前回『ファイアーブランド』に行ったとき、ロビーにあったポスターを見て(見たいな〜)と思っていた作品。どこかで目にしたらしい夫からも、「あなた、これ見たいでしょ」と見透かされていたりしました(笑)
隠すつもりも言いふらすつもりもありませんが、生家がカトリックで、小学校卒業まではカトリック教会に通いました。中学進学で近くにプロテスタントのミッションスクールしかなかったことから、以降6年間はプロテスタントの礼拝に出ることになりました。学校でも批判も矯正もされませんでしたので、カトリックの土壌にプロテスタントの肥料が撒かれたような具合で10代を過ごし、いかにも日本らしい宗教観が出来上がったような気がしています。
それでもずっとバチカンや教皇(私にとってはほとんどパウロ6世)は、地理的には遠いながら心理的には近い存在としてありましたので、この映画への興味はしごく自然だったと思います。
4/21、現教皇が亡くなったというニュースが流れ、ビックリ!だって前日、イースターのミサでお姿を見たばかりでしたから。この日までなんとか…というお気持ちの張りが切れたのでしょうか?キリスト教徒にとっては、神のみもとに還ったということで悲しいばかりでもありませんが、これから起こる様々な煩わしさを思うと、いささか気が滅入るのもたしかでしょう。そんなゴタゴタを描いた作品。
はからずもタイムリーな鑑賞となりました。時事問題でもあるためか、当日券を求める人も多く、入ってみると7割以上は埋まっていたかと。男性が多いのも珍しい。演劇にしてもコンサートにしても、文化的活動にはどこでも女性客が占める割合が高いイメージですが、テーマが選挙だからかもしれないですね。
2時間弱程度の作品で、実は宙組のソワレ前にTOHOシネマズシャンテで拝見。ちょうど開場時間頃(1510)に終わってすぐに劇場へ。ムダのないスケジュールでした。

まず主人公ローレンス(レイフ・ファインズ :ハリー・ポッターシリーズのヴォルデモート!)
シスターアグネス(イザベラ•ロッセリーニ : イングリッド・バーグマンの娘とか)
ベニテス枢機卿(カルロス•ディエス : メキシコ人俳優)
候補者をしぼっていく過程での、ローレンスの心の動きの表現は本当にみごとで、沈黙も多いのに眠気は一切起きず、引き込まれて見入りました。
堅物と見られたシスターアグネスが、自分の信じる正義に従って勇気を奮うのには感動しました。
なんだか胡散臭い登場をしたベニテスが、人の思惑に左右されない真っ直ぐな人で、テロリストによる爆破事件が起こった混乱の中で、実体験に即した言葉を力強く放つのに、選挙の行方を見た気がしました、が…
最後に思いもしないどんでん返しが控えています。
私はネタバレは自分も気にならないタチで、自分がバラすのも(見たくない人は見なければいい)と思うのですが、この作品だけは自分で結末を見てほしいです。
カトリックの総本山で繰り広げられる現代社会の縮図のような、野心、陰謀、差別、保守とリベラルの対立が渦巻く中での信仰心のゆらぎ。そして視点の一つとして、多様性を問うたと言えるでしょうか?そこまでが私の言えるすべてです。
ラストは開け放たれた窓の下に賑やかに通り過ぎるシスターたちを見下ろす主人公のカットで終わり、このコンクラーベのあといったいどうなったのか?は観た人に投げられています。
後日談の予想を、いつか誰かと語りたいものです。