業界きってのフルトヴェングラーの大ファンとして知られているのがダニエル・バレンボイム(1942年生)です。

アルゼンチン生まれのイスラエル人という出自にもかかわらず、音楽的にはドイツ人と勘違いするほどドイツ的で、ヴァーグナーの指揮に熱心なためイスラエル政府からはよく思われていません。

彼の私生活については感心できない点(*)がありますが、音楽的には大変気に入っており、同世代のクリストフ・エッシェンバッハ(1940年生)と同じくピアニスト出身の指揮者です。

*=最初の夫人だったジャクリーヌ・デュプレ(1945~1987)が多発性硬化症の末期で苦しんでいる最中に現夫人のエレーナ・バシュキロワ(1958年生)と不倫同棲していいました。

 

バレンボイムとエッシェンバッハはフルトヴェングラーの薫陶を受けて指揮者を志した点が共通し、私は何かにつけて2人を比較してしまいます。

エッシェンバッハはオペラよりはコンサートの比重が多いのに対し、21世紀のフルヴェンを目指すバレンボイムはコンサートとオペラの両方を精力的に指揮しています。

ピアニストとしてはエッシェンバッハの方が好きですが、華麗なテクニックを聴かせるバレンボイムも魅力的です。

特にベートーヴェンのピアノ協奏曲の全曲収録を2度行ったという点では、バレンボイムは歴史に刻まれるべき人です。

1回目はクレンペラーの指揮(というより徹底的な管制下)で、2回目は首席指揮者を務めるベルリン国立歌劇場管弦楽団を弾き振りしてのもので素晴らしい出来でした。

ただし、それはクレンペラーとの1回目の収録があったからこそ達し得た境地であったことは言うまでもありません。

エッシェンバッハとバレンボイムはベートーヴェンの交響曲は共通するレパートリーで、バレンボイムはこれに加えてブルックナーの指揮に熱心で、エッシェンバッハはマーラーの指揮に熱心です。

 

私が選ぶバレンボイムのベスト盤は、ベートーヴェンでもブルックナーでもヴァーグナーでもなく、彼の心の師であるフルトヴェングラーの交響曲第2番です。

当時首席指揮者を務めていたシカゴ交響楽団を指揮した演奏が特に気に入っています(作曲者へ敬意を表してか、古典型対向配置です)。