そういえばしばらく芝居も見とらんなぁ…と思いつきで、

劇団カムカムミニキーナの公演に足を運んでみたのですね。


名前だけは聞いたことがあるという劇団で、

たしかテレビなんかにも出たりする人がいたんじゃあなかったかなというくらいの認識、

ほとんど思いつきの世界と言ってよろしいかと。


で、見てきてから検索するのもなんですが、

劇団の特徴としてWikipediaにはこんなふうに書かれていたという。

ハイテンションでテンポのよい笑いで壮大な物語へと観客を連れ去る独特の作風と、 演劇ならではの表現にこだわったダイナミックな演出に定評がある。

まあ、多少の予備知識として先に見ておけばよかったと後から思うわけですが、

「ハイテンションでテンポのよい」というところから感じる小気味よさを遥かに上回る

マシンガン・トークが炸裂しておりましたですよ。


と、しばらく前にシェイクスピアの「ヴェローナの二紳士」 を見たときにも

マシンガン・トークと全く同じ表現を使ってますが、老人力が弥増す昨今にあっては

付いていくのに疲れる(ともすると、状況把握に難を来す)状況でもありました。

他の観客の方々は何の遺漏もなく付いていけてるのですかね…。


カムカムミニキーナ公演「クママーク」


演目は「クママーク」というお題でありまして、

「隈膜下蜘蛛真熊野千年真悪乃生意気」という副題がついてる分、

歌舞伎、狂言といったあたりを意識してか、物語は基本的に伝奇ものというところかと。


過疎でもあり、生徒数が少ない(二人だけ)が故に廃校寸前となった学校を救うには、

とにかく子供の数を増やさなければ…と学校の先生が思案を巡らすわけですが、

男女ひとりずつとなった生徒らに対して「諸君らが頑張って!」みたいな

下世話な案しかでてこない。


と、思ったところへ女子生徒が伝承として聞いたと語るのは、

森の中のいずこかに隠された「クママーク」を3枚集めると、

いずこからとも知れず机と椅子が現れ出て、そこには昔亡くなった子供が蘇って座る…とのこと。


集めたマークが机や椅子を始めとして学校備品に代えられるとは

「そりゃ、ベルマークだろ」とは芝居の中でもつっこみの入るところですけれど、

大きなストーリーはあるものの、誰彼語り手が代わりながらの状況説明が多いものですから、

むしろこうした小ネタの部分ばかりが入り込んでくるきらいがあったような。


それだけに(舞台に掛かっていることからしても、芝居であろうとは思うものの)

いわゆる芝居とは違うもの、コントや掛け合い、しぐさなども駆使した混合物、

よく言えばエンタメ系総合芸術(?)てはふうに言えるのかもしれませんですね。

きっと、ツボにはまった人は毎公演見ちゃうということになるのかも。


ただ、どう考えても笑いを取る前提で繰り出されていると思われる台詞にも動きにも、

リアルタイムで笑いを挟む余裕もなく進んで行ってしまう(他の人たちもそのようでした)のは、

ちともったいない気がしますですね。

老人力云々ばかりのことでなく、もそってテンポダウンしてもらえると、

場内が気持ちよく笑いに包まれていくであろうのに。


話の内容は、先に申し上げたとおりの伝奇もので

現実世界と黄泉の国(あるいはその手前の煉獄のようなところ)との行き来や

熊の化身、カラスの化身、蛇の化身といった妖しげなものがまま登場するだけに

真正面から取り組まれたらさぞかし怖くなったろうなと(想像するだけで怖い…)思ったり。


ですが、話の途中で出て来た、なにごとも足すと引くで勘定があう、

でっぱりがあれば引っ込みがある…といったバランスの発想は

現実世界でもっと考えた方がいい点だぁねと思うところでもあろうかと。


また、本当に最後の最後、幕切れの瞬間にはフキネ(登場人物のひとり、未来の役どころ)が

あやかしの世界に取り込まれた者たちの鎮魂の祈りをささげながら、

自然との共生を意識していくあたりからは「あ、こうして『もののけ姫』は誕生したのか…」

みたいなことを思ったりもしましたですよ(と、ご覧にならないと何のことやらでしょうけれど)。