9/16(月祝)14時、明治座にて。
S席二階3列目センターブロック、妹と。
劇団☆新感線の『バサラオ』を観劇。
座席は千鳥配置でないので、センターブロックでも真正面は見えにくという状況でした。

正直なところ情報量が多すぎて、どうまとめていいやら一晩時間をおいてみたといった観劇後です。
観てないかたに伝えるのは難しく、観たかたにとっては刺さる部分がおのおの異なりそうで…
出演者の要素は大きいと思います。
ゲスト主演の生田斗真、中村倫也、西野七瀬のそれぞれのファンの立場、あるいは劇団☆新感線ファンの立場によって受け取るものは当然違います。
私個人は、誰のファンでもなく、なんなら(楽しみにはしていたものの)劇団☆新感線ファンですらないので、色眼鏡なく見たつもりです。
私の気になったキーワードは以下6つ。
【 ①エンターテイメント 】
思うに劇団☆新感線の立ち位置そのものなので、テーマがなんであってもお客さんが楽しんでもらえるようにという芯を感じます。ホームページによれば、コロナ禍以来なるべく明るい作品をと心がけてきたらしいのですが、本作でその心理的制限をはずしたとのこと。
描きたいものを描くのは作り手としては幸せだろうなーと思います。そしてその作り手の幸せが客席に伝わってきていました。
【 ②ピカレスク(悪漢、ごろつき) 】
そして、前を受けてピカレスクロマンとなるわけなんですが、下層階級の出身者が一人称で生涯を語る小説のジャンル(小悪党の一代記)をベースに書かれており、全員が悪者。サイコパスらしき登場人物もいて、裏切りあり、エグい策略あり、非人道的な仕込みありで、いったい誰が味方で誰が敵なのか、最後の最後までわからない手に汗握る展開にドキドキ。30分の幕間を含んで3時間35分ですが、飽きさせない芝居はこびでした。
【 ③派手な演出 】
舞台はヒノモトという架空の国の設定で、京都に帝(ミカド)、鎌倉に武家の頭領がいて公家と武家で対立しているという構図ですので、ふんわり鎌倉時代末期から南北朝を経て室町時代に至る頃の日本が彷彿とされる時代背景です。こういう歴史を絡めて作るのは座付き脚本家の中島かずき氏の特徴で、私たちの頭の中にある、正確ではないにしろなんとなく知っている日本史の流れをなぞることで、イメージが膨らみますよね。
劇団☆新感線の衣装は派手なことで知られ、今作の製作はアトリエ88%。妹は衣装がどうもあまりかっこよく思えなかったとポロッと言っていましたが、突飛な衣装は宝塚のショー作品で見慣れているせいか?色味もデザインも私には特に拒否反応はなかったです。時代考証も何も関係なく、とにかく色彩が鮮やかな(しかし動きにくくない)衣装だったし、何役もやるアンサンブルのかたがたの差別化も容易でよかったと思います。
音楽はドラマチックで音量も大きく、ミュージカルではないけれど各キャストの歌唱もあったり、生田、中村のダンスも見ごたえがありました。
もちろん迫力のある殺陣やアクションシーンも息をのむもので、二階でしたのでさすがに振動までは伝わりませんでしたが、スピード感や跳躍の距離、高さはさすが!
二幕では観客を巻き込んでの手拍子と、グッズとして販売している扇子を使っての煽りも楽しいものでしたが、扇子の保有率はそう高くなかったようでしたね。
【 ④蘭陵王 】
生田斗真演ずるヒュウガが、自分の顔を隠すのに使う仮面を〝蘭陵王の仮面〟と称していますが、これ、わかっている人多くはないのではないかと思って見てました。
私は宝塚で2018年の冬に花組の別箱として上演されたことで、蘭陵王を知りましたが、それ以前2013年には中国のテレビドラマがあるそうで、作品としてはその二つくらい。中国史によほど詳しい人か、中国人(と言っても中国での認知度がどの程度かはわかりません)でないと、(なんの仮面だって?)となってるかと。中国古代の武将で、美しい顔を隠すために戦いの時には仮面を付けていたと言われていることから、美貌を武器にするヒュウガのイメージと重ねたのかな〜と。
そして自慢の顔を使って天下をとる野望に邁進することになるヒュウガ(生田斗真)なんですが、そこまでの美貌か?ということに絶えず引っかかりまして…スミマセン(-_-;)そもそも名前だけは知っていたものの、俳優としての活躍は全く認識しておらず、今回舞台で見るのが初見くらいのうす〜い認知度ですが、鼻が高く、彫りの深いハーフっぽい顔立ちで、目立つことはたしかです。目を強調した化粧のせいか?狂気に満ちた凄みのある顔にはなっていますが、見惚れるほど美しいかと言われるとちょっともちろん芝居のそこここで自分のことを「美しい」と言うこと自体が、少しばかり笑いを取るような流れにはなっているのと、なにしろ天下取りの動機なので「美貌の」という形容詞は重要なキーワードではあるのですが…
ごめんなさい、個人的な好みということでご容赦ください。
【 ⑤客席降り 】
天井から吊られてド派手に降りてきたのは登場の一回だけですが、芝居の最中かなり何回も一階の客席通路を後方扉に向かってはけます。アンサンブルの方だけでなく、センター付近の方も走ります。舞台を降りないまでも、階段に片足をかけて客席を睥睨する場面も複数回あり、こりゃ〜、一階席のファンの方はたまらないでしょうねぇ
普通は座席の場所は選べないので、S席とはいっても一階か二階かは発券するまでわからないし、ファンにとっては天国との分かれ目となるかもですね。
【 ⑥バサラオ 】
私の認識違いでなければ、バサラオは「バサラの王」のことのようです。笑
そもそもバサラとはなんなのか?ということですが(いまさら?ww)、グーグル先生によれば「婆沙羅・婆佐羅などとも表記する。 南北朝内乱期にみられる顕著な風潮で、華美な服装で飾りたてた伊達(だて)な風体や、はでで勝手気ままな遠慮のない、常識はずれのふるまい、またはそのようすを表す」のだそうで、元々はサンスクリット語起源で金剛石(=ダイヤモンド)を指すのだそう。
なるほど、ヒュウガの言動は正にバサラを体現したものなのですね。
【そして、演者のかたがたについて】
粟根まことさんがコメントに寄せていますが、生田、中村、西野の三人はみなさん劇団☆新感線に出演したことがあり、ことに生田斗真さんは10代の頃から成長をみてきたそうで、お互いに信頼して舞台を作っているのですね。私はどなたも初見だったのですが、中村倫也さんに一番惹きつけられました。声も滑舌もよかったし、見たところそんなに派手な感じでもないのにいつも目に飛びこんできました。西野さんは顔が小さくてかわいくて目を引き、きっとアイドル出身の方だろうと思って見ていました。(やはり乃木坂のかたでした)
古田新太さんはもう存在感抜群で、出てくるだけで場を支配してしまいます。古田さんのコメントを読んで(へー?)と思ったのが、本番に入ったらアドリブはまずやらないということで。お客さんに受けて気持ちよくなっちゃって、どんどん増えて長くなってしまうのがイヤだ、上演時間は短いほどいいとのことで、どこまで本気なのかわかりませんが、演者として立つ限り演出を壊さないようにしているのだろうな〜と感じました。アドリブに見えているのも、稽古段階で入った台本通りなのでしょう。
古田さん、生田さん、中村さんは意外なことに劇団☆新感線の舞台では初共演だそうで、若手の方から切望されていたらしく、古田さん側はたぶん照れくさそうに手を振るだけでしょうが、後輩に慕われているのですね。
【最後に宝塚歌劇との違いについて】
もちろん劇団が違うのですからいろいろ違って当然ですが、宝塚歌劇と比べて際立つ違いとしてはエログロとキスシーンですかね。首をとったシーンはありましたが、むき出しの首を髪の毛を掴んで持つとかはあり得ない。宝塚では男役娘役とも女性どうしですが、キスは手で口元を隠して本当に口づけてはない。バサラオでは男性どうしでも、普通にキスしていましたね。リアリティの追求、仕事であれば…なんでもあり。秘密の花園と外の世界の違いを感じます。
非日常のピカレスク、爆発するエンターテイメントを味わえて、興奮した観劇でした。
また次の機会があれば観てみたいと思います。
とここまで書いたところで、次回星組公演が劇団☆新感線の『阿修羅城の瞳』という速報が!
フォローしている劇団☆新感線側のホームページにもさっそく速報が!
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