6/23(金)16時公演、一階14列センターブロック上手側。友の会での当選で、娘と。my楽です。
休演になったにも関わらず、二回観られて幸せ
上手寄りだったせいもあり、若干斜め前の方の頭が…
おたがいさまかもしれません。
お席はほんとに時の運。一階席は傾斜があまりないのでやむ無し。まぁ、セットが高さを使うし、そもそも盆の上でもあるので、視界はまぁ可かな、くらい。
さて私は、ここで誰かの応援ブログを書いているわけでも、組の提灯記事を書いているわけでもありませんが、今の月組を好きですし、れいこさんも観たいと思う演者の一人です。風間くんには一作ごとに驚かされることばかり、毎回楽しみにしています。
『デスホリ』は初見でとても楽しく拝見しましたが、今日まで毀誉褒貶さまざまな感想を見聞きしたこともあり、2回目ですので手放しの称賛とはすこしだけ違う目線を加えてみることに。
ただし、「ストーリー」についてのみです。
物語のコアは
『死神』が主人公である以上、死を無視することはできないところです。作中でも言われてましたが、人間は死ぬことを恐れるし、できるだけ生きていたいと思うもの。
彼と一緒に行くということは、イコール死を意味するということが大前提で、果たしてそれを敢えて幸せと思えるかどうか?この物語の真髄はそこにあると思われます。そして私たちが最後まで納得いかないとしたら、そこなのでは?
そもそもおとぎ話だからね
『死神』であることを隠して登場する彼は、「疲れていて」「人間の持つ感情についてわからないと不思議がる」「非常に好奇心の強い」キャラクターです。私たちのイメージする『死神』とは全く違う、いわば人間くさい人物。ロシアの王子様(富豪?)の体を借りたことで、お金と地位もあり、その上イケメン。これたぶん、ただの一般庶民でお顔も並みの器量だったら話は全然違う方向なんです(笑)。スタートから既におとぎ話なわけで。この設定をのみ込めない人にはここからあとの展開もなんとなくずっと腑に落ちないんじゃないのかなー?ファンタジー脳とでもいいますかね。
まぁこういう設定なんですから、そこはのみ込まないときついです。
もし正体を知っていたら
ヒロインがはじめからサーキの正体を知っていたらどうだったでしょう?
サーキが死神と知る人物が複数いましたよね。まず、死神から訪問を告げられていた父親、その様子を立ち聞きしてしまった執事、なぜかわかっていたエバンジェリーナ、そして死神本人。父親は家族の安全のために、執事は雇い主の命令で、エバンジェリーナは自分を連れに来たという勘違いから、死神サーキは自分のエゴから、ヒロインに真実を告げることはなかった。これ、誰か一人でも出会ったすぐにヒロインに伝えていたら、物語は違う展開をたどったに違いありませんが、それだと死神とヒロインのラブストーリーはたぶん成立しませんし、ヤボは言いっこなし、ということで。
世界設定の曖昧さがもやるのか
ファンタジー小説に免疫ありますか?
異世界ファンタジー流行りですが、いわば玉石混淆で、それこそご都合主義の作品も。優れたファンタジーはその設定が極めて精密に作られています。それこそその世界の言語、歴史、文化、産業、階級制度、宗教、どこからどう叩いてもボロの出ない緻密な積み上げが成されていて、作者の頭の中はどういう構造になっているのか?感心するばかりのこまかい設定のものもあります。
この作品に足りないのはそのこまかい作り込みで、なんとなく今までにあったファンタジー世界に寄りかかる形でふんわり書かれているように思います。だから観る人の知識や、経験に頼る部分が多く、評価が一定しないのではないか?というのが私見です。
たとえば、死神がどういう組織のなかの、どういう立場の人物なのか?彼自身、「自分で決められるわけではない、命令に従っているだけだ」と苦しそうに言うところがあります。そもそも休暇をとるなんてことが勝手にできる時点で、組織的には体を成していません。死神の上にはもっと権限のある上司的な人物がいるようですが、そんな勝手を許していいのか?彼の行動は世襲の自営業者の行動ですよね。それをなんとなくまぁまぁなぁなぁにして、自分の勝手もある程度は可能だけれど、最終的に決定権は本人にはない、というようなそれこそご都合主義にしているせいで、物語のコアが響いてきにくいのでは、と。
まぁ、とは言ってもですよ
たかがファンタジーを扱うエンタメにそこまでメクジラ立てることはない、と言えばごもっともで、私もそっち側の意見です。
演者の演技や歌唱を楽しめて、主人公とヒロインが幸せならそれで良し、と思えればオールOK。
そういう見方で大きなまちがいはないと思っています。
ただなにか違和感を感じる人がいるなら、その設定のあまさに起因するのかなーと。
私の願いをひとつだけ言えば、グラツィアが死神と一緒に去ったあと、その両親に忘却の魔法でもかけてもらえていたらいいなぁ、ということで。
語られてはいませんが、まさしくファンタジーならではのアンハッピーでない結末を夢見させてください。
おまけ1:演者のことも少しだけ
死神の心の揺れ、初めて知る人間の気持ち、自分がなぜ怖れられるのかに気づいた哀しみ。れいこさん実に繊細な芝居で心を打たれました。前半の、人間を演じるのを楽しむようなコミカルな感じはとても可愛らしくて、後半との落差がすごかったです。
うみちゃんは思いこんだら一直線。どこかで見たような気がすると思ったら、『グレートギャツビー』のヒロイン、デイジーみたいに恋の熱に浮かされる役でしたね。母親役が同じくさちかさんだったので、母の娘を思う気持ちがとどかないのが今回もじれったかったです。さちかさん、母親ってほんと切ないわよね。
助演賞をあげたいのが佳城くん。目の下にクマをつくって、頬もこけた感じのメイクに。物陰に張りついて様子をうかがっていたり、プンプン怒ってみたり、セリフがないときも挙動不審な立ち振舞いでたくさん笑わせてもらいました。
おまけ2:楽曲のことは
楽曲については、あらすじとはまた違う次元のはなしで、ここでなにか言うほどの見識はありません。
バラードが多く単調で眠気をもよおしたという感想も拝見しましたが、その方には残念でしたというしかありません。
アップテンポの掛け合いも、大勢口のコーラスも、心を絞り出すような慟哭の歌も、もちろんバラードも、バラエティに富んだ、しかもけっこう難しい楽曲だったと、私は感じましたし、それぞれの演者の力量も申し分なくて、十二分に楽しめました。
あと数回ほどの上演となりました。
どうかぶじに千秋楽を迎えられますように。
ライブ配信はあるらしいので、円盤となるのか、後に放送はあるのか、期待して待ちたいです。