前回に引き続き「医者のいる島・いない島」を見て思ったことを書いていこうと思います。
まず簡単に自己紹介すると、私は自治医科大学を卒業し、現在人口700人程の村にある、村唯一の診療所で働いており、村には医師は私一人しかおりません。看護師2名・事務2名と共に日々村の医療を支えています。私が働く診療所は、最寄りの総合病院までは車で40分程、距離にして25kmほどあり、大学病院までだと車で1時間以上車でかかります。
「医者のいる島・いない島」では
75歳以上の割合が5人に1人になると推察される2025年、超高齢社会を迎えるにあたり直面する問題を解決するヒントを見つけに、医者のいる島として沖縄の離島の渡名喜島を・いない島として広島の三角島などをそれぞれ取り上げています。
番組では「いつでもどんな症状でも見てくれる医者・総合診療医こそが超高齢社会を迎えるにあたっての問題解決の鍵となる」とまとめていました。
そして番組の中で「今後総合診療科を選択する医師、総合診療専門医を目指す医師が増えることが、問題解決には必要」といった内容のコメントを取り上げていたと思います。
これに関して私の思うことですが、半分正しくて、半分正しくないです。あくまで私個人の意見ですので、参考程度に聞いてもらえたらと思います
まず僻地や離島での医療においては総合診療を実践する必要がある、つまり外科的な処置が必要な患者さんが来ても、耳鼻科的な訴えの患者さんが来ても、膝や腰が痛いなど整形外科的な訴えの患者さんがきても、はたまた風邪やインフルエンザなど内科的な疾患の患者さんが来ても、専門医レベルとは言えなくとも、ある程度の対応ができる必要がある、これは完全に正しいです。そういった意味では、僻地や離島医療は総合診療を実践する場であるといえると思います。
ただ総合診療科を選択する医師である必要があるかと言われたら、答えはノーです。
まず私を含め、私の県出身の自治医大卒の先輩や後輩は、ほぼみんな僻地診療所での勤務を経験しています。
ただその中で総合診療科を選択した方は2‐3名程です。ほとんどは自分の専門科を別に持ちながら僻地医療しています。私も専門は総合診療科ではありませんし、僻地診療所で働く前は大学病院で勤務していたのですが、その時は自分の専門科の医師として働いていました。
普段から何でも診てくれて、相談に乗ってくれる、急に体調が悪くなった時の対応から、健康診断の結果についての相談まで幅広く対応する医療をプライマリー・ケアと言います。僻地診療所などで求められているのが、このプライマー・ケアの実践です。
私は、自分の専門科があっても、プライマリー・ケアを実践しようという意思を持って、一定期間整形外科や皮膚科・耳鼻科などの色々な科の基本的な処置や手技などを勉強すれば、プライマリー・ケアを行うことは出来ると思います。
私も、医者3年目の一年間でプライマリー・ケアを行うために必要とされる最低限の手技や知識は教えていただけました。なので今こうして僻地診療所で働けています。
その上で、例えば僻地診療所のような場所で、プライマリー・ケアを実際に行うことで、プライマリー・ケアで要求される細かい技術であったり、知識や知恵みたいなものが自然と身についていく、そういったものだと私は思っています。
実際自治医大の卒業生は、早いところでは卒後4年目には僻地診療所で勤務しています。渡名喜島の先生も30歳と若いお医者さんでした。
みんなそういった場所で働きながら日々プライマリー・ケアを勉強しているのです。
なので、総合診療科を選択する医師が必要というよりは、プライマリーケアを実践できる医師が増えること、このことが必要なんじゃないかなぁと私は思います。
そしてそのためには、①プライマリー・ケアに興味がある医師に対し、②プライマリー・ケアを実践する上で必要となる最低限の手技や知識を教える環境を用意する、③さらにプライマリー・ケアが必要とされている環境に実際に身を置き、一定期間プライマリー・ケアを実践する、このようなシステムを作っていくことが、必要なんじゃないかなぁと感じます。
実際プライマリー・ケアに興味がある医師は増えてきているようには思うのですが、それがなかなか→②→③へと進んでいかない、課題はそこかなぁというのが私の率直な感想です。
長い上にまとまりがなくてすいません。
次回も医者のいる島、いない島を観て思ったことの続きを書いていこうと思います。
ではでは
|