伊豆市に入りました。

修善寺はもうまもなくです。