美術館と言いますと、

次から次から企画展・特別展の目白押しというようすを思い浮かべてしまうところながら、
例えばブリヂストン美術館などは、そこへ行くといつもその絵を見られる安心感があるといいましょうか。


同館でもちろん企画展が行われますけれど、

必ずといっていいほど所蔵品を活かした企画になりますし、
所蔵品をうまく使って新しい視点で見せてくれるなんつう技をもっているのですね。


初めて見る作品に目を引かれるところがあるのはもちろんですが、
同じ作品を別の機会に見てみるとまた異なる印象がふっと湧いたりする楽しみもまたあるわけでして、こうした楽しみは基本的に所蔵品をメインに展示している美術館ならでは。
でもって、東京は八王子にある村内美術館もそんな美術館のひとつなのですね。


何度か出かけてそのたびにあれこれの印象を書いたりはしてますが、
今回ふっと訪ねてみますと、6月26日からリニューアルで休館になるという。
現状を見られるのは今のうちかと思いますと、何やらタイミングの良さを思うところでありました。


村内美術館


バルビゾン派とクールベ、ルノワール、エコール・ド・パリの人たち、そして現代の人たちまで
有名どころと周辺画家を含めてざざっと展観できる内容でして、本業が大型家具店とあって
座り心地のよろしいソファなどが随所に置かれた雰囲気も悪くない。
これがどうリニューアルされるのかは気になるところでありますよ。


リニューアルを案内する貼り紙によれば7月11日には再オープンとあって、
閉じてる期間が随分と短いからには「何らか展示替えなのかな」と思ったのですけれど、
ふと気になって後から同館HPを見てみると、ニュースにはこのような案内が。

村内美術館は展示を一新し、7月11日(木)にリニューアルオープンいたします。家具屋ならではの美術館として世界の家具を展示、また日本や海外の新進気鋭作家の作品を展示する予定です。日本の現代画家とヨーロッパの近現代画家の共演をお楽しみいただけます。

ここの美術館の目玉はバルビゾン派にあったのは?と思い、それを展示しないというのは…。
家具屋ならではで世界の家具を展示するというのも分からないではないけれど。


で、さらに検索過程のキーワード予測には

「村内美術館 閉館」「村内美術館 売却」と言った言葉があがってくるという。
確かに同館HPにもクールベの「フラジェの樫の木」が

故郷オルナンのクールベ美術館に戻ることになったとの記載がありましたが、
実際には4億円で売却されたようですし、どうもその他の作品に関しても雲行きは怪しく

どうやら売却されて一般人からすればもはや見られない作品群になってしまいそうな雰囲気が。


直接的な原因とまで言っていいのかは不明ながら、
だいたいからしてして大型家具店という商売形態は存続が厳しい状況であろうことに加え、、
しばらく前から村内美術館を併設している店舗の目の前に

通りを挟んで「ニ○リ」という家具量販店ができたのですね。


これを見たときには「何も目の前でなくとも…」と思ったところですが、
八王子駅から村内家具店までの送迎バスに乗って来ておきなんがら、

お向かいのお店へと足を運ぶという人たちがまま見られるとあっては
この場所に「ニ○リ」があるのはお客にとっても「ニ○リ」にとっても便利なことだったのでありましょう。

こうした様子を窺い知るに及んで、何とも暗澹たる気分になったものですが…。


ということで、「そこへ行くといつもその絵を見られる安心感」と書き起こしたところが、
その実、もう二度とお目にかかれないかもしれない、

最後のチャンスであったのかもと後で知ったわけで、
それならそれなりの見方があったろうに…と悔やまれるところでもあります。


ですが、これまで訪ねる度にどうしようなかと思いつつも

買うには至っていなかった「同館所蔵名品選」という図録をついに購入してきたというのは

何かの縁ではないかと思って、改めてじっくり眺めることにしたいと思うのですよ。


とまあ、村内美術館HPでは、

はっきりと所蔵作品を売却して…といったことは書かれていないので、
いろいろなネット上の憶測やらを真に受けただけなのかもですが、

状況的には同館コレクションを見られるのは2013年6月25日までと推測しても無理からぬような。


交通至便とは言い難いロケーション(先程ふれた送迎バスがあります)ですが、
一度もご覧になられたことの無い方は、どうでしょう、この次の週末あたりにお訪ねになっては。
一期一会になるやもしれませんですよ。


村内コレクション