このところ、トラブルものが多くなってしまって申し訳ありません。

今回ご紹介するのは、私が勤めている会社のある支店の課長がパワハラにより名誉棄損罪と侮辱罪で起訴されて懲戒解雇となったことのリポートです。

2022年6月に侮辱罪が厳罰化され、拘留(30日未満の刑事施設への収監)又は科料(1万円未満の罰金)から、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金となりました。

上司だから何を言っても許された時代は終わり、今は暴言を理由に有罪となる時代になりました。

 

人事部では、15年ほど前から人事課が職位別研修を行い、パワハラに対する注意喚起を行ってきました。

今はスマホですぐ録音ができるようになり、音声記録を取って告発してくる例が急増している為、人事課では『日頃から、上司・同僚・部下を問わず自身の言動に注意を』と啓発してきました。

しかし、人は簡単には変われるものではなく、俗にいう昭和気質の人や体育会系の人が不適切な発言をする例が後を絶ちません。

私が勤務する会社でも、残念ながら暴言によるパワハラ事件が起きてしまい、複数の被害者は音声データを取って警察へ告訴した為、刑事事件に発展しました。

人事部には公益通報窓口があり、ハラスメントや不正取引等の内部通報に対応しています。

しかし、今回のパワハラの件では、人事部の通報窓口ではなく直接警察へ通報という事態を招き、社内の通報窓口への信頼度が低いことに危機感を持ちました。

 

ある朝、その課長が勤務する支店へ刑事さんが訪れ、その課長を任意同行として警察署へ連れて行ってしまいました。

私が顧問弁護士と共にその警察署へ出向いたところ、名誉棄損罪と侮辱罪の疑いがかけられている旨の説明があり「接見できるのはその本人が選任した弁護士のみ」とのことで、警察では詳細を把握することはできませんでした。

その足で支店へ行って聞き取りをしたところ、その課長は普段から自分の課の全員に対して不適切な言動を繰り返しており、支店長が再三注意しても全く改まらなかったことがわかりました。

翌朝には、課長が名誉棄損罪と侮辱罪の容疑で送検されたことがわかりました。

私は緊急の人事会議を招集し、刑事処分が確定する迄はその課長を出勤停止とする仮処分を決議しました。

課長からは休職願が提出されましたが、その後の人事会議ではこれを受理せずに懲戒解雇とする決定をしました。

その折に、管理部門統括の取締役から「今後はこのような事態を未然に防ぐように、問題社員に関する情報収集の方策を改善するように」と厳重注意を受けました。

私の日頃の危機管理が甘かったのは事実で、深く反省しています。

ただしこれは会社を守る意味ではなく、問題人物により苦しむ社員を無くせなかったことへの反省です。

 

問題の課長は、略式の罰金命令ではなく本当に起訴されしまい、顧問弁護士が「検察がよほど悪質と判断したのでは?」とびっくりの事態となってしまいました。

刑事裁判は執行猶なしの実刑判決となり、課長は無罪を主張して控訴して刑事裁判が続いています。

パワハラ被害に遭った部下全員へは、社長が直接謝罪し社長と営業担当取締役は減俸処分となりました。

その後、部下全員が課長へ慰謝料を請求する民事裁判も並行して続いています。