昨日より、北陸新幹線が金沢から敦賀迄延伸営業を開始しました。

(北陸新幹線で運行されているW7系・E7系/Wikipediaより)

お祝いムードの敦賀はじめ沿線の人々に水を差すことになって恐縮ながら、個人的には北陸新幹線は少なくとも2037年迄は敦賀止まりとなるものとみています。

最悪の場合は、敦賀以西は完全に着工凍結となります。

(TBS NEWS DIGより小浜ルート米原ルート)

 

私は、2037年迄にリニア中央新幹線が新大阪へ全線開業して東海道新幹線のダイヤに余裕が生じてから、北陸新幹線は敦賀から米原ルートで延伸され、東海道新幹線へ乗入れて新大阪への運転が実現する、と推測しています。

敦賀から小浜ルートで新大阪へ延伸できない理由は次の3つの理由で滋賀県京都府が反対している為です。

①滋賀県内の並行在来線問題

②京都府の地下水問題

③京都府のトンネル残土問題

これらの自治体が反対している限り、整備新幹線法の絡みでJR西日本は着工できません。

この為、一部のYou Tuberは『北陸新幹線は永久に敦賀止まりになるかも』といった主張を掲げています。

 

JR西日本が並行在来線と主張する湖西線のうち、経営分離するのがほぼ確実な敦賀寄りの区間を第3セクターとして引受けるのを滋賀県は拒否しています。

拒否するのは当然で、現在の湖西線は大阪⇔金沢の特急サンダーバードが走っているので黒字ですが、北陸新幹線が新大阪へ乗り入れたら特急サンダーバード廃止され、湖西線のうち通勤利用者が少ない敦賀寄りの区間は赤字へ転落します。

しかし、現在構想されている小浜ルートでは新幹線は滋賀県を通らないことから、滋賀県には北陸新幹線の恩恵はまったくありません

 

京都府の2つの反対理由のうち、②は丹波杜氏で知られる京都府の酒造業界に多大な悪影響を及ぼすことが懸念されています。

③はトンネル長が世界最長クラスになる為、中日新聞の報道では甲子園に積んだら200mの高さに及ぶと試算されています。

その土を運ぶダンプカーが多数往来することになるわけで、工事現場に想定されている地域の交通安全にも支障が生じることも懸念されています。

③は感情的な動機を含んでいるので賛成とも反対とも言えませんが、②は現実に地下水が枯渇した場合、京都府だけでなく日本の経済にも影響が生じかねないので、反対理由としては正当性があると言えましょう。

 

最終的には米原ルートになると予想していますが、これはJR西日本にとっては最もおいしくない選択です。

理由は、米原から東海道新幹線に乗り入れるとなると、米原~新大阪間はJR東海にその売上を持って行かれるからです。

それに加え、北陸新幹線や東北新幹線をはじめJR東日本が運行する新幹線は運行システムが東海道新幹線とは異なる為、東海道新幹線の運行システムと互換性がある車両を新たに開発しなくてはならなくなります。

又、最高速度は、北陸新幹線は260㎞/hなのに対し、東海道新幹線は285㎞/hで山陽新幹線へ乗り入れるとなると300㎞/h対応の車両が必要となります。

その点では、東海道新幹線と山陽新幹線で運行されているN700S系車両は床下機器のスペースに余裕があり、N700S系に北陸新幹線用の互換システムを追加した仕様にしたら運行システム上の問題は解決可能と考えます。

(JR東海のN700S系/Wikipediaより)

 

田中角栄首相が小浜ルートで北陸新幹線を構想した1970年代には、京都府内を大深度トンネルで通すことまでは見通しが立っていませんでしたし、並行在来線という概念もありませんでした。

小浜ルートを現実に推し進めようとした21世紀になって初めて諸々の問題点が浮上し、敦賀以西の延伸着工の見通しが立たなくなってしまう事態は、田中角栄首相にはまったく見通せなかったことでした。