サルヴァトーレ・アッカルド(1941年生)というイタリアのヴァイオリニストがいます。
少年時代から『パガニーニの再来』と称賛されてきました。
そのアッカルドはパガニーニのヴァイオリン協奏曲のうち現存する全6曲を2回レコード録音しました(第2番は3回)。
最初の全曲録音は34歳になる1975年にシャルル・デュトワ(1935年生)指揮ロンドンフィルハーモニー管弦楽団との共演でドイツグラモフォンというレーベルより発売され、当時は大変な人気盤になりました。
ところが57歳になる1998年にイタリアの室内楽オーケストラ(Orchestra da Camera Itariana)を弾き振りして再収録し、翌1999年にEMIレーベルより発売され、こちらの方は賛否両論でした。
理由は、テクニックの衰えという観点で「評価に値しない」という意見があったからでした。
(左は1975年発売のDG盤で、右が1999年発売のWarner盤=EMIの継承レーベル)
テクニックという点については、ヴァイオリンを学んだ弟(学生オケで第1ヴァイオリンの第2席=コンサートマスターの隣)に両方とも聴いて確認してもらったところ「新盤にはわずかな衰えを感じさせる箇所が第2協奏曲に1ヶ所あるだけで、自作カデンツァは新盤の方が完成度が高くなって圧倒的に良い」という意見でした。
内容的には、私は新盤の方を評価していたので、やはり弾き振りの方がアッカルドのパガニーニを完遂できたと言えます。
旧盤では、6歳年長のドュトワの指揮が個性を出していたので、アッカルドはかなり遠慮していた感がありました。
パガニーニの世界を余すところなく表現しきったのは新盤に間違いありません。
毎度おなじみ楽器配置については、旧盤は、ストコフスキー式現代配置がウリのドュトワが、チェロとコントラバスを右側に配しながら第2ヴァイオリンも右側に配する折衷型対向配置で振っていました。
(レコーディングエンジニアが意図的に第2ヴァイオリンの音をダイレクトに拾っていないため現代配置に聴こえますが、ヴィオラが中央左寄りから聞こえるので対向配置と分かりました)
新盤はチェロとコントラバスを左側に配する古典型対向配置となっていました。