5/19(金)、三階A席最前列センターブロック、友の会で娘が当選。

前楽でした。本当に熟れた状態の芝居をみることができました。


まぁしかし、竣工したとたんに見辛さで首都圏のワーストワンに名乗り出たブリリアホールですので、本日も目の前はこんな感じで手すりがかなり邪魔でして…

乗り出せば見えるのですが、それは後ろのかたに迷惑ですからね~

でも舞台のツラに出ての芝居もそんなにはなくて、奥の方はよく見えましたのでまぁまぁと言えるかと。


セリフと影だけの邂逅シーンから始まり、いきなり軍事法廷裁判の証言となるのですが、これまで拝見していたブログではこの展開で「わかりやすかった」という評が多かったと思っていましたので、一幕終わったところで娘が、「わけがわかんなくて辛くなってきた」と言うので (おや?) と。まぁたしかに、シンクレア(れいちゃん)がクエィド(航琉)を撃ったところから始まった方がよりわかりやすかったかもね、と思わないでもなく。


 まず出演者

出演者のうちれいちゃんやひとこのことは、いろいろ取り上げられていますので、せっかく前楽でしたから、他の出演者についてもふれようと思います。


高翔さん、りんきらの専科さんはほんとうに素晴らしい存在感。

右差し高翔さんはめずらしく?悪者曲者枠でなくて、熱意にあふれ頭が切れ人望のある役でしたし、お化粧でもかなり化けるかたなので、初登場のときは(え?だれ?)とガン見してしまいました。革命側のリーダーとして、さすがの重石のきいた存在感をみせつけていましたねー。

右差しりんきらは軍部のお偉いさんでありながら、上の言うとおりに動くことなく、自分の信念に従って考えて行動する頭のいい役で、おどけた言動のなかに芯の通ったところを秘め、部下のクエィドに対しては締めるところはきっちり締め、高翔さん演ずるシュトロゼックの好敵手として最後まで信念を貫くところはじ~んとしました。


右差しビックは古参の下士官で、町の女性といい仲になって軍規をはずれていく役。古参の下士官というのは意地が悪いのが通り相場ですが、ビックは自分が規則違反をしているのをわきまえていて、司令官のりんきらと上官のれいちゃん寄りの立ち位置で、なにかとれいちゃんの味方になってくれる頼もしい役を好演。恋人エレンの朝葉ことのちゃんとのデュエソンも聞き応えがあり、すごい安心感でした。

右差し舞月なぎささん、ノヴァロ(あかさん)の元上官として証言台に立っていたかと思うと、一幕最後の“幻想の男”のなかのリーダー的な役として弓矢を射たり、二幕幕開けでは兵士の訓練をする下士官の役で指揮をとったりと、何役もやっていたので、(ゆえあって)顔と声がよくわかるだけに何か繋がりがあるのか?と、ちょっと混乱してしまいました。彼女の澄んだ歌声がとても好きなので、歌があるとよかったなー。

右差しらいとくん。出番は多くなかったですが、なりも派手ですし、背も高いのでまぁ目立つこと。陽の雰囲気をまとったまぁくんタイプのキラキラ王子様が本領かと思ってましたが、あら、こういう荒くれ者もいけるのね!

右差しお帰りなさいのあかさん、今回は別箱からの出演でちょっと控えめな役どころでしたかね。斜にかまえた下っぱの兵隊で、セリフはあったし、ポテンシャルで魅せましたけど、、、うーん、モブに近かったのでは?と思われ、今後の立ち位置が気になります。同期のひとこのために呼び戻したのでは?と思われますので、本好演での配役に期待。

右差し峰果とわくん。検察の通し役で、いつも下手の高い証言台に立って裁判の進行の様子を明確に伝える責を負います。動きが全くないので、口跡だけで表現しなければならず、なかなかの難役と思われましたが、実にわかりやすく話しを導いてくれたと思います。

右差し高峰潤くん。「哀しみのコルドバ」でアルバロ役を演じて、私のなかでめっちゃ注目株の99期。(←アルバロは雪組では翔ちゃん、花組ではまっつーが演じた出世役だったので。)最後のシーンでれいちゃんにインタビューする作家の役で登板。れいちゃんとガッツリお芝居をするのはたぶん初では?これからも露出の機会を見守りたいです。

