1/12(日)11時公演、娘と。

友の会の当選

二列目の下手寄りながらセンターブロック、

なかなか当たることのない前方席。

前回初見はお友だちに誘っていただきそれも最前列、今回は自分の当選で二列目と、運を使い果たす勢いです。


1/9に初見は、夫の叔母の葬儀が重なりやむなく中座しましたので、今日はリベンジ。最後まで見届けます。


ピクチャーチケット、雪組なのに緑じゃない。別箱だと紫一択なのでしょうか?



ダイヤグリーン総括、あっぱれな仕込み

二回目にしてやっと最後まで見終わって、考えるところのあるよくできた作品だったなーと思いました。

なんともおもしろい題材を見つけてきましたね〜

『フォルモサ誌』を著した実在の人物を主人公としながら、架空の人物など創作の部分を織り混ぜ、主人公の「自分は何者か」という問いかけを軸に、周囲の人々の狂騒やとまどいを装飾としながら最後の回収に向かっていく。

セリフの中には、見た人の心に響く言葉がいくつもちりばめられていましたし、私ならたとえば「何かを求めなければ何ものにもなれない」とか「ものごとには退き時がある」など、現実の人生のなかで何度も問い直してきたような問答に頷きながら見ていました。

蒼波黎也と華世京のやりとりの巻き戻りから始まるあらすじに破綻もなくて、次の作品にも期待できそうです。

私が中座して初見で見られなかった部分は、フィナーレを除いては縣サルマナザールと音彩シェリルとの会話で、サルマナザールのフォルモサ人詐称発覚と(偽装)自殺騒ぎの後で、今後彼がどこに向かうか何をするかが描かれていました。

「ゴーストライターとなって、コーヒーハウスの友達で(文才のない)作家のレミュエルの代わりに本を書こうとしてる」というのがそれで、ゴーストライターという職業?も堂々と表に顔を出せるものではないし、結局自分の作品を他人の名前で世に出すわけで、それが成功すればするほど、後々また「自分とはなんなのか?」と悩んだりしないのかが心配ですが、友達の代わりだからいいのかしら?自分の名前で出版した本なんて誰も買わないと割り切っていたみたいだし、今のところはいったんそれで大団円ということなのでしょう。

サルマナザールの書いているという作品の内容をちょっと聞くと、(それってスウィフトの『ガリヴァー旅行記』だよね?)と思われるもので、そう言えば『ガリヴァー旅行記』は一人称で語られ、その主人公の名前は(職業は医師ですが)レミュエル•ガリヴァー。感心するほどよくできた落ちですね〜。

『ガリヴァー旅行記』って後年知られているような児童文学ではなく、元々は風刺作品だったので、政権からの迫害を恐れて偽名で出版された経緯があり、それを逆手にとった形なんでしょう。ただそうなると実在のサルマナザールが『ガリヴァー旅行記』を著したことになり整合性がとれなくなりますが、この芝居もまた創作ですからそのあたりは見る方でも織り込み済みということで幕引き。破綻のない嘘(ここでは創作と同義)を重ねることのなんと難しいことか!(※ちなみに強調しておきますが、非難では決してありません。嘘と創作は分けて考えています。)サルマナザールも創作として『フォルモサ』を著したなら、文学者として世に名を残せたかもしれなかった。当時の政権争いに群がるイネスはじめペテン師に利用されたこともあり、思うに本人が自分の作り出した世界に没入していたりもあったのかもしれませんね。

ハレーに言わせていたように、「勉強家で色々なことをよく学んでいて、偽物の中に真実もうまく織り混ぜているから誰も気がつかない。」ってやつを地で行くかんじ?レミュエルという名前の売れない作家を配したのも仕掛けでしょうね。熊倉飛鳥氏は、自分とサルマナザールを著作家として重ねている部分もあるのかな?と思ったりしました。



ダイヤグリーン空想家とペテン師を分けるもの

サルマナザールは実在の人物で遺した著作などもありますが、概ね「詐欺師」という評価で後世尊敬されるような業績はないようです。頭が良く勤勉家で、弁も立ち魅力的な人物だったらしいのですが、人の役に立つ事を考えて動くことはなかったのではないでしょうか。自分の作り出す緻密な空想に酔うことが快楽で、その空想世界に執着するだけで、結果的として詐欺をはたらくことになったとは言え、彼自身はそれで人を騙して金を得ようとは考えてはいなかったのかもしれないと思います。そこがウィリアム•イネス(華世京)とは違うところで、『熊倉フォルモサ』ではイネスは人を騙そうとしているペテン師、サルマナザールは邪気のない空想家としてとらえられているようなので、縣サルマナザールは本来の自分自身を取り戻して好きな著述を著すことだけに満足して、明るい未来を生きてくれていたらいいなーと思います。



ダイヤグリーン演者について(センター以外)

このカンパニーでは、最上級生があすくん(94期)となるのですねぇ。ヒロインの父親で闘病中の地理学者。ロイヤル・ソサエティに勤めていた科学をなりわいとする学究のひと。自分とは何か、人生とは何か、世界とは何かを病床で見つめ続けて真実を見抜く目を持つ、いわばペテン師の天敵です。死が近いせいか、サルマナザールの才能や努力を惜しむせいか、生来の探究心のせいか、おそらくサルマナザールを「哀れな若者」ととらえていて、深い慈愛の心をもって接しているのがまなざしから感じられます。穏やかで物静かなのに他を圧倒する説得力を持つ人物を、化粧も衣装の力添えもほとんどない自然体で演じていて、本当に組の屋台骨になったんだな〜としみじみ。

天月さんは雪組に(せおっちを含み)五人いる95期の一人。この学年で半数残ってるのは驚異的。年配男性を演じたらピカイチ。『蒼穹の昴』でも度肝を抜かれましたが、今回の老獪な司教役もなかなか。片や大羽根を背負う同期がいる一方、真逆の立ち位置をしっかり守る組の大切な一翼。彼女に太刀打ちできそうなのは組長のにわさんくらい?

咲城くんは星組からの組替ですが、どうもはまりどころがなかった感じだったと思います。美人であるがために印象の薄いタイプ。番手なりに出演場面を当てられるものの差別化が難しいと思っていましたが、伝説の革命家?として亡霊のような白塗り化粧が似合っていて、これはもしや日本物がいけるのでは?と雪組だけに期待できそうな気がしてきました。

叶ゆうりくん(97期)、曲者を演じさせたら天下一品(←褒めてます)。今回も酷薄で狡猾そうな権力者を華麗にこなしていましたね〜。私にとってはかなり下級生の頃から認識できていた一人。雪組では珍しい高身長でしたが組替で宙組に。宙組だと背丈は標準かもw

眞ノ宮るいくん(100期)。最近大劇場では出番が減って寂しく思っていましたが、別箱ではさすがの貫禄。華世京の出身学校の先輩ですが、学年も離れすぎて学校時代はおそらく接点もなく、華世京入団時は長の期とかなりの上級生だったはずが今や番手逆転。抜く方も抜かれる方も厳しいものです。イネス華世京を蛇笏の如く嫌う司祭ダマルフィ役、見ているこちらは複雑な気持ちですが、淡々と役目をこなす上級生に脱帽しかない。

風雅奏くんは104期。同期組トップの蒼波黎也くんと扱いに水をあけられた感じでしたが、今回レミュエルという目立つ役を振られてめっちゃ張り切って演じていますね〜。お腹に詰めものをして太っちょの、文才はないが気のいい作家を実に楽しそうに演じています。こんなにたくさんのセリフと出番は新人公演以外では初だと思うのですが、いろんな経験を積んでいたのですね。たまたまちょっとしたご縁があって顔を見知って注目していましたので、とても嬉しい活躍でした。

個人的に箱推ししている107期。風立にきくん、瞳月りくくん、瑞季せれなさんもしっかりチェック。別箱で特定できると大劇場でも探しやすくなるので、下級生にとってはだいじな機会。派手な話題作ではありませんが、こちらの振り分け組もいい作品と出会えて良かったです。


ダイヤグリーン余談 ビフォーアフター

日本大通り駅を出て初めての交差点で信号待ちをしていると、「あの、KAAT神奈川芸術劇場へ行かれますか?」と女性から声をかけられました。娘と顔を見合わせて「はい」と答えると、「あーよかった!今日大阪から来たんですが乗り継ぎを間違えて遅くなっちゃって。ついていっていいですか?」とのこと。「もちろん、ご一緒しましょう。数分ですからすぐ着きますよ」などと話しながら劇場へ。「どうしてKAATに行くってバレました?」と尋ねると「なんとなく雰囲気で」との答え笑ヅカグッズ何一つ持ってないんですがなぜ?縣のファンで、梅芸でも観たがKAATでも。会チケをキャンセル待ちしてなんとかマチソワしたいとのことでした。観られたかな〜?


終演後は娘とあれこれ感想を話しながら徒歩で数分の中華街へ。翔記という店で刀削麺セットを注文。ハーフ刀削麺(ばら肉煮込み)とハーフ炒飯、ハーフ刀削麺(叉焼)と点心(今日は餃子4個)という組み合わせで各1210円。

娘とシェアしてどちらも味見。



全然ハーフという量でなく、普通に一人前くらいあったような…笑笑

刀削麺大好きハート

アフターまで大満足の観劇でした。