映画「マスク」 でのセリフから「ダーティーハリー」を思い出したものですから、
この際ですので見てみることに。


TVシリーズの西部劇「ローハイド」、これは

♪ローレン、ローレン、ローレン、ローハイド!というフランキー・レインの主題歌でも有名ですが、
(この人は映画「OK牧場の決闘」でも主題歌を歌ってます)
このシリーズで一躍お茶の間の人気者になったのが、クリント・イーストウッドでありますね。


いわゆるマカロニ・ウェスタンの「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」などを通じて
さらに名前が知られるところとなったものの、

アメリカに戻ってきてからはどうも今一つ作品には恵まれず。


そんな最中にあったイーストウッドをハリウッド・スターとして不動のものとしたのは、
やはりこの「ダーティーハリー」でありましょう。


ダーティハリー 特別版 [DVD]/クリント・イーストウッド,ハリー・ガーディノ,アンディ・ロビンソン


改めて見ると、ストーリーの底が浅い感じもしてしまうところですけれど、
「ああ、これは西部劇の保安官が現代に甦った…てな感じだったのだな」と思ったわけです。


ただ現代に置き換えてますよということをはっきりさせるために、
舞台をサンフランシスコという大きな都市にしてはありますが。


人がやりたがらないような汚れ仕事に否やもないハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)は
それ故にか「Dirty Harry」と渾名されるのですが、この「Dirty」を字幕の和訳で「お不潔」とは?!
いささかぶっ飛ぶ表現でありまして、こういうのを見せられるなら昔々TVの洋画劇場で馴染んだ
イーストウッド=山田康雄のアテレコで見たくなってしまいますですよ。


というキャラハン刑事でありますが、誰に阿るわけでもなく、誰の命を受けるでもなく、
かといって警官ですから頭に「正義」にふた文字はあるのでしょうけれど、

それを実現するやり方はある種独特であって、映画でなければ(映画の中でもですが)

議論の余地ありてなことにもなりましょうね(ま、映画だ!ということで)。


で、その体をはって相手に立ち向かい、ひとりで行動する一匹狼となれば実に西部劇っぽい。
本作で相棒をさせられた刑事は大怪我をして「教師の資格もあるし、刑事がなんになる…」てな

つぶやきを漏らしてますが、やはり一人で行動するのを基本にしているのでしょう。


そして、ついに犯人を追いつめた(有名なスタジアムのシーン)にも関わらず、

法律上では不当逮捕扱いされて容疑者は釈放。
呆れかえるキャラハン刑事にやれやれという顔つきを地方検事と判事は見せるという。
ならず者の裁き方をお前らは知らんのか…というキャラハンですが、

立場を代えれば「お互いさま」の思いということになりましょうか。


結局のところ、手出しを禁じられたところへ出かけていって犯人との対決になりますが、

これとて決闘シーンのようなもの。


最後の最後で警察のバッヂを投げ捨てるあたり、

「いっとき受けた保安官だけんね、仕事が終わればおさらばよ」的なところも。
(実際は上司の命に背いての単独行動が規律違反になるんでしょうけれど)


で、ラストがバッヂを捨てるシーンであった以上、本当はこれで終わりだったはずながら、
結果的には全部で5作のシリーズになって、今のイーストウッドがある。

出直し出世作たる由縁であります。


ところで、この映画の中では犯人がスクールバスを乗っ取ってしまうシーンがあります。
ドライバーには銃をちらつかせ、振り返って子供たちに見せるのは甘い顔。
にこにこしながら「みんなで歌をうたおう!」なんてぐあいの懐柔作戦という。


実はここで出てくる歌のひとつに、ちとこだわりが生じたのですけれど、
映画の話から離れていくことになりますので、このことはまたの機会ということで。