それにしてもれいちゃんの老けぶりに比べて、ひとこ変わらなすぎん?あれから15年と言ってるから、士官学校卒業の年を23歳くらいとして38、負傷兵で幽閉状態とは言いながら40歳前でくたびれ過ぎよ(笑) いやもちろん、ナイスミドルでしたけどね。


 そしてお話し。

背景は戦争でしたが、がっつりのラブストーリーでしたね。音楽も流れてないなか繊細な芝居で、二幕では周囲からのすすり泣きがすごかったです。

私は一幕の、飾らない素朴な村娘ふうのまどかちゃんが好ましかったです。返事が「うん」と言うのが、いささか違和感がありましたが (笑)。娘役さんてだいたい「ええ」と相づちをうちますもんね。遊牧民の末裔であまり教養はない若者の日常会話を、日本語で表すとこんなかんじということ?


重苦しいばかりでなく時々クスッと笑えたのもよかった。酒場でのケンカのシーンからの、ひとこが誤って女の子に皿?で頭を殴られてしまうのには笑えましたし、深刻なやりとりの時以外の、りんきらがいちいちおもしろかった。なんかお約束らしい?れいちゃんのシャレも披露されてました。


一方背景の戦争については、単一民族の日本人の私にとっては、やはりどんなに聞いても民族主義って理解が及ばないところがある。

ベルリンの壁崩壊から始まる東側の世界のソ連からの離脱や、新しい国の独立などリアルタイムで見てきたので、詳しくは知らないまでもあの頃の世界情勢を自分の人生に重ねて思い出したりして感慨深い。と同時に、今まさに領土や独立を守ろうとしているウクライナをめぐる戦争もあり、あの辺りずーーっと戦争をやってるんだな…と思う。どうして人間のやることって昔も今も変わることがないんだろう?と思うと悲しくなる。

この作品の初演を知らないし映像でも観たこともないけれど、1994年と言えば、ほぼリアルタイムなユーゴスラビア内戦時。当時の受け止めはどうだったんだろうか?


ほか言い出せばいろいろ突っ込みどころはあって。

クエィドを撃ち殺してしまったあと、司令官のりんきらがそこにいた兵士に「他言無用」と言ったとはいえ、人一人消えてごまかし通せたわけはなく、れいちゃんは故国に帰ることになって(たぶん左遷か、一時的に逃してもらった)、それでも最前線で5年戦い続けたという話の流れにはちょっとリアリティがないかなー。戦時中であれば尚更軍規は厳しいはずで、上官を射殺したのを伏せたまま即刻の軍事裁判もなく、軍人として組織で戦い続けられるとはとても思えない。内戦が一応終結をみた後で、お預けにしていた軍事裁判が開かれているということなのだろうけど…現実的には裁判は後日となるとしても、軍務に戻されることはなくて本来なら収監されるべき事案かな、とは思います。

故国に帰ったシンクレアは、独立を望むルコスタ以外の他の州と連合国側の軍人として戦い続けたとのことで、モノローグで語られるようにそこにはそこのライラ(と同じ立場の女性)がいたはずで、わかっていたのに戦いをやめなかったのはなぜなのか?連合側は(民族の違う)駐屯地の人たちとうまくやっていきたい、と理想に燃えていたはずなのに、軍人として忠誠を誓った国を裏切ることができなかったのか?それとも上官を殺してしまった自分を許すことができなくて、自分に罰を与えるかのように戦いに身をおき続けたのか?そのあたりの矛盾も説明はされてない。


ライラの兄アルヴァが「もうすぐ戦いが始まるから逃げろ」と忠告にきて、「こう生きなければならないという決まりはない。全く別の自分として生きる道もあるということだ。(大意)」と諭しますが、ほんと!そこで軍人を辞めて逃げればよかったのにと思います。でもそうしたら、全然別の話しになってしまいますね。


 最後に

幕間にプログラムをもとめに行ったところ、売り場のかたが、このページを開いて見せながら売っていました。



ハイハイ、美しいわ~キラキラキラキラキラキラ