今回も自治医科大学入学試験に関して、現在僻地で勤務している立場から思うことを述べていきたいと思います。
ご存知の通り、自治医科大学は「僻地で活躍する医師を育成する」ということを目的に設立された大学です。
なので一番伝えたいこととしては、自治医科大学に入学する、または目指すからには、「将来、僻地医療に貢献しよう、身をささげよう」という気持ちをもって入学してほしいと強く思います。
自治医大は学生生活の1.5倍の義務年限が課せられます。普通に6年で卒業すれば9年間の義務年限を、仮に2回留年するなどして8年間学生生活があれば12年間の義務年限が課せられます。
18歳、19歳くらいの歳の受験生にとっては、15年以上先の人生とはとてつもなく遠い未来に感じます。
受験生に僻地医療がどんなものか、なんてことはわかるはずはないと思います。
「Dr.コトー」みたいな感じの医者・・・もしそう思っているなら残念ながら全然違います。あれはドラマです・・・・
僕もDr.コトーが好きでしたし、自治医大を目指す理由としてそういったものがあっても全然いいとは思います。
僕が思う自治医大に入学してほしい方は
「僻地医療をしたいと思っている方」
「もし自治医大に合格した場合、自分は僻地医療に何かの縁があるんだろうと思い、一定期間は僻地医療に従事して頑張ろうという覚悟を持てる方」
この二つかなあと思います。
僻地医療を実際自分の目で見てきて、僻地医療がしたいと思い、自治医大に入学したみたいな方はほぼいません。
国公立医学部目指してたけど、自治医大合格したから自治医大に入学したという方が多かったように思います。
ただ自治医大に入学したからには、自分に与えられた義務を全うすべく、僻地医療に従事しようという覚悟をもってほしいとは思います。
入学された方の中には、残念ながら卒業後に義務を放棄される方も一定数います。私の学年でも10名程の方が義務を放棄されています。(ちなみにですが、義務を卒後すぐに放棄されても、2年目で放棄されても、7.8年目で放棄されても、県に返却する金額は同じです。返却額がどのくらいかははっきりとはわかりませんが・・・)
お金を払えば義務を放棄できるのは、権利といえば権利かもしれませんが、それなら最初から自治医大を目指すべきではないと思います。「医者になるため、たまたま自治医大に受かったから入学した、僻地で働きたいとは思いません」みたいな方はやはり他大学の医学部を目指すべきです。
9年間の義務年限とはいっても、すべてが僻地勤務ではありません。私の県のケースでいうと最初の2年間は研修医、途中2年は後期研修という形で大学病院などで勤務できます。もちろん自分の好きな科を選択できます。
残り5年の内、1年は200床程の地域の中核病院で総合内科を、残り4年が僻地診療所での勤務となります。
この4年間の僻地診療所勤務中も、週に1回は研修日がいただけて、大学病院含めた総合病院に自分の専門の科の勉強をしに行くことができます。なので専門の勉強が全然できないといったこともないかと思います。
40年以上続く医者の人生において、僻地で働く数年というものが、無駄であったり、キャリア形成に大きく不利であるかといわれると、そんなことはないかと思います。
大人になって微分や積分などの数学の知識を使うことがないけど、そういった勉強してきたことが無駄だったと思う方はいないかと思いますが、僻地医療もそんな感じです。
私は現在働いている僻地診療所で働く前は大学病院で勤務していました。そこで自分の専門分野については細かすぎるってくらい突っ込んでくるのに、患者さんが「ちょっと腰が痛くて」みたいなことを言うと、「それは整形外科だから」みたいな感じで冷たくあしらう医者をたくさん見てきました。
早くから専門をはじめてその分野を極めたいという気持ちもわからないではないですが、いい医者になっていくうえで決してそれがすべてではないということも思っています。
一定期間でも僻地医療を経験することはきっと、長い医者の人生において貴重な宝物になると思います。
なので僻地医療に従事する覚悟をもって頑張ってくれる方が、後輩として自治医大に入学してほしいと強く思っています。
今日のところはこの辺で。また自治医大の入学試験のことや、大学生活、僻地医療などについて、色々と書いていきたいと思います。
自治医大あるある: スーパーはカワチに行くか、かましんに行くかで悩む。
ではでは