ヒルナンデスの「頑張らないダイエット企画」を見て思うこと Part1 | KMMのブログ

KMMのブログ

人口700人程の村にある僻地診療所での勤務が終わり、現在は大学病院で勤務しています。
診療を通じてたことや、個人的に気になったことなど適宜書いていこうと思います。

お訪ねいただきありがとうございます。

 

 私は自治医科大学を卒業し、現在人口700人ほどの村にある診療所で、村唯一の医師として勤務しています。

 

2019年11月25日の日本テレビ系ヒルナンデス!で放送された「頑張らないダイエット企画」をみて、思ったことを少し書いていこうと思います。

 

このダイエット企画は、食事制限なしで続けられる簡単ダイエット企画であり、今回は①ストローを吹くだけダイエット ②一日の食事を8時間以内に収めるだけダイエット ③やせる出汁を飲むだけダイエット の3パターンが行われ、それぞれに女芸人1名ずつが挑戦しました。

3週間ダイエットを継続した結果が以下の通りです。

 

①1日5分だけストローを吹くというシンプルな、ストローを吹くだけダイエットに女芸人のさちまる。さんが挑戦。

結果 体重:94.90Kg⇒93.85Kg(5日目)⇒95.89Kg(3週間)と少し体重が増えてしまいました。

 

②1日の食事をすべて8時間以内に取る(例えば朝9時に朝ご飯を取った場合は、夕食は8時間後の夕方5時までにとり、以降は何も食べない)、8時間以内に収めるだけダイエットに女芸人の本田あやのさん挑戦。

結果体重:80.85Kg⇒79.80Kg(1週間後)⇒79.15Kg(2週間後)⇒78.65Kg(3週間後)と見事、-2.2Kgの減量に成功。

 

③普段の食事に合わせて、1日1回やせる出汁を飲むだけの簡単ダイエットに31歳(83キロ) の女芸人藤本友美 さんが挑戦。
結果 83.40Kg⇒81.30(7日目)⇒78.93Kg(3週間後)と見事、-4.47Kgの減量に成功。
 
とまあ、よくあるダイエット企画です。
 
①のストロー吹くだけダイエットは、結果体重が増えていたこともあり、最初にさらっと紹介されただけで、スタジオでは「何しに来たんだよ」とか「あんだけ食べたらそりゃ太るよ」とかさんざん突っ込みを入れられていました。
 
その後医師からは、ストローダイエットにより筋肉が増えたことによる体重の増加とも見えるので、長期的に続ければダイエット効果が期待できるかもとのコメントもありました。
 
その後②の1日の食事を8時間以内に収めるだけダイエット→③のやせる出汁を飲むだけダイエットとスタジオ内で体重測定が行われ、「やせる出汁を飲むだけダイエット」が3週間で4.47kgの体重減少となったところで、「オオー!!」みたいな盛り上がりを見せたわけではありますが……
 
この結果だけ見ていると、③のやせる出汁を飲むだけダイエットが一番効果的で、②の1日の食事を8時間以内に収めるだけダイエットもそこそこ効果的、①のストロー吹くだけダイエットはそんなに効果的じゃないかも、みたいな印象を受けるでしょう。
 
私はこの手の企画を見ると、いつも違和感を感じてしまいます。
所詮バラエティー番組なんで変な突っ込みを入れるのも野暮な話ですが。
 
今回、このダイエット企画を医学的な観点で見た上で、以下に問題点を抽出してみようと思います。
 
1⃣まずどのダイエットも、挑戦したのが一人であること
→ダイエットは個人個人で合う、合わないが必ずあるので、ある個人で結果が出た、ある個人で結果が出なかっただけで効果がある、ないを判断することは当然できません。
よく健康食品のCMなどでは、「あくまで個人の感想です」みたいな注釈を入るのも、この指摘を考慮したものと思われます。
 
2⃣頑張らないダイエットと言いながら、かなり我慢を強いている
→この放送を見た方ならわかっていただけると思うのですが、②の「1日の食事を8時間以内に収めるだけダイエット」では、ある1日は打ち上げで24時頃まで居酒屋で飲み会する予定があるので、16時までは何も食べず我慢するというシーンがありました。女芸人の方もかなり我慢するのがつらそうなシーンが流されていましたが、でもよく考えると、この時点で頑張らないダイエットの趣旨から逸脱しているように思います。

 

3⃣いつも通り食べてよいというのが実践されているとは考えにくい。

→当然ですが、①のストロー吹くだけダイエットの女芸人の方みたいに、ダイエットをやった結果体重が増えたでは、番組として成り立ちません。

実際スタジオでも大ブーイングを受けていましたし、「あんだけ食べちゃそりゃ太るよ」みたいに言われていました。しかし、この企画自体が我慢しないダイエットをするという趣旨のもと行っているわけなので、これが本来あるべき姿だと思うのです。

 

ですが、当然番組としては体重が減ったというシーンが取りたいわけで、その数値が大きければ大きいほど番組としても盛り上がるし、より説得力のあるダイエットといえます。

 

また挑戦する女芸人の方も今後テレビに出て売れたいと思っているはずですし、今回の企画は大きなチャンスだと感じているはずです。

なので番組を盛り上げよう、そのために出来るだけ痩せようと無意識のうちに感じていると思います。 

 

そんな中普段と同じように食べて、普段と変わりない生活をするなんてことが出来るはずないというのが正直思うところです。番組では「焼き肉食べました」とか「ビール飲みました」みたいなシーンを流して、食事の我慢をしていないといった風な演出をしていましたが、私が思うに、それ以外のところではきっと食事もかなり我慢して、いつもよりはるかに多い運動もしていると思います。

やせなければこの企画自体が成り立たない、そんなことは女芸人の方たちもわかっているはずです。

 

やせる出汁を飲むだけダイエットで結果、3週間で4.47kgやせましたという数値を提示する。

→スタジオが盛り上がる。

→ここに専門医の解説を加えることでやせる出汁ダイエットが効果あるものだと説得力を持たせる。

 

もちろんテレビの企画であり、楽しんでみられるものということを大前提にしているので、これはこれで全然いいのですが、医学的な検証として考えた場合は非常に説得力に欠けるものです。

 

普段診察していると、よく「テレビで……がいいと言っていたから、その治療してほしい」であったり、「テレビで……がいいと言ってたから、その健康食品、健康サプリを飲んでいます」みたいなことを患者さんから言われます。

 

しかし本当にそれが正しいことなのか? 

疑わしいものではないか?

患者さん側もそういう視点を持つ必要があるんじゃないかなぁって思ったりします。

 

なんでもかんでもテレビで言ってたから信じる、これって結構危ないことなんじゃないかなぁって私は思ってしまうのです。

 

実際、このダイエット企画だって、信憑性に関してはかなり疑わしいものです。

 

仮に全然効果のないものを投与したって、その中でたまたま結果が出た一人に対して、密着してその様子を放送する、そこに専門医の意見を添える、この医師も当然番組がお金を払って意見してもらっている方なので、番組にとって都合の良いデータを用いてコメントをする。

 

こうして、視聴者を信じ込ませる。

 

これって実際のところ、すごく簡単に出来てしまうことですし、嘘をついているわけでもないので、問題視されることもありません。

 

情報社会の現在、医療に関する情報もテレビやインターネット上で溢れかえっています。

当然その中には正しくない情報も数多く存在しています。

 

なので視聴者側も「それ、本当に正しいことなのか?」って常に疑問を持つことは、すごく大切なことなんじゃないかなぁって私は思ってます。

 

と、長くなってしまいましたが、今日のところはこの辺で。

 

次回も、もう少しこの話題に関して、今度は医学的なエビデンスという観点から、この話題を掘り下げてみようと思います。

 

ではでは