紹介状と大病院受診 〜紹介状なし受診の費用負担などに関して〜 | KMMのブログ

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人口700人程の村にある僻地診療所での勤務が終わり、現在は大学病院で勤務しています。
診療を通じてたことや、個人的に気になったことなど適宜書いていこうと思います。

お訪ねいただきありがとうございます。

 
私は自治医科大学を卒業し、現在人口700人ほどの村にある診療所で、村唯一の医師として勤務しています。
 
Yahooニュースで紹介状なしの費用負担についての記事がありました。以下がその内容です。
 
厚生労働省は30日、紹介状なしで大病院を受診した患者に一定以上の定額負担を義務化する制度について、対象病院をベッド数「400床以上」とする現行の枠組みを、より多くの病院に広げる案を示した。
2020年度診療報酬改定に制度見直しを盛り込む方針。

現在紹介状を持たない大病院への受診の場合、初診で5000円、再診では2500円が最低額と定められていて、全て患者さんの自己負担となっています。
 
僻地診療所でも数は多くないですが、「紹介状書いてほしい」と受診される方がいます。
 
おそらく都市部の開業医さんなら、かなり多いんじゃないでしょうか。
 
難しい問題だと思います。
 
こちらとしては、出来る限りの診察や検査をして、症状の原因を色々考察してから、適切な専門医に紹介したいとは思いますが、「そういうのはいいので、大病院に紹介してください」みたいに言われると、はなから信頼されてないのかなぁと感じてしまいます。
 
紹介状というのは、紹介もする側(開業医など)とされる側(総合病院など)の信頼関係の上に成り立っているものだと思います。
 
なので、ある程度は紹介する妥当性というか根拠を示すこと、これがやっぱり大事になってきて、なんでもかんでも紹介していると、「あの先生、自分では何も考えずに的外れな紹介ばっかりしてくる」みたいな印象を紹介先の先生に与えてしまいます。そうなると信頼関係も築きにくくなり、スムーズな紹介も行いにくくなります。
(事実、大病院の医者は結構紹介してくる開業医の文句を言っています。)
 
一つ症例をあげてみます。
症例:
最近足がむくみが気になる患者さん「A」がいたとします。Aさんは情報番組で「むくみは心臓が悪いサインかも」というのをみて、心配になり翌日に近くの開業医さんを受診しました。
そして先生に対し「むくんでいるのは、心臓が悪いサインかもってテレビで言ってたので、大病院の循環器の先生に紹介して欲しいです」と言ってきたとしましょう。
 
よくあるケースですが、この場合に開業医の先生の考えることとしては
 
むくみの原因は多岐に渡り、心臓、腎臓、肝臓、甲状腺、足の血管の問題など色々あるので、まずざっくりと血液検査でこれら臓器の異常がないか確認する必要がある。また心臓が心配であるなら、胸のレントゲンで心臓が大きくなっていないかや、超音波検査で心臓の動きに問題がないかどうかもチェックする必要があるだろう。
むくみは生活習慣も大いに影響するので、運動とか十分に出来ていない場合は、そのあたりの改善も必要だろう。
 
このように色々と推察し、診察や複数の検査を行うことで、むくみの原因をある程度絞り込んでいきます。
 
もちろん血液検査で心不全のマーカーとなる数値が上がっていて、胸部レントゲンで心拡大があり、心臓の超音波検査でも心臓の動きが悪くなっていたら、心臓がむくみの原因かもと考えて、循環器内科に紹介しようとなると思います。
 
しかし、実際むくみの原因の多くは心臓からきてるものではありません。なので、テレビ番組でみて心配になったからという理由だけでは、循環器の専門医に紹介しようとはならないのです。
 
こういった背景があるため、「患者さんが希望してるから」という理由だけでは、簡単には紹介できない、つまりは紹介状を書くのを渋られるとなるのだと思います。
 
でも今の時代、紹介状がないと総合病院に受診出来なくなっているので、「紹介状を書いて欲しい」という目的での受診があるのも、ある程度仕方ない部分はあると思うし、そういうものだと割り切ってやっていくしかないのかなぁと思う今日この頃です。
 
ではでは