当時アラフォーだった私が初めて東京本社の人事部長となった時、東京人事部は大問題を抱えていました(その後経理部へ戻りましたが、11後に再び人事部となって現在に至ります)。

私が異動になる2ヶ月前に退職した社員が、過去3年分の休日出勤手当+残業手当の未払い分を請求してきました。

その根拠となる帳票や在籍していた支店のサーバーから出力した、彼のパソコンのログイン時刻とログアウト時刻を明記したものが3年分添付され、それらは段ボール1箱にもなって送り付けられました。

この問題への対処の途中で大阪本社の人事部長へ異動となる前任者からは「厄介なものを押し付けて申し訳ない」と頭を下げられてしまいました。

 

その元社員はマイクロソフトのMOT(≒現・MCT)資格を保持していることは会社に申告してその分の資格手当が支給されていましたが、会社に申告していなかった同じくマイクロソフトのMCSE (≒現・Microsoft Certified:Windows Server Hybrid Administrator Associate)の認定証のコピーも段ボール箱に入っていました。

前任の人事部長がシステム部長に確認したところ、MCSEならばサーバーを操作してクライアントパソコンのログイン時刻とログアウト時刻を帳票として出力することは可能だ、と判明しました。

私が着任した時は、休日出勤手当と残業手当になぜ未払いがあるのかをちょうど確認している最中でした。

顧問の社会保険労務士が「背後に社会保険労務士もしくは弁護士がいるのでは?」と感じるほど整った書面でした。

 

その後、給与担当の課長が厄介なことを報告してきました。

元社員の時間外手当・休日出勤手当申請書は、元社員の直属の課長及び支店長は満額承認していたのが、さらに上席者である東京営業部の次長が22:00以降の残業を却下して差し戻し、書き換えを指示していたことがわかりました。

それを巡って支店長と東京営業部の次長との間でかなり険しいやり取りがあったこともわかりました。

給与課長のヒアリングに対し、東京営業部の次長は「午前2時にも及ぶ長時間残業はあり得ない。どうせチンタラやっていたに違いない」と主張し、22:00以降の残業を認めなかったそうです。

支店長は「書き直せというならばどこをどう直すのかを元社員の時間外手当・休日出勤手当申請書に赤書きしてほしい」と要求し、次長は「そんなことをしたら、オレが指示したことが形に残ってしまうだろ!」と突っぱねていました。

念の為、東京営業部の次長が他の社員に対しても同じことをしていないかどうか、東京営業部管轄の支店に調べを入れるように指示しました。

 

又、元社員がいた支店のビルの防犯カメラを確認することになり、残っていた約1週間分の映像を私と東京営業部の次長も一緒に見たところ、元社員は退勤迄間断なく仕事をしていました。

それでも次長は「ヤツの残業を認めたら、節度を以て申請している他の社員達に示しがつきません」と口答えし、私は「ローキ(労働基準監督署)が介入してきたら始末書では済まへんで。口は慎め」とたしなめました。

 

給与課長より、東京営業部の次長が元社員以外にもサービス残業の強要をしていたかどうかの調査結果の報告があり、残業カットは東京営業部の管轄下の支店すべてに及んでいました。

ただ、却下の基準に一貫性が見いだせず場当たり的に否認していた疑いがある、との報告でした。

又、ある支店で残業食事代としての経費精算で、支店の近くのコンビニのレシートの時刻が午前1時になっているものを却下したことがあることもわかりました。

ちなみに、前任の人事部長は「残業を減らすように各部門へ要請したが、ザービス残業は絶対にさせないように併せて要請していた」とも語っていました。

 

更に人事課長から、東京営業部の次長と元社員のプロフィールについて詳細な説明がありました。

両名は2歳違いで共に都内の大学を卒業した中途採用で、元社員は一般職で入社し主任~係長と昇格していました。

東京営業部・次長は課長待遇での入社で、都内の支店長を経て東京営業部へ異動の際に次長職へ昇格して3年たっていました。

私が2人の履歴書を見ていて気付いたことは、好きなスポーツが共にボクシングでした。

私は大学2回生の時の体育実技がボクシングで、何回か後楽園での大学対抗試合を見学したことがあり「ひょっとしてこの2人は、大学生の時に試合で接点があったかも?」と感じました。

(続く)