1/26(木)13時半公演
友の会の当選。
一階13列上手。
初見から2週間ほど経って物語の周辺がだんだん頭にに入ってくるようになったところ。
ジョージアという国、私にはグルジアとロシア語読みの方がなじみがありますが、国の成り立ちから言ってやはりジョージアと読んだ(呼んだ)方が理屈にあっていそうです。昨年からのロシアのウクライナ侵攻と同様、近年ジョージアでも同じようなことがあったこのは記憶に新しい。ロシアが侵攻し、ジョージアの一部に一方的に独立を宣言、承認して今に至っています。
地理的にはこんな感じ
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面積は北海道よりやや小さいくらい、人口は現在400万人ほどだそうで、北方の広大なロシア連邦から見ると本当に小国。ご覧のとおり、ロシアを挟んでウクライナと対称にあたり、黒海に面した領土は東と西を結ぶ要衝として古くから交易が盛んだったそうで、滋味に富み豊かな実りをもたらす土地。そのせいで古来周辺から狙われ続け、壮絶な戦いの歴史だったようです。
キリスト教徒とイスラム教徒が共存し、長い間に民族の混血も進み、単一民族として島国に生まれ育つ身としては、もはやジョージアのアイデンティティとはなんなのか?わからないほどですが、やはりその土地に根ざした人々なりの愛国心は強く、征服者が来ては去り来ては去っても、綿々と続いてきたジョージアの強さ。農耕を営なむ民族ながらも武闘に優れ、今も格闘技の強さはオリンピックなどで知るところ。やはり侵略にさらされ続けた歴史によるものも大きいのかな、と。
演劇で背景に触れることで、これまでなじみのなかった国や人々を知るきっかけにもなることは大きな楽しみでもありますね。
この物語は1200年代(日本だと鎌倉時代)、ローマ帝国とモンゴル帝国の二大勢力のまん中にあって国を守ろうとする人々のお話し。困難のさなかにあって相手の幸せだけを願う人間の強さを描いたお話し。
いつの時代、どの国にあっても、より良い明日を目指して生きた人がいて、でもそれもいっときの夢のようなものという諸行無常を漂わせた作品が、やはり日本原作っぽいなとも思いました。
ジョージアの歴史をざっとひもとくだけで、歴史のうねりに翻弄されながらもよくも現代にまで繋がってきたことに感嘆するばかり。そんな国の歴史に思いをはせつつの、2回目の観劇でした。
ジョージアにはジョージアの、ホラズムにはホラズムの、モンゴルにはモンゴルの、ルームセルジュークにはルームセルジュークの、正義があり、こんなに後世となっても誰が正しいとも言えない、歴史とはそんなものですが、それぞれの正義を守ろうとする人々の心情が深く描かれていて、見応えがありました。
本当は戦いでなく話し合いで解決できたらとは思いますが、どうしても戦いにならざるを得なかった政情に苦しむディミトリの気持ちが切なくて、2回目の今日もほろり。母性をくすぐります。
別の意味でアヴァクの猪突猛進さも私は好き。物語のなかでは黒寄りの立場ながら、信ずるもののためには策略も厭わず命も投げ出す、直情径行の単純さ。味方になればこんなに強い味方もない。彼が変わっていくのもとてもクリアで好感が持てました。ありちゃん、新境地かと。
1回目の観劇でもせおっちのジャラルッデイーンの濃さには囚われましたが、国を亡くしてなお戦う将のバイタリティーに圧倒されますね。そして戦いという非日常のなかにあっても失わない、「美しいものが好き」という性向ももはや呆れるほどに?説得力があり、こんなキャラの濃い人物を演じるせおっちの役幅の広さを改めて知った気がします。
やはりどうしても触れたいのが、チンギス・ハーンの輝咲玲央。大したセリフはないながら、いやむしろないからこその立ち姿と笑い声は秀逸でした。いつか放送があったら、録画してこのシーンだけリピートして仔細に見たいですね。92期。真風、ちなつさん、