今日もPart1の寮生活、Part2の学生の特徴 に引き続き、自治医科大学の学生生活について書いていこうと思います。
本日は県人会というものについて。
まず自治医科大学には県人会という組織があります。
みなさんにとってあまり聞きなれない言葉かと思うのですが、自治医科大学の学生にとっては、在学中も、卒業した後も、この県人会というものが非常に重要な役割を果たしてきます。
まず簡単に県人会というものがどういったものか説明したいと思います。
自治医科大学は47都道府県から2-3人ずつが集まり、1学年の123名を成しています。
わかりやすくするため、福岡県を例にとって説明すると、福岡県からは毎年2-3名ずつ新入生が入ります。なので学生の中には1年生から6年生まで、各学年2-3名ずつ福岡県代表の方がおり、学生全体では12-18名の福岡県代表の方がいることになります。この12-18名からなる福岡県代表の自治医大の学生の集まりを県人会と言います。(広い概念では、各県代表の自治医大の卒業生、在校生の全部を含めて、県人会と呼んでいます。福岡県の例で言うと、1期生から現在自治医大の1年生である48期生まで、総勢100名を超える集団が福岡県人会と呼ばれるものとなります。)
各県に県人会があるので、47都道府県、つまり47個の県人会が自治医科大学には存在しています。
県人会ごとで多少の違いはありますが、県人会ごとに新歓や忘年会、追いコンや卒ガン(多分卒業試験頑張ってくださいの略)、6月にあるブロック会議の後の県庁の方との親睦会(各県の県庁の方が、一同に自治医科大学に集まり話し合いを行う会議です)など、年5-8回くらい県人会ごとで集まり、飲み会を開き、親睦を深めます。
自治医大では、部活の飲み会と、県人会の飲み会が重なった場合は、県人会の飲み会を優先しなきゃいけないという暗黙のルールみたいなものも存在しており、県人会の集まりは非常に重要なものと考えられています。
また県人会資料といって、出身県の先輩方が試験対策をまとめ、年々改良を加えながら、引き継いでいるマニュアルみたいなものもあったりします。
自治医大生は夏休みに地域実習があり、自分の出身県の先輩方が働いている僻地診療所などに、2泊3日の予定で実習に行くのですが、それも県人会の先輩、後輩2‐3人と一緒にいきます。
学生の間は、県人会のつながりよりも、毎日苦楽を共にする部活の仲間との飲み会やイベントの方が大事なように感じてしまうこともあります。
しかし働いてからは、県人会のつながりがいかに大切であるかをより強く実感します。
まず医師国家試験に合格し、研修医一年目として働きはじめる時、1番お世話になるのは同じ病院で研修医2年目として働く、県人会の一つ上の先輩になります。右も左もわからない1年目の研修医になったばかりの後輩に、働き方を手取り足取り教えてくれます。
最初に働く研修病院では、県人会の少し上の先輩(1年生の時の6年生の先輩など)が、後期研修として働いていたりもするので、指導医も県人会の先輩みたいなこともよくあります。
また僻地診療所で働く時も、引き継ぐ前任者は大抵の場合、県人会の学年の近い先輩であることが多いですし、僻地診療所と連携している後方支援の病院にも、必ず県人会の先輩や後輩がいてくれます。
つまり卒業後、出身県で行う9年間の義務年限においては、必ず県人会の先輩に仕事を教えてもらったり、助けてもらったりしながら、その中で自分に与えられた役割を全うしているのです。
県人会のつながりがもしなかったら、自治医大の方が僻地医療を実践することは、今より遥かに困難な仕事になると思います。
県人会のつながりとは、ある種兄弟みたいな感覚のものがあり、私たちの中に植えつけらた、切っても切れない絆みたいに感じます。
県人会の後輩が働きやすいように、働く環境を整えてあげよう、困っていたら助けてあげよう、そういったマインドが自治医大の先輩方から代々受け継がれてきたから、9年間の義務年限の間、安心して僻地という医療資源の乏しい場所で働けているのだと思います。
時々、医師偏在の解決策として、若い医師に一定期間、僻地で働かせることを義務化すればいいなどという意見を耳にします。その意見が間違っているとまでは思いませんが、しかしそのためには、僻地という環境で安心して働いていくためのサポート体制が整っていることが絶対条件になると思います。そこを解決しないままでは、とてもじゃないですが無理だと思います。
私が今僻地診療所で働けているのも、先輩方に僻地診療所での働き方を教えてもらい、また働きやすい環境を整えていただき、そして連携している後方支援の病院(県人会の先輩や後輩の方が多く働いています)のサポートがあってこそだと思っています。
と話が少しそれてしまいましたが、今日のところはこの辺で。自治医大における県人会というものの存在について、少しでも知っていただけたら光栄です。また適宜学生生活のことや、僻地医療のことなどについて書いていきたいと思います。
自治医大あるある:県人会で1番権力を持っているのは大抵の場合、学年が上の女性の先輩(6年生より権力があります。うちの県では4年生くらいから女帝と呼ばれていました。)
ではでは