5/28(水)1730

さいたま市文化センター(南浦和)にて千秋楽を観劇。 

21列めセンターブロックにて。カンフェティで抽選でもなくスンナリ購入できました。

最大2006席、満席ではなかったものの、よく入っていたと思います。当日券の人もいました。小学生男子も複数。テーマが重苦しいのに珍しい客層なので目立ちました。わかってると思うけど、ライオンキングじゃないんだけどな…


https://30-delux.net/destiny2025/



元光GENJIの佐藤アツヒロが主演で、サンシャインを皮切りに久留米、大阪、名古屋を回って25公演。埼玉が千秋楽。埼玉はこの一公演かぎりで、大千秋楽です。

幕間20分含めて2時間40分とそもそも大作でしたが、30分以上延びましたかね〜。フィナーレの挨拶の後、プロローグ再現もありました。ま大千秋楽ですからね。


ヒロインはライカの王女ユミン(瀬戸かずや)、好敵手枠が間諜アラン(吉原雅斗)、ライカの大将軍タムトックに緒月遠麻という布陣。あきらときたろうが出るからには見に行かないとね、と思いましたが、4月末のサンシャイン劇場ではまだ療養中の歩行に自信がなく、5月末まで待っていて、ようやく大千秋楽の日に初見。


物語の舞台はライカという国を真ん中に描かれ、盗賊集団ゴンダルに侵略されるという視点から。

村を焼かれ家族皆殺しにあった生き残りジン(後のテムジン)が、死にたくないという強い願いから悪魔と契約したことで強さを得て王にまで上りつめていくというのが大筋です。ただしその契約には過酷な条件があって…

一方侵略者のゴンダル側にも信じる正義があって、彼らの中にも家族愛や揺れ動く心があることも描かれます。とりわけ何年もの間ライカ側の密偵として入り込んでいるアランは、母国への強い忠誠がありながらも身近で暮らすゴンダルに情が移るのに抗えないのにも胸を打たれます。

悪魔との契約を果たすため殺戮を繰り返すテムジンも、ライカの民(味方)は殺さないことをたった一つの矜持として自分を正当化することで、なんとか正気を保っていますが、王や王国というのは数え切れない屍の上に立っているのだとつくづく思い知らされる展開ですね〜。


30-Delux(サーティデラックス)という演劇集団、主宰?の清水順二が要らしい。AIによれば「笑って泣けて考えさせられてかっこいいエンタメ性を重視する演劇ユニット」なのだそうで、方向性としては劇団☆新感線と似ているな〜。毎回出演者が異なるのも、深刻な物語なのに突然お笑い要素が入ってくるのも似てる。清水順二自身が役者なので、出演者にはこだわりをもってオファーしているらしい。

毛利亘宏作、林明寛演出。ふたりとも若手の物書きで、再々演のこの作品の初演から関わっていたのかは不明ですが、清水順二の意図をよく汲んでしっかりした脚本に仕上がっていると感じました。

清水自身は語り部として舞台に影のように登場して、客席を導きます。また彼の「エンタメ性」を目指す試みとしてか、お客さんの入場の時にお迎えに出ていたり、全ての会場で行なっていたのかはわかりませんが、ロビーで「ゴンダルの武器屋(持ってみることが可能)」や「イリスの占い部屋」?などのブースがあり開演前にワイワイ楽しむファンの方たちも。



また開演15分前からは、携帯の電源や、観劇姿勢、撮影録音の禁止などの注意事項、コール&レスポンスの練習や御当地ネタの披露(埼玉では〝十万石まんじゅう〟)など、単なるお願いレベルを超えた20分以上の前座的なパフォーマンスがありました。芝居か出演者かの固定ファンも多いらしく、5回以上観た人?という質問にはかなりの数の手が、10回以上というのにも複数の手が挙がっていました。



※この前座までは撮影OK。これも珍しい。SNSで発信してほしいということでした。




それで目当てだったあきらときたさんですが、


あきらはヒロインのユミン姫。長い髪をポニーテールに高く結い、足元までのストンと落ちる赤基調のドレス。イメージとしては中央アジアふうの衣装。ややきつい顔立ちながらスラリとした美人さんでした。自国をめぐる闘争のなかで、ユミン姫の望むのは王国の存続だけであり、それなのに女性は王になれないとかしょうもない縛りのおかげで、結局はテムジンに政略結婚を申し入れることに。男勝りでまっしぐらな性格ながら、剣術の実力が伴っているわけではなさそうで、そこはちょっと中途半端な設定で残念。感情が先走りして考えはさほど深くないのだな…。勇猛な女性武将でも、知に長けた王女とかでもよかったのに。でもここはテムジンが主役だから王女の掘り下げがあまくても仕方ないか…

しかしながらソロ歌唱も何箇所もあり、退団後こんなに露出が多かった長丁場の大きな舞台ははじめてだったかも?


きたさんは出てるのがわかってるのに、気がつくのが遅れました。というのは完全な男役で、他の男性陣と遜色なかったから。あとでよく見れば顔の小ささが際立っていましたが、カンペキに男の武将としてまぎれてしまっていました。大将軍という役でいつも軍装をしているので肩幅や胸の厚みなども出ていて、背もほとんどの本物の男性よりも高く、おヒゲもお似合いで抜群のかっこよさでした。


30-Deluxは(まだ)メジャーなユニットではないし、かつて元タカラジェンヌが関わったことがあるかはわかりませんが、今回タカラジェンヌのポテンシャルの高さを示したことで、もしかするとなにか道が拓けるかもしれませんね。 


主役の佐藤アツヒロについてひとことだけ。実は私この人のアイドル時代を全く知りません。いきなりイケオジで初見。笑

この芝居の中では襲撃された村で親に逃げるように促されて一人生き残ったということで、おそらく少年か、少なくとも青年だったと思われるのですが、その設定だとちと無理のある容貌だったかな〜。スターの貫禄は充分、悪魔との契約に苦しむ演技は迫力がありましたが、さすがに青年には見えなかった…たぶん密偵役だったアランを演じた吉原雅斗(30歳)とチェンジのほうがリアリティはあったのではなかったかと。まぁ格付けとか、チケット売れるかとか、様々な思惑の末のキャスティングでしょうから仕方のないところ。その年齢的なミスマッチ以外は、ラストの「私は弱い王になろう」と慟哭のなか決意するさままで迫真の演技はすばらしいと思いました。


アンサンブルの方々は、かつて見たことのあるいくつかの舞台のように、身体能力を魅せるアクロバット的な感じとは異なり、激しいというよりは流れるような美しい殺陣をみせてくれました。主宰の清水順二は殺陣の普及にも力を入れているようで、親子などを対象とするワークショップのチラシが配られていました。


多方面に活躍の場を広げるエネルギッシュさには感嘆するばかり。今日も開幕前から、幕間も客席を回りながら声をかけるなど(一人客席降りw)、一人で何人分も動いていて。ハコとしてはとても小劇場ではありませんが、観客と近い小劇場的な良さを、自分の原点を忘れないようにしてるのかな?とも思えました。「好き」が原動力かもしれませんが、生きることは楽しむことを体現しているように感じました。

また何かチャンスがあれば観てみたいです。


蛇足ながら

デスティニーとは運命

アドラメレクとは諸説あれどサタンを表すと考えられ、この芝居の悪魔役はサタンと似た響きのシャイターンという役名でした。HPのビジュアルより更に真っ白な白塗りの鈴木達央さんは、「この次はもう少し素顔のわかる役で(出たい)」と、笑いを誘っていました。