木村花さんの死と、SNSでの誹謗中傷の件で思うこと | KMMのブログ

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人口700人程の村にある僻地診療所での勤務が終わり、現在は大学病院で勤務しています。
診療を通じてたことや、個人的に気になったことなど適宜書いていこうと思います。

お訪ねいただきありがとうございます。
 
僻地診療所から大学病院に来ておよそ2ヶ月経ちました。
 
色々感じることはありますが、大学病院にいていいなぁと思うことの1つとして、何か悩みや不満、また理不尽に感じることがあっても、周りの医師と相談したり共有できたり、「それは絶対理不尽だよ」みたいな感じで共感してもらえるところですかねー。
 
僻地診療所で一人で働いていた時は、理不尽に思うことがあっても、一人で抱え込むことも多かったので、同じ環境で働く仲間の先生がいることは、やっぱり心強く感じます(^ ^)
 
さて、話は変わりますが、SNSにおける誹謗中傷が原因で若く尊い命が一つ失われました。
 
木村花さんという方を存じ上げていませんでしたが、こういう事件は他人事とは思えないし、やはり心が痛みます。
 
この件に関して、数多くの著名人がコメントされているのですが、一つ私自身がとても共感したコメントがありました。
 
以下、記事の抜粋です。
 

 フィギュアスケーターの本田真凜(18)が、23日に更新した自身のインスタグラム(@marin_honda)のストーリーズで、「気にしたらダメだと、スルーしようと心掛けても、沢山の嬉しいお言葉より、1つの誹謗中傷の方が圧倒的に力が強い。そう思います。。」(原文まま)と投稿した。

 

 

 

 

沢山の嬉しいお言葉より、1つの誹謗中傷の方が圧倒的に力が強い。
 
医療関係の仕事をしていても、この言葉がすごく当てはまるというか、共感できるなぁと思ってしまいました。
 
医者は多くの方から感謝される仕事、これは間違いない事実です。
 
ただ同時に、とてつもなく相手に敵意を持たれやすい仕事でもあります。
 
患者からしたら、ついこないだまで見ず知らずだった人間に、いきなり自分の生活や、場合によっては命を託すことになるのですから。
 
確かに100人の患者をみたら、99人からは感謝されるかもしれません。
 
患者の病気を治すのが医者の仕事だし、普通に課せられた仕事を全うしていれば、ほとんどのケースでは良好な転機を辿ってくれるし、患者さんからも感謝されます。
 
でも確実に1人からは不満を抱かれたり、恨まれたりします。
 
同じお薬を100人の患者に服用してもらっても、99人には効果があり症状が改善したが、1人は副作用で余計に症状が悪化した、そういったことが起こりうるように、たとえ医者の対応に落ち度がなくても、治療が上手くいかずに、患者から不満を抱かれたり、恨まれたりすることも起こりえます。
 
また、たとえミスしないよう細心の注意を払っていた場合でも、全くミスをしない人間は存在しません。
医者も同じで、どれだけ注意を払っていても、やはりミスを犯してしまうことがあります。
もちろん一人がミスしても、周りが気付くなどして、大事に至る前に対処できるケースが多いですが、運悪く一つのミスが、患者さんにとって悪い転機をもたらしてしまう、そういったことも起こり得ます。
 
そして場合によっては、患者やその家族から恨みを抱かれ、心ない酷い言葉で罵倒されたり、裁判で訴えられたりする、そういったことが、少なからず起こってしまうのです。
 
私も今までの医者人生を振り返ると、関わってきたほとんどの患者さんからは、感謝をしていただけたと思います。
 
中には私との別れを泣いて悲しまれるような方もいました。
 
しかし、それらの感謝された記憶よりも、治療がうまくいかず、患者やその家族から不満を抱かれて、敵意を剥き出しにされた、そういった数少ない事例ばかりが、振り返った時に頭をよぎってしまうのです。
 
これら苦い記憶は、気にしないようにしても、ふとした拍子に頭をよぎってしまう、そういうもので、いつまで経っても記憶から消えず、自分の心を痛める原因になります。
 
木村花さんが、誹謗中傷に苦しみ命を絶ったこと、とても悲しく思います。
 
残されたコメントを見る限り、きっとみんなから愛される、そういった方だったんだと思います。
 
心よりご冥福をお祈りいたします。