お訪ねいただきありがとうございます。
私は自治医科大学を卒業し、現在人口700人ほどの村にある診療所で、村唯一の医師として勤務しています。
本日Yahooニュースで以下の記事を読みました。
高齢者にリスク高い薬、80代処方ピーク 睡眠・抗不安
のみ続けると転倒や骨折、認知機能の低下を招きやすいとして、高齢者はできるだけ使用を控えるべきだとされている睡眠薬や抗不安薬が65歳以上に多く処方され、ピークは80代だった。厚生労働省のデータをもとに朝日新聞が解析し、高齢者にリスクの高い薬が多用されている実態が浮かんだ。
睡眠薬や抗不安薬は、中枢神経の興奮を抑えるなどの作用があり、眠気をもたらしたり不安感を少なくしたりする。ただ、高齢者がデパスやハルシオンなどの「ベンゾジアゼピン(ベンゾ)系」といったタイプを使うと、転倒や認知機能障害が起こりやすくなるという研究が数多くある。やめられなくなる依存も起こしやすく、死亡リスクが上がるという報告もある。
高齢になると、薬を分解して排泄(はいせつ)する能力が低くなることから、薬が効きすぎたり、副作用が強く出たりしやすい。日本老年医学会の高齢者の薬についての指針「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」は、これらの薬について「使用するべきでない」「可能な限り使用を控える」と求めている。第三者機関の医療事故調査・支援センターは6月、ベンゾ系の薬をのんでいた高齢者が入院中に転倒し、頭を強打して死亡した複数の事例を示し、慎重に扱うよう提言している。
厚労省は3年前から、医師が診療報酬を請求するのに使う明細書(レセプト)の情報をもとに、処方量の多い薬を性別・年齢層別にまとめ、NDBオープンデータとして公表している。データ作りに携わった吉村健佑・千葉大特任教授(医療政策学)の協力を得て、2017年度に外来処方されたベンゾ系の睡眠薬・抗不安薬について集計。人口千人あたりの処方数を、総務省の統計をもとに年齢層別に出した。
ベンゾ系の睡眠薬・抗不安薬のうち、性別と年齢層が判別できる約39億8千万錠を解析。53%の約21億錠が65歳以上に、33%の約13億1千万錠が75歳以上に処方されていた。
男女別では女性が多く、千人あたりの処方量は、女性では80~84歳が約9万7千錠でピークに。この年代は年に平均100錠近くのんでいる計算になる。続いて85~89歳、75~79歳と続いた。男性は85~89歳が約6万2千錠と最多だった。
睡眠薬や抗不安薬は、中枢神経の興奮を抑えるなどの作用があり、眠気をもたらしたり不安感を少なくしたりする。ただ、高齢者がデパスやハルシオンなどの「ベンゾジアゼピン(ベンゾ)系」といったタイプを使うと、転倒や認知機能障害が起こりやすくなるという研究が数多くある。やめられなくなる依存も起こしやすく、死亡リスクが上がるという報告もある。
高齢になると、薬を分解して排泄(はいせつ)する能力が低くなることから、薬が効きすぎたり、副作用が強く出たりしやすい。日本老年医学会の高齢者の薬についての指針「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」は、これらの薬について「使用するべきでない」「可能な限り使用を控える」と求めている。第三者機関の医療事故調査・支援センターは6月、ベンゾ系の薬をのんでいた高齢者が入院中に転倒し、頭を強打して死亡した複数の事例を示し、慎重に扱うよう提言している。
厚労省は3年前から、医師が診療報酬を請求するのに使う明細書(レセプト)の情報をもとに、処方量の多い薬を性別・年齢層別にまとめ、NDBオープンデータとして公表している。データ作りに携わった吉村健佑・千葉大特任教授(医療政策学)の協力を得て、2017年度に外来処方されたベンゾ系の睡眠薬・抗不安薬について集計。人口千人あたりの処方数を、総務省の統計をもとに年齢層別に出した。
ベンゾ系の睡眠薬・抗不安薬のうち、性別と年齢層が判別できる約39億8千万錠を解析。53%の約21億錠が65歳以上に、33%の約13億1千万錠が75歳以上に処方されていた。
男女別では女性が多く、千人あたりの処方量は、女性では80~84歳が約9万7千錠でピークに。この年代は年に平均100錠近くのんでいる計算になる。続いて85~89歳、75~79歳と続いた。男性は85~89歳が約6万2千錠と最多だった。
という内容の記事でした。
医療の現場にいれば、「まあそうだろうなぁー」という感じで、驚きはありません。
私も僻地診療所で勤務していて、患者さんの多くが80歳以上の高齢者です。
そして多くの高齢者が上の記事で出てくるベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬を服用しています。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬、抗不安薬に認知機能障害や転倒しやすくなるなどの副作用があることは、医者であれば当然みんな知っていることにはなるのですが、ではなぜこれほどまでに高齢者にこのお薬が処方されるのか?
私が思う一番の理由は、やはり患者さんが欲しがるから、ここに尽きると思います。
もちろん医者が簡単に出し過ぎているという指摘もあるかとは思うのですが、近年ベンゾジアゼピン系の処方を出来るだけ減らすよう叫ばれている中、進んでこのお薬を出そうとする医者はむしろ少ないんじゃないかと思います。
私も診察しながら、あの手この手を使い、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬の処方を終了させようとするのですが、必ずと言っていいほど次来た時に「また出して欲しい、あれないと寝れなくて困る」と言われます。
他のお薬はちゃんと飲んでくれない方でも、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬だけはきっちり服用し、なくなる日に受診にくる、または飲み過ぎてて、予定日より早く来られる、みたいなことも本当に多いです。
私も頑張って出さないように説得しますが、その説得もほとんど功を奏さず、多くの方は「ないと眠れない、出して欲しい」の一点張りで、処方してくれるまで診察室から出てくれなかった、みたいなことも何度か経験あります。
ただこの方々が本当に眠れていないかは大いに疑問です。(実は結構昼寝しているみたいな場合もあったりしますし……)
私は薬がないと眠れない、という思い込み信者も特に高齢者の方には多いような気もしてます。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬は非常に依存性が高いお薬です。
お薬自体も比較的安価で、しかも75歳以上の方であれば窓口負担は1割になるので、もらうのにほとんどお金もかかりません。
なので長年服用されている高齢者の方は特に、中断するのが非常に難しいのです。
そして医者も一人の患者さんにそんな時間もかけてられないので、「長々説得するくらいなら、処方してしまった方が早い」みたいな結論に安易に達してしまいがちな気もします。
一番いいと言うかありがたいのは、息子さんや娘さんがきっちりお薬の管理をしてくれていて、子供がお菓子を食べすぎないよう目を光らせている母親のように、ベンゾジアゼピン系のお薬を極力服用させないように普段から注意を払ってくれている、それが一番ベンゾジアゼピン系の処方を減らすのには効果的な気はしますが、現実問題難しい話だとは思います。
やはり医療者側だけの努力でどうこう出来る問題ではない、というのが私の正直な感想です。
ただ一番最初の時点で、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬は極力出さないようにし、出来るだけ依存性の少ない新規の睡眠薬(商品名でいうとベルソムラなど)から開始するようにすること、医療者側にとって、今後このことは非常に大切になってくるんじゃないかなぁとは思います。
ではでは