全く知りませんでしたけれど、

2007年の暮れに農林水産省では「農村漁村の郷土料理百選」というのを選定していたそうな。

どんなものかと言いますと、農水省のHPによれば、こんなふう。

全国各地に伝わる郷土料理のうち、農山漁村で脈々と受け継がれ、かつ「食べてみたい・食べさせたい・ふるさとの味」として国民的に支持されうる料理を「農山漁村の郷土料理百選」として選定します。

「がんばれ!にっぽんの農村漁村」という思惑で農水省が絡んでいるとは思うものの、

実態からすれば観光振興で観光庁あたりの企画であった方がしっくりくるような。

何しろ儲かるのは、農村漁村というり郷土料理店でしょうからねえ。


・・・とそれはともかく、農村漁村と言うだけに

この百選に東京から選定されたものがあることに「え?!」と思うわけですが、

歴史的背景を考えれば、まあ何もおかしなことではないか・・・と思ったり。

で、その東京から百選にランクインした郷土料理を食べてきたというお話であります。


正確には「深川丼」が選定されてますけれど、食べてきたのは「深川めし」の方。

あさりを主とした具材の入った汁(一般に味噌汁と言われますが、必ずしもそうではないような)を

どんぶり飯にぶっかけただけの漁師用の即席めしが「深川丼」で、

同じ具材で炊き込みご飯にしたのが「深川めし」ということらしい。


炊き込む手間を考えると、ちゃっちゃかかき込むことはできませんから、

いかにも気の短そうな深川の漁師たち向けなのはぶっかけご飯でしょうけれど、

だんだんと郷土料理的にアレンジが加えられ、箔がついたが深川めしということになりましょうか。


いまでこそ「こんなところが漁師町だった?」と面影もないたたずまいでありますけれど、

清洲橋から新大橋のあたりの隅田川のサイドウォークを歩いて、

東京ウォーターフロントを眺めやってみれば、自ずと雰囲気は感じられますし、

近くなのでついでに立ち寄った芭蕉記念館で見た江戸期の地図を見れば、

今し方歩いてきた辺りの目の前にあったのは

川の風景ではなくって海の風景であったことが分かるのですね。

漁師町であったということが「なるほど!」と。


歴史とともにある郷土料理というだけに、ただ食するだけはなくして

こうした雰囲気を盛り立てる要素があると何やら豊かな経験であったなと思ったりもするわけです。


深川めしというと、もっぱら東京メトロ東西線の門前仲町界隈の店が目立ったりしているようですが、

ここではちと隅田川からも遠く、なかなかにさきほど行ったような風情を味わうこともできにくい。

そこで、自分の行った店を紹介するというのもなんですが、

ここはひとつ、江東区常盤の割烹みや古(最寄駅は都営新宿線の森下)でどうでしょう。


ここいらは長らく隅田川と小名木川に近い倉庫街であって、

最近でこそマンションなんかも増えてきているようですが、本当にひと通りの少ない場所。

それだけに、深川めし本家を名乗る(ほんとかどうかは分かりませんが)この店が

いったいいつまでやっていけるものか…と余計な心配をしてしまうものですから。


今のご時勢で店のHPも持たないとなれば、なかなか客の目につきにくい。

でも、なんとなくこういうお店に頑張ってほしいような気がするのですよね。

チェーン展開するようなお店ばかりではつまらないですものね。


あ、もちろん、深川めしをおいしくいただきましたから、言うのですけれど。

珍しいなと、ついでに頼んだどじょうのから揚げもまたよろし。


とまあ、ついついお店のお先棒担ぎのようになってしまいましたが、

「農村漁村の郷土料理百選」には全ての都道府県からもれなく何かしら選定されてますから、

自分のところはどんなものが…と思った方は農水省HPのリスト をご覧になってはいかがでしょうか。

あんまりびっくりするようなものでなさそうではありますが…。