生観劇の話ではありません。

タカラヅカスカイステージで『アンコールアワー』という枠があるのをご存知かと思います。

月に二回ほど4時間くらい、番組表に具体的な作品が載っていない枠があり、何を放映するか後日予告されるのですが、視聴者からのリクエストを求めているようで、番組表に応募用のQRコードがのっています。


その9/25の枠で『名作の館』という番組が放映されました。朗読と、過去の映像をミックスした作品の紹介で朗読は花帆杏奈さん(かほあんな85期雪組)。彼女は2012年に退団していますので、この番組自体それよりは前の制作です。紹介されていたのは『BLUFF−復讐のシナリオ』(1990年月組バウ、久世星佳主演)。
映像は残念ながら劣化が著しいというか、非常に粗いもので、クリアな映像に慣れている現在からみると見るに堪えないコンディションでしたが、約一時間引き込まれて見てしまいました。もちろん直近の風間BLUFFの記憶が生々しかったせいもあり、(私にとっては)意外なことに、朗読がとても沁みたこともあります。ジャンルとして朗読劇というものがあり、卒業後のジェンヌさんが出演する情報に接することもありますが、全く食指が動かず、自分は朗読には興味がないものと思ってきましたのでまったくもって意外でした。編集もうまかったのかしら?

はじめて知った花帆杏奈さん。落ち着いた雰囲気の方で、路線というよりは幹部向きのように見えました。卒業後メンタルトレーナーとしてご活躍のようですので、あながち印象からはずれているわけではないのかな…
久世星佳(69期)の初バウ主演として上演された作品。この初演で目を引かれたのがシャロン役の麻乃佳世さん(74期)と、アイリーン役の蘭玲花(70期)さん。麻乃佳世さんはトップ娘役になったので名前は知っていましたが、ほぼ初見。お二人とも歌が上手く、可憐な娘役さんですね〜。それに30年以上も前なのに古くささを感じないのが不思議なほど。昔の映像を見ると、今と比べて娘役より男役のほうが変化が大きいと感じます。化粧法や衣装が、(古い)と明らかに感じるのは男役のほうに多い。虚構の存在を作っている分、時代につれて練度が上がっているのかも?

閑話休題。
わざわざブログに書き留めておこうと思ったのは、作品の主題歌(だと思います)の歌詞。

のがれられない思いをひとつ
胸深く抱きしめ
きのうの涙
あすのほほえみ
ドラマはいつも背中合わせ
put your life on the line(=体を張る)
もっとヘビーに
put your life on the line  
賭けてみないか
一度きりの人生をゆだねるシナリオは
ロングバージョン

風間BLUFFを観たとき、最後のリフレイン「ロングバージョン〜ルンルン」がやけに耳に残って、全部の歌詞を知りたいと思っていました。

「思い出に残る昭和の名曲」(←イメージね)とかいう番組があると、選曲の理由に皆さんが挙げるのが「歌詞が自分の心情と重なって」とか、「気持ちをストレートに表現しているのが心に響いて」とか言うかたが多く、楽曲における歌詞は重要な要素なんだと思います。
翻ってこの曲の歌詞を聞き取って文字に起こしてみると、どちらかと言うとイメージ先行。もちろん非日常なドラマの主題歌なので、日々の生活の中で生まれる感情とは異なるのは当然です。むしろ私のように、(なにがロングバージョンだって?)と印象が謎に残るほうが余韻があっていい。難しい言葉でなく、印象強い言葉を選んで散りばめた感じかな。
それよりこの曲の優れたところは、全体がキャッチーなメロディーだということなんでは?なにしろ一回実見しただけなのに歌える!加えて、どんな歌詞なのか知りたいという欲求も湧き上がり、中毒性がある。(←ほめてます)あいかわらずパンフレット買わないので、どなたの作詞作曲かはわかりませんが、たぶん作品同様正塚先生なのかな。

舞台で使われる音楽って生の舞台と同様消え物で、宝塚歌劇のように100年を超えて存在し続ける組織でも、昔は特に、記録されず一回きりで消えていった音楽も多いと思います。録音録画技術も今とは雲泥の差だったでしょうし、戦争や災害もありましたしね…
作品がヒットしたりすればいろいろな機会に演奏されるものもありますが、多くは一回きり。
また現在のように分業化の進んだ社会では、作曲だけを高名な作曲家に外注したりしますが、過去には芝居をつくる人が全てを担い、質も玉石混淆で使い捨てとなったものもあるでしょう。
蘇った作品のなかに生きる楽曲に出会えた偶然と幸運がうれしいです。宝塚歌劇のアーカイブは宝の宝庫だと思いますので、まだどんな作品が眠っているのかワクワクしますね。

つけたし:メルカリで風間BLUFFのパンフレットを求めてしまいましたてへぺろ
便利な世の中です。(^^)v