毎度~
現地観戦しましたが、村田は残念でした。
実力的には、ヌジカムより上ととれましたが、経験不足が今回の結果として現れたように思います。
ちなみに、わたくしの採点はヌジカム116-111でした。
テレビの録画はまだ観ていませんが、ネットやSNSで村田が勝ったと騒いでいる方々は察するに、村田ヨイショな解説に惑わされているのではないでしょうか?
ボクシングという競技は、全体を通しての印象採点競技ではなく、1Rから12Rまで独立したラウンド毎に採点をする競技です。
ボクシングにあまり詳しくない方々からは、「ダウンを取ったのに村田の負けはおかしい」や「村田が攻めてヌジカムは逃げていたのにヌジカムの勝ちはおかしい」という意見が多く見て取れますが、先にも書きましたようにボクシングの採点はラウンド毎の積み重ねで、ラウンド毎に優劣をつけるテンポイントマストシステムという採点方式になっておりますので、「ダウンを取った~」「村田が攻めていた~」という理論は通用しません。
また、その採点をするうえでの一番大きな要素は「有効なクリーンヒット」でそれが採点の7割を占めるといわれております。
それが該当しない場合、「手数」や「アグレッシブさ、主導権支配」「防御テクニック」などを考慮して10-9をつけることとなります。
村田は、4Rにダウンを奪い、5R、7Rにヌジカムを効かせるシーンがありましたので、そのラウンドは間違いなく村田が取ったと思います。
他のラウンドは、ヌジカムが手数多げにアウトボクシングに徹し、村田が手数少なげに追いまわす展開でした。
そんなボクシングでポイントを取ることは難しいように思えました。
なにせ今回の試合、お互いに有効なクリーンヒットが少なかったので、村田のガードの上からでもジャブを突き続けてアウトボクシングし、村田に手数を出させなかったヌジカムにポイントが流れるのも致し方ないように思えます。
ジャッジ2者はヌジカムの中差判定勝ち(116-111、115-112)にしておりますのでヌジカムのジャブとアウトボクシングを評価したのだと思います。世界的な採点傾向やルールからも妥当だと思います。
1人のジャッジが村田の大差判定勝ち(117-110)につけましたが、これは村田の手数なき前進をアグレッシブと評価し、瞬間的に打たれ弱いヌジカムのダメージを村田にとって過大に評価しすぎた結果でしょう。ここまでジャッジの裁定に開きがあることも問題なのですが…
ボクシングは興行的な側面、格闘技的な側面、スポーツ的な側面のある競技です。
今回、格闘技的な側面からすると村田の勝ちだと思います。
スポーツ的見地に立ちますと、ラウンドマストシステムというルールに則って出た結果ですから、ヌジカムの勝ちでしょう。
今回、村田は負けたわけですが、個人的には『興行的な側面』が敗因だと思います。
まず、村田の世界戦までの過程ですが、世界的な強豪との対戦歴なきまま、『2番手王座』とはいえ世界王座決定戦に出場できてしまう部分が問題なのかと思います。
フジテレビの資金力と帝拳の政治力を掛けあわせて、相応の実力を身につけぬまま、世界の上位にランクされてしまったことは村田にとって不幸だったのではないでしょうか。
その他にも問題点があります。
冒頭に『2番手王座決定戦』と書きましたが、試合会場ではリングアナウンス等、その事実には一切触れられておりませんでした。
ボクシングをよく知らない人に言っておきますが、WBAのミドル級という階級にはすでに、ゲンナジー・ゴロフキンという『スーパー王者』という肩書きの王者がいて、村田が出場した『WBA世界ミドル級王座決定戦』はゲンナジー・ゴロフキンという真のWBA王者の下の王座でしかないのです。
こういう事実を隠して『王座決定戦』と銘うって興行を行うことは問題だと思います。
もし、テレビでその事実を伝えていたのでしたら、フジテレビ、帝拳さんに謝罪します。
村田の話に戻りますが、ヌジカムという自身初の世界ランク相応の実力者と対戦した事で、そのプレッシャーの強さ、パンチの強さ、フェイント力、テクニックほか全てに関して、村田にとって未体験ゾーンだったように見えました。
ヌジカムを追い回すものの元々、攻防分離傾向が強かった村田がいつも以上に攻防分離で手数が少なく、得意の左ボディーブローもほとんど出ず、顔面右ストレート一発狙いになっていました。
ヌジカムの瞬間的な打たれ弱さはvs.ピーター・クイリンやvs.デビッド・レミューで証明されてますから、陣営は実力未知数な村田でも勝てると踏んだのでしょうが、世界戦へ漕ぎつくまでのマッチメイクがあまりにも拙すぎたように思えます。
初めに書きましたが、実力ではヌジカムより村田のほうが上のように思います。
村田が現役続行するのでしたら、アメリカで練習をしてアメリカでキャリアを積むべきだと思います。
年齢的にも階級的にも最初で最後のチャンスだったのかも知れませんが、村田にはまだまだ伸びしろがあるように感じました。
個人的には現役を続行してほしいです。
【追記】
改めてテレビ録画を見返しましたが、わたくし的な結論はヌジカムの115-112判定勝ちでした。
テレビで見ると試合中、村田は笑みを浮かべるシーンも多く、観戦者からすると「おっ、村田は余裕なんだな」と見て取れ、それが敗戦へのうっ憤の一つにも数えられると思います。
また、解説に帝拳OBの西岡を起用し、ゲスト解説に帝拳ジム所属の山中チャンピオンを使うのはどうかと思いました。
村田のお友達が全国ネットで村田不利な発言をするわけないでしょ。
村田擁護的な発言をしますと、7Rに右ストレートを当ててヌジカムがロープに吹っ飛んだシーン、あれはレフェリーによってはダウンをとるブローです。
ダウンの解釈には、『仮にロープが無ければ倒れていた』というものがありますので、あのシーンはまさにそれに該当すると思います。
んまぁ、それをダウンとしても個人的な採点は114-112でヌジカムなのですけどね。
テレビを見て実況を聞いて知ったのですが、今回の敗戦は陣営の作戦ミスも大きいですね。
あのジャブを使わずにガードを固めてていて近づき、すきを見て右強打を打ちこむというスタイルは、現在のボクシングではタブーな策でしょう。
現在、その完全攻防分離システムを遂行している世界的に名の知れたボクサーは、アルツール・アブラハム(アルメニア/ドイツ)のみで、そのアブラハムも昨年、フルマークの判定負けで王座から陥落しています。
世界レベルの経験の少ない村田の能力を最大限に発揮する最良の策だと考えたのでしょうが、世界的に類を見ない作戦は数年前、当時、軽量級最強とする人も少なくなかった5階級制覇王者ノニト・ドナイレにアメリカで挑戦した際の西岡利彰のボクシングとかぶります。
前半防御に専念し相手の疲労消耗を待ち、後半に勝負をかけるという消極策を取り、見るも無残な惨敗を喫してしまいました。
当時の西岡のポテンシャルを全く発揮させぬままね…
さきほど帝拳ジムのHPを見ましたが、WBAのヒルベルト・メンドーサ会長が今回の採点に関して帝拳ジムに謝罪をしたそうですね。試合を見た自身の採点は大差で村田の判定勝ちだとも言ったようです。
そして、ダイレクト再戦にむけて動くとも約束したそうです。
村田のプロモータでもある帝拳ジム会長のセニョール本田は世界的に影響力の強いプロモーターです。
日本で行われる世界戦は、彼を通さなければ実現できないとも言われています。
そして、そのパートナーでもあり世界一のプロモーターといわれることもあるトップランク社のボブ・アラムも村田のプロモートに噛んでいます。
何度も言いますが、ボクシングは興行的な側面を持ち、それがルールにまで反映されてしまうことも少なくない競技です。
実際、統括団体よりもテレビ局、大手プロモーターのほうが力を持っていると言っても過言ではありません。
そして何よりも今回の試合を統括したWBAという団体は、一つの階級に「スーパー王者」「王者」「暫定王者」と3人の世界王者を認定し、世界戦認証料を荒稼ぎしする営利団体です。
そのような流れから、おそらく今年中にヌジカムと村田のダイレクトリマッチが行われると思います。
個人的には歓迎できない事態なのですが、今回、経験不足と陣営の作戦ミスから、己のポテンシャルを存分に発揮できなかった村田には朗報でしょうね。
敗戦を受け入れている村田が再起するかどうかは分りませんが、もし再起すれば個人的には圧勝すると思います。
今回、世界的な強豪とフルラウンド拳を交えた経験は、村田にとってとてつもなく大きいものです。
お飾り的な2番手世界王座を奪取するという色合いではなく、一人の男として借りを返してほしいと思います。