11/29(金)1630
KAAT神奈川芸術劇場
月城かなと退団後初コンサート『de ja Vu』に行ってきました。娘と。
10列目下手。
開演前と終演後は写真撮影ができて、席からの眺めはこんな感じ。
10列目は通路のすぐ後ろで、見通しが良く、オペラも不要な良席でした。ぴあで購入しましたが、一部貸切だったようで「ぴあ貸切」の旗も。
まずは全体の総括
男役の退団後初のコンサートって、誰によらずドキドキですよね。
最近は退団後まずはコンサートというのが定番となっていて、喪失感を埋めてくれるのはありがたいのですが、どんな方向にいくのかある程度示される感じもしますし、どんなスタイル(主にスカート問題笑)で登場するのかも気にかかるところ。
梅芸からのKAATでしたので、情報が少しは入ってきてはいましたがやはり実見してみないとね。
そして11/29のソワレを拝見して率直な感想というのは、一つにはすごく安心しました。もう一つにはこれからもコンサートをやってほしいし、次もあれば行ってみたいし、できたら本人の歌だけを聞かせるビルボードライブもやってくれたらいいなーと。チケットがとれるかどうかはまた別の問題ですが(笑)
ではコンサートのなかみについて
この解禁の発表が衝撃でした。

こんなほぼ口元しか見えないビジュアルで、こんなシンプルな衣装で、思わずヒュッと息をのむほど美しかった!
もうすぐに「行く!」と決めてました。笑笑『de ja Vu』というタイトルや構成演出は、本人が演出の港ゆりかさんと話し合って決めたのでしょうが、コンサートの始まりに文字の映像とともに繰り返しコールされ、全体のイメージを想起。
そしてご本人の登場となりますが、え?その歌は…『ムーライト伝説』 幕開けがまさかのセーラームーンかい!思い起こせば『Rain on Neptune』でも歌ってましたね〜。セーラームーン大好きだったそうで、卒業後の自身の解禁にこの歌を選ぶほど、きっと彼女の一部なのですね。ただアレンジはジャズっぽくて、とてもシャレたものでした。
衣装は、ちょっと『Death takes a holiday』のサーキを思わせるような黒マントをはおり、一瞬にして舞台が蘇りました。
「みなさん、ようやく会えましたね!みなさんにお会いできて私もとってもうれしいです!」
という生声に歓声があがります
2-3曲ごとにMCが入る感じで進み、今年のはじめにニューヨークを訪れたときの自分が撮った写真をスライドで見せ、セントラルパークのリスの写真を嬉しそうに紹介。いくつもミュージカルを観てなかでも一番心に残ったのが『Hades town』。ギリシャ神話から素材をとったミュージカルのようです。この歌に限らず、全体に英語の歌も多かった。生い立ちのことは詳しくは知りませんが、帰国子女とかハーフとかでないかぎり英語の歌って難しいのでしょうね〜。努力されたのだと感じました。
次に宝塚時代の歌が続き、客席はいっきに世界に引きこまれます。『Eternal voice』『アウトローブルース(ギャツビー)』男役時代そのままの歌い方ではなかったようですが、さほど大きな変化ではなく思い出すよすがとしては充分過ぎました。
衣装替えをして『隅田川音頭(川霧の橋)』で、ダンサーの皆さんが外から客席に入ってきて客席を盛り上げます。月組トップのときは和物はこれだけだったと思いましたが、こういうお祭り気分の曲も大きな箱のコンサートではいいスパイスですね。れいこさんも下手階段から降り、9-10列目の間の通路を通り、上手階段から戻るという客席降りで、ハイタッチこそできませんでしたが、ごく近くでそこそこ長い時間歌ってくれて、感激!宝塚時代にもこんなに近くでれいこさんを見たことはなかったと思います。
シャンパングラスを模したペンライトで客席と乾杯を交わし、持ってない方はピースサインでというあたたかい心遣いも。
事前に募集したという質問に答えるコーナーもありました。どうやら毎日別の質問が3つ選ばれ、一つめはダンサーのみなさんの助言も入れながらマジメに?答え、残りの2つは「なりきり」で答えてくださいというもので、今日は二問目は保育士に、三問目は青色の猫型ロボットになりきって答えるように振られていました。(イメージでは)こういうこと苦手そうですが、振り切って答えていたのはさすがです。照れくさそうにするれいこさんも、いつも通りな感じがしました。
順番が前後するかもしれませんが、この日はゲストコーナーがあり、バイオリニストの川井郁子さんが登場。56歳とのことですが、背も高く、スタイルも良く、ネットでちょっと見ると女優活動もしていたらしい華やかな美人です。楽器が高そうと思って見ていたところ、ストラディバリウスのようで…
梅芸のゲストもジャズギタリストだったとかで、れいこさんとどういう接点があった方々なのか分かりませんが、楽器のソリストをゲストに迎えるあたり、こだわりを感じますね。
曲はれいこさんとのセッションで『Death takes a holiday』から『人として生きて』(曲名不確かです)、『愛の讃歌』、最後にソロ演奏で『リベルタンゴ』の三曲でしたが、アンプの調子なのか?バイオリンの音色と人の声がうまく合ってないように感じられて、ここは私としてはちょっとだけ残念でした。『リベルタンゴ』は感情が乗った演奏ですばらしかった!
三度めの衣装替えをして紫色のパンツスーツに同系色のコートをはおって登場。あいかわらずコート姿がステキです
『padam padam』というエディット・ピアフのシャンソンは、ダンサーたちが舞台上に一人一枚ずつドアを持って現れ、見え隠れしながら動いてちょっとした芝居を観ているような感じがしました。ドアの裏は鏡仕立てだったような?
どの部分に入っていたか忘れましたが、『見上げてごらん夜の星を』を、舞台の下手の一段高い所に置いてあるテーブルと椅子のセットを使って、そこに座ってしっとりと歌い上げたり、場面転換に『RAIN』(SEKAINOOWARI)が流れたり、(タイトルに反対するわけでは決してありませんが)デジャヴ(=既視感)というよりは、私には回顧、追憶に近かったかなという気がします。
緩急織り交ぜた曲構成のなかで、ラスト近くに英語で歌った『This is me』(グレイテスト・ショーマン)はほんとうに圧巻でした。宝塚時代に(特に後半)は踊らないれいこさんという印象でしたが、イヤ待て踊ってるじゃん、とむしろその新鮮さに驚くほどで。
ここの場面ではありませんが、男性キャストに肩より高くリフトされるれいこさんも実に新鮮。
そしてラストは『Hello to the world』(家入レオ)
チェッカーズかのような色とりどりのチェックの衣装を着た出演者たちが歌って踊って楽しくフィナーレ。ここでは全員が公演グッズのTシャツを内側に着ていました。個人的な感想ではありますが、Tシャツだけのフィナーレだと突然裏方感(良き別面からは親近感)が出るような気がしていて…今回は最後までショーアップ、華やかで好きでした。
休憩無しで95分のはずが、終わってみると105分。
あっという間でした。
衣装に見る変化と、これから
もちろん第一に本人の希望もあったかと思いますが、ドレスを着るなども選択肢にあったかもしれません。佳人にドレス、、、もちろん似合わないわけはないと思いますが、急激な変化を避けたか、あるいは個人的な嗜好か、ずっとパンツ姿で、マントやコートも垂涎ものでした。ただヒールが細かったり、袖の部分がシアー素材だったり、首の後ろにリボンを垂らして結んでいたり、フリルたっぷりの(まぁしかしこれは、男役の衣装にもありますね)ものだったり、とそこかしこに女性らしいディティールが盛り込まれ、少しずつ変わっていく彼女を、ファンもおそらくは自分も納得して受け入れられるようになっていたかと思います。
はじめに「安心した」と書きましたが、彼女はほんとうに安定した穏やかなかたに見えますし、その上に着実な努力が積み重ねられたことが見てとれ、下級生の頃、雪組時代にはともすれば地味と思われたその雰囲気が、次第に洗練され緻密な美しい職人技とでも言うべき確固たる持ち味となったのだなーと。
生い立ちを詳しくは知らないと言いましたが、『おとめ』に載ってる情報によれば田園調布学園高等部の出身とのことで、実は娘の中学受験のとき、近所だからという理由で一度学校見学にうかがったことがあります。地味で堅実というイメージを持ちました。(塾の評価もそんな感じでした)
建学精神は『捨我精進』で、校舎のなかに「精進の鐘」を設置して、この鐘が鳴らされるときは手を組み目を閉じて黙想するのだと説明を受け、明確に宗教を掲げているわけではない?ものの、似たような拠り所を持って学校生活や今後の人生というものを考えてほしいと願っているのかも、と感じたことを思い出します。ローティーンの頃の環境は侮り難いので、推察に過ぎませんが学校の影響というのも礎の一つとなっているのかもしれないですね。
緻密な職人技を武器の一つに、これからどんな航路に漕ぎ出すのか?ストレートプレイも観たい、ミュージカルもいい、音楽活動も楽しみな、広がる可能性を実感できました。
明日は早くも大千秋楽。きっともう次のステージへと動き出しているに違いありませんね!
また会える日を楽しみに待っています。