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私は自治医科大学を卒業し、現在人口700人ほどの村にある診療所で、村唯一の医師として勤務しています。
本日
京アニ事件容疑者「こんなに優しくされたことなかった」 医療スタッフに感謝、転院前の病院で
というYahooニュースの記事を読みました。
手塚治虫先生のブラック・ジャックという漫画に「二度死んだ少年」という話があります。
以下簡単なあらすじです。
追いつめられた殺人犯の少年が、ビルから飛び降り自殺をした。まだ脳は生きている。助かれば裁判を受けられるから、と、たまたまニューヨークに来ていたブラック・ジャックに依頼が来たが、死にたい奴は死なせとけ、と、彼は断る。
そこで、やはり偶然ニューヨークに来ていた世界的な外科手術の権威、ゲーブル教授が引き受けることになった。彼は、ホテルのロビーで行き会った金ずくの医者、ブラック・ジャックに対する軽蔑を、隠さない。しかし、ゲーブルの執刀による手術は難航した。彼は恥を忍んで、(内密にして欲しい、という条件で)ブラック・ジャックに助けを求め、手術は成功した。
そして少年に死刑の判決が下った時、ブラック・ジャックは法廷で叫んだ。
「この少年は、いったん死んだんだ。その死んだ少年をわざわざ生き返らせて助けたんだぞ。死刑にするため助けたんじゃない!! どうしてわざわざ二回も殺すんだっ なぜあのまま死なせてやれなかった!?」
そして死刑を執行される前に少年が言います。
執行員 「なにか最後にいいたいことは?」
少年 「…あの おれの裁判の時にどなった人は誰ですか?」
執行員 「ブラック・ジャックとかいう医者だよ」
少年 「その人にありがとうと伝えてください」
最後にブラック・ジャックの悲哀な表情が映し出され、この話は終わります。
この記事を読んで私は「ブラック・ジャック」のこの話を思い出してしまいました。
おそらくこの犯人は死刑になるでしょう。
死刑を執行するために、犯罪者の命を医者は必死になって助ける。
もちろん私が担当したわけではないのですが、何とも言えない虚しさを感じてしまいました。
何なんでしょうね……