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直近の記事で、4回にわたり2019年医師国家試験の神経内科の分野の問題に関して私なりの解説を載せてみたのですが、2019年の医師国家試験の問題を解くと、2018年の医師国家試験の問題もついつい気になってしまい、気付いたら解いていました(笑)
なので前回に引き続き、今回も医師国家試験の神経内科の分野、2018年分に関して書いていこうと思います。
今回も私なりの解釈を加えて、神経内科の分野の問題を振り返っています。
さっと見ただけなので、全部網羅できてないかもしれませんが、そこのところはご理解を。
(解いた印象で難易度もつけてみました。
1‐10の10段階評価でつけています。
1: 間違えたら絶対ダメ
3: まあ間違えない
5: 最低限の知識があれば間違えない
7:悩む、一癖ある
10:神経内科専門医レベル
という風に私なりの解釈に基づき評価してみました)
A問題
胃全摘で歩行困難と見た時点でVitB12欠乏なのは容易に想像できると思います。
頸椎MRIでも後索部がハの字状に高信号を呈しています。亜急性連合性脊髄変性症の症例であることはわかるかと思います。
設問の予想される症状、つまりは後索障害で見られる症状はということになるかと思うので、Romberg徴候(閉眼するを暗いところと言い換えたような感じですが)を表しているaの「暗いところでふらつく」が正答となります。
まあこれ自体は難しくはないんですが・・・・・
「b 片足立ちがしにくい」が症状として出ないかといわれると出てもおかしくないんじゃないかなぁ?
とそこがすごく引っかかってしまいました。
そもそも片足立ちは、特に疾患を有さない方でも、高齢になるにつれ、行うのが難しくなります。
若い方だと何十秒も出来たりしますが、80歳くらいの方では10秒もできれば十分かと思います。
片足立ち自体、何か特異的な神経徴候というわけではないんじゃないかなあと思っていて・・・・
小脳失調は当然のこと、筋力低下であったり末梢神経障害、さらには振動覚・位置覚の低下も影響してくるんじゃないかなぁというのが私の感想です。
なので「片足立ちがしにくい」が正しくないと本当に言えるのかなと、すごく引っかかってしまいました。
QBの解説とかだとどう書かれているんですかね? すごく気になります。
難易度:4
手を強く握ると手が開きにくい・・・・Grip myotoniaですね。
写真は叩打ミオトニアになります。
おそらく筋強直性ジストロフィーでしょうね。
正解はd ミオトニアですね。
難易度:3
まずこの症例がむずむず脚症候群(RLS)の症例であることは明らかかと思います。
RLSを疑ったら必ず鉄欠乏性貧血がないか精査します。採血で血清鉄とフェリチンあたりを測定します。
鉄欠乏性貧血があればまずその治療を行います。
今回はフェリチン正常ということで、RLSの治療をどう行うかということになりますが、d ドパミン受容体作動薬をfirstで使うことが多いです。ドパミン受容体作動薬はパーキンソン病の治療薬ですね。
私はビシフロール(一般名 プラミペキソール)をfirstで使うことが多いです。
後クロナゼパム(ベンゾジアゼピン系の抗てんかん薬になります。商品名ではランドセンやリボトリール)もよく使います。
難易度:5
頭蓋内出血に伴ううっ血乳頭などをチェックすることが緊急度の判断において必要ということで、b 眼底検査を選ぶこと自体は容易だと思います。
そもそもCT検査が出来ないレベルの小規模な施設で、髄液検査や脳波検査を行うことは限りなく困難です。
どちらも検査技師さんがいないと施行すること自体難しいと思いますし。
その時点でa,dの選択肢ははなから消えているといっても過言ではないかとも思います。
難易度:2
「遠位筋では左右差のある筋力低下」
「左正中神経領域と右浅腓骨神経領域とに痛みを伴う感覚低下が観察された」
これが多発性単神経障害を表していることが分かれば、血管炎の可能性が高そうかなあと気付けると思います。
そもそもMPO‐ANCAが62と著明な高値を呈しているので、c 顕微鏡的多発血管炎が正解であること、またそれに伴う神経障害であると診断すること自体は難しくないと思います。
難易度:2
Argyll Robertson瞳孔:①対光反射の消失 ②調整・輻輳反射が保たれる ③縮瞳 ですね。
これが神経梅毒で出現する徴候と知っていれば、梅毒の検査であるb TPHA反応を選ぶというのは難しくはないと思います。認知症のScreeningでは、梅毒の項目も測定したりします。なので神経梅毒が認知症を来すことは覚えておいた方がいいとは思います。
でもArgyll Robertson瞳孔が神経梅毒に伴うものと気付けないと、一気に難しくなる問題だと思います。
髄液所見の特徴は僕も詳しくは知りませんが、問題では単核球優位の細胞数増加を来していますね。
腱反射亢進や病的反射の出現もなんで出るんですかね?脊髄癆も後索の変性と思いますし、ちょっと理由はわからないです。
他から梅毒と気付くのは難しい印象です。
Argyll Robertoson瞳孔が梅毒で出現することを知っているか、そういう問題なんだと思います。
難易度:6
リウマチ性多発筋痛症(PMR)→側頭動脈炎合併リスクあり→a 複視、c 頭痛 とそれだけの問題かと思います。
リウマチ性多発筋痛症は意外と多いので頭の片隅には置いといた方がいいです。
全身痛がって近位整形外科等を受診するもレントゲン等の検査で異常がないから鎮痛薬だけ処方される
→それでも痛みが治まらないから神経内科に受診
→血液検査でCRP上昇しており、PMR疑ってステロイド処方すると嘘のように痛みが消えて感謝される。
このような経験が2‐3回はありましたね。
でも可能性を少しでも疑っていないと、見逃してしまいがちな疾患であるという印象です。
難易度:3
A問題からは以上になります。
一応7問中7問とも正解することが出来ました。
個人的には今年の医師国家試験には進行性多巣性白質脳症の問題とか出そうな気がしますね。
HIV感染に伴うという点でもそうですが、多発性硬化症の再発予防療法中の合併(フィンゴリモドやタイサブリ投与中など)もあるので、神経内科医として注意が必要な疾患にはなります。
58番の選択肢の中にもJCウイルス抗体とかありますし、なんか気になりました。
次回の記事でも2018年(第112回)の医師国家試験の神経内科に分野を解いていこうと思います。
ではでは








