4/26(水)1330
セディナ貸切2階、3列目センターにて娘と。
今日のショーの眺め。青い月がきれいです。
そう言えば撮影はできませんが、芝居の冒頭でも正面奥、道真が満月を背負ってましたねぇ。
4/28(金)1530
A席下手、娘と。
すぐ脇が階段でしたので、銀橋の見通しがとてもよかったです。
これでマイ楽となりました。
業平と高子の道行き
芝居は心地よく流れ、一人一人の役の在り方には安心しかない。登場人物の心情も胸に響いて、いつの間にか静かに物語の世界に引き込まれていく。それこそ、深い海に沈むかのように気がつけば平安の時代にトリップ。
その静かな芝居のなかで更に幽玄の雰囲気を醸しているのが、業平と高子の道行きで、差し込まれるように現れる二人のやりとりが美しくて息をのむ。物語の伏線となる叶わなかった駆け落ちを、幻影のように何回も展開することで、藤原氏の権力への執着の強さを鮮やかに描き出す。
高子は世間には無知な藤原家のお姫様 。家を飛び出し、怖いような、それでいて浮き立つするような気持ちを大きな目のなかに映していて、その危うさに舌打ちしたくなる。彼女はこのとき18歳。寿命も長くなく成熟の早い当時としたら、立派な女だったのかもしれないけれど、蘭世の演じる高子はとても幼くて痛々しいほど。
翻って業平は驚いたことにこのとき35歳なのだ。天下の色男としてさんざん浮き名を流し、行き着いた先が娘のような年齢の高子とは、こっちはこっちで別の意味で舌打ちしたくなる。あらゆる修羅場をくぐってきたであろう業平のはずだが、ここまでの綱渡りはおそらく初のこと。追われることでアドレナリンも最高潮、正に恋に恋する状況だったとは思うけれど、、、う~む35歳。我を忘れるような恋であったのか。暮らし向きは豊かで、文化面では名誉を極めて惜しむものもなく、異性関係は思うがまま。それでも手の届きそうもない目の前のものを欲しいという純粋な思いを疑いはしないが、それは一瞬で、手に入れたとたん次のオモチャに手をのばすにちがいないのになー。何度繰り返しても学ばない男…
それはそれとして、かおとくんは恋に浮かされた35歳の業平を恥ずかしくなるほど初々しく演じていて、恋人たちの年齢差を一気に縮めてみせている。道ならぬ恋に夢中の二人は、倫理の問題はともかくその儚さは正に夢のように美しい。
手元で調べると、高子も実はなかなかのツワモノで、このあと清和天皇に入内をはたし、三人の子をもうけている。一人は陽成天皇となり、帝の母として藤原家の繁栄に寄与することに。後に僧侶との浮気が発覚して皇太后を廃されたりして、なんとも波乱の人生であったらしい。兄基経のことばを借りれば「それでこそ藤原よ」なのか。
業平のほうは、高子との駆け落ちがどの程度本気であったのか火遊びであったのかは不明だが、3000人以上の女性と浮き名を流し、天性のプレーボーイは生涯現役を貫いた模様 (笑)。
ちなみに多美子には子どもはなく、良相(春海ゆう)の企みは潰えて良房(光月るう)、基経の天下となっていったのは、後世に知られるところ。
道真を主人公に据えながら、この20歳も年長の業平の行状が物語にふくらみとおもしろみを加えていることは間違いなく、よくできた話だな~とあらためて思う。
惹かれあう非凡、道真と基経
宝塚の演目として発表されたとき、原作からキャスティングを想像して最も難しかったのが基経。
宝塚には番手があるので、主人公、そのバディ、敵役と並べると、今のキャスティングとなるのだが、基経が風間くんに似合うとは正直思えなかった。もっと言えば、(失礼なことに)できると思わなかった。冷徹な容貌、何を企んでいるのかわからない動かない表情、番手は逆になるもののちなつさんくらいの経験がないと無理なのではないか?と。しかし初見で風間基経を見て、その心配は杞憂だったと知ることに。学年のわりに落ち着いていると下級生の頃から言われ続けて、難を言えば地味に傾きがちなこと。しかし今回その持ち味がじゅうぶんに活きた。非凡でありそれゆえに老成した人物がピタリとはまっていたと思う。感心したのはセリフをしゃべっていないとき。ほかの人がしゃべっているのを聞いているときの表情が、あれこれ思わせられ過ぎる。自分とはあまり接点のなかった道真の兄吉祥丸に惹かれ、尊大な態度ながら関心を示す。まだ連載中のリアルタイム原作では、道真のことを、侮れないヤツと警戒しながら、その才能に興味を禁じ得ない様子を見せている。道真の弱点とも言える兄吉祥丸をだしに使って、ちょくちょく接触を試みてはおもしろがっているのが人間くさくていい。そんな風間くんも見てみたいと思う。
道真も自分の才能を自覚していて、学生仲間はバカにしているものの、凡人であると看破しながらも兄吉祥丸だけは慕っていた。道真と基経という稀代の非凡な人物を二人とも惹きつける、吉祥丸にどんな魅力があったのか?優しさ、純粋さ、ひたむきさ、、、自分に無いものに興味をおぼえたのだろうか。
主な人物の縦軸のからみのほかにも、長谷雄と白梅の幼なじみのようなこなれ感、良房(るうさん、重みのあるセリフ回し堪能しました)と良相の兄弟の対立、常行(ぱるくん、感情をむきだしにするの新しい)の多美子への溺愛、高子と山路(さちかさん、裾さばきが美しい!)の主従関係などたくさんの濃いからみがあって、一時間半飽きさせない。
しかも今も連載中の原作の、一部を切り取ってこの仕上がりなのだから、原作の力はもちろん、脚本演出の魅力、月組の生徒さんたちの読み込みの深さ確実さには感嘆するばかり。
何回も観劇の機会があった幸運に感謝します。
ひとことだけDeep Sea
そしてキャッチーなテーマソングが見終わってからも頭を廻る『Deep Sea』。
もしかしたらいずれ思い出し投稿するかもしれませんが、どの場面もそれぞれに趣があって飽きさせない楽しいショーでした。
今日ソワレは総見の方々の力もあり、見事に揃った拍手と手拍子 退団者のかたがたにはあたたかい大きな拍手で、ねぎらいと感謝を贈ることができてよかった。
最後にひとつだけ書いておこうと思ったのが、『秘密の花園』の場面。毎回ちなつさんの破壊力に目を奪われがちですが、れいこさんがとてもすてきな表情をしているのだ。特に奈落に沈む瞬間の不敵な目がいい!とほれぼれしてしまった
明日はいよいよ東京も千秋楽。
無事に、盛大に幕が降りますように。