「国試対策に力を入れている大学ランキング」という記事を読んで Part2 | KMMのブログ

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人口700人程の村にある僻地診療所での勤務が終わり、現在は大学病院で勤務しています。
診療を通じてたことや、個人的に気になったことなど適宜書いていこうと思います。

お訪ねいただきありがとうございます。

 

私は自治医科大学を卒業し、現在人口700人ほどの村にある診療所で、村唯一の医師として勤務しています。

 

今回のブログは前回の続きになります。

 
m3.comでの調査で、「国試対策に力を入れている大学ランキング」というアンケートがなされていました。
 
 
以上が結果です。(上位27校だけ載せてます)
 
全国平均は11%と低水準で、上位にランクインした一部の大学をのぞき、多くの大学では「医師国家試験対策は学生の自主性に任せている」ことが推察される結果でありました。
 
何故これほどまで、各大学とも医師国家試験対策に力を入れていないのか、この点に関して今回私の思うところを書いていこうと思います。
 
まず
①医学生の実習や勉強に対するモチベーションが低い。
 
→悲しい話ですが、これは間違いなくあると思います。もちろん全員がそうであると言っているわけではないのですが。
しんどかった医学部受験を勝ち抜いてきて、そしてまた医者になった後は、肉体的にもキツく、責任の重い仕事が待ち受けています。
つまりその間の、医学部生として過ごす6年間を、キャンパスライフを謳歌できる最後の自由時間である、そんな風に考えている学生が少なからずいる気がします。
厳しく出席を求められるような授業や実習でなければ、出席せずサボろうとする医学生が少なからずいるのは紛れもない事実です。
私が大学病院で働いていた時は、教授回診にすらも遅れて参加する学生や、病棟にはほとんど顔を出さない学生など、数多くみてきました。
医学生の授業や実習に対するモチベーションの低さが、医師国家試験対策に力を入れて頑張れない一因になっているというのはあると思ってます。
 
 
②医者も忙しくて学生に構っていられない。
 
→間違いなくこれもあります。
やはり学生をちゃんと指導できる医師となると、ある程度経験も積んでいて、専門医の資格も有している、つまり中堅以上の立場の医者になります。
そのくらいの立場の医者は外来に病棟に、検査に研究にと、とにかく忙しいです。
そしてもし、空き時間に何かを教えてあげようとなっても、まずその科に所属する若手医師に、次に研修医に、最後に学生に、という順番になります。
これは仕方ないことで、その科の若手医師は学ぼうとするモチベーションが高いし、また仕事を教えたらその分だけ自分たちの仕事を軽減させてくれます。
研修医も同様で、一定期間にはなりますが、教えた分だけ仕事を覚えて、自分たちの仕事を軽減させてくれます。
しかし学生は色々教えても仕事を軽減させてくれることはありません。つまり言い方は悪いですが教える分だけただ手間がかかる、どうしてもそうなってしまいます。
こうして結局、医者は学生の相手をしてる時間が作れないし、モチベーションの低い学生はそれをいいことに実習をサボろうとする、こうして中身のない実習になってしまうというのは、残念ながらよくあることかと思います。
また学生への講義も、医者は臨床や研究の片手間にやってるので、ボソボソと喋ってほとんど聞き取れなかったり、専門用語が連発されていて、聞いててもほとんど理解できない、そういった講義も数多くあります。
学生は授業行くより自分で勉強した方が早いと考えるようになり、結局自分でも勉強せず、その時間寝てたり遊んだりしている、そういったケースは多いです。
 
 
③ 9割受かるという落とし穴
 
→医師国家試験に合格するかどうかギリギリの成績にいる学生も、周りが「医師国家試験なんて落ちないでしょ?」って空気になっていると、「そうだよなぁ、大丈夫だよな」とどうしても楽観的に考えてしてしまい、結局対策したり追い込みをかける時期が遅れてしまう、また対策する医者側も「医師国家試験に落ちる学生は不真面目なごく一部の学生だけで、普通にしてたら特に対策なんかしなくても落ちないでしょう」みたいな先入観をどこかに持っていて、結局対策にさほど力を注ごうとしない、という学生側、医者側の両方の要因があると思っています。
しかし実際のところ、多くの医学部では毎年複数名の留年者を出し、最終的に受かりそうな者だけが卒業を許され、その中での合格率9割なのです。なので合格率9割と言えども、誰でも受かるような簡単な試験とは決して言えないかと思います。
 
以上が私が思う、医学部で医師国家試験対策に本腰が入らない理由です。
 
でもやっぱり医学教育って大事だと思うので、もう少しそこに力を入れるというか、理想を言えば予備校みたく医学教育に特化したような部門が各医学部にできたらいいんだろうなぁとは思います。
 
あくまで一個人の意見なので参考程度に考えてもらえたらと思います。
 
ではでは