「アフリカで自然に動き回っている動物が見たい」
これは予て母親がもらしておりました希望のひとつなんですが、
叶えてやれぬうちにかなり齢を重ねてしまったものですから、
(連れて行こうと思えばできないことではないでしょうけれど、24時間余りの移動では…)
せめてその償いというわけでもありませんけれど、
那須にはサファリパークがあると聞き及んで「行くか?」と聞けば「行く!」と即答。
こうして那須サファリパークを訪れることとなり、
折しも夏休み期間に入り、子供連れに賑わうライオンバスに乗ってきましたですよ。
(実際に乗ったのは虎のご面相でしたから、トラバスですが…)
どっちが真似たのかは判然としませんけれど、
あたかも「ジュラシックパーク 」そっくりの高い金網の二重ゲートを通り抜けて、
これまた全ての窓が金網張りになったバスが進んでいきますと、
やおらベンガル・トラがのっしのっしと落ち着き無く動き回っている姿が。
彼らは群れずに単独行動で獲物に忍び寄るようでありますが、
非常に獰猛だとバス・ドライバーさんのご案内。
ですから、金網張りのバスで乗り込んでいても、やっぱり檻の中にしかおいとけないのだとか。
続いて登場するライオンのコーナーでは打って変わってバス越しにはもはや檻も無く、
ライオンと空気を共有しているといった具合。
これで母親も満足するかと思いたかったところですが、
どうにもこうにも「ライオンは寝ている」(トーケンズの歌みたいですが)。
アナウンスに曰く「ライオンは夜行性ですから」と。
「ナイト・サファリではバスにも襲い掛かってきますよぉ」と半分宣伝交じりの説明ですけれど、
トラが首を下げて筋肉隆々の肩を怒らせながら右へ左へと動き回っていたことに比べると、
「おめえも起きてさあ、ひと声、ガオ~!とか言わねえの?」と
サービス精神を吹き込んでやりたくなちゃうところであります。
しかしながら、バスが草食動物の方に進んで行きますと、
つい今し方サービス精神云々といったのと180度違う思いが湧き起こってくるのですね。
入場ゲートでもバスの中でも買えますけれど、草食動物用のエサというのが売られてます。
草食動物とはいえキリンやらシマウマやらも含めてなかなか大型もいますから、
こうした動物に手ずからエサをやるという経験はそうできるものでもなく、
子供たちを中心に(というのは老若男女を問わずということですが)きゃーきゃーわーわー言いながら
バス窓の金網越しにエサを与えていたのですね。
バス・ドライバーが噛み付く可能性のある動物(例えばシマウマ)には放り投げてやってください、
噛まない動物(例えばキリン、上あごに歯がないのだそうです)には直接にと丁寧に案内し、
動物たちも慣れたもので窓のところに寄ってくるわけですよ。
あれほど間近にキリンと対面したのは後にも先にも初めてですなぁ。
それはともかく、アジアスイギュウだったか、アメリカバイソンだったか、
中にはいっかな近寄って来ないのもいるわけですよ。
そこでバス・ドライバーがぽつりと「お腹いっぱいなのかな、朝から食べどおしですからね」と。
フォアグラにされるガチョウじゃあありませんから、無理やり食べさせられているわけではない。
それに動物にもそれぞれ満腹感というのがありましょうから、
人間ほどに度を越して食べることも無いような気がします。
ではありますけれど、来場者はバスで園内一周する間にエサをやるという一度きりの機会ながら、
動物たちにとっては朝から晩まで次々回ってくるバスから「ほれ、食え!」とエサがもたらされるわけで、
これがどれほどうれしいことなんだろうかなぁと思ったわけでありますよ。
動物のことはあんまり詳しくありませんので、
こうしたエサやりが非人道的(非動物道的か)だのというつもりはありませんけれど、
個人的にはどうにもすっとは受け止めにくい。
そうしたことを見越してエサを買ってなかったわけではありませんが、
このあたりはちと考えてみないと動物に相対するときに困るなぁと思ったですよ。
(もっとも突き詰めれば、動物園みたいな施設からしてどうなの?なってしまうかもですが)
とまれ、エサやりはしませんでしたけれど、まあ母親の希望をひとつ叶えたということで、
ここんところは良しということにしとこうと思ったサファリパークでありました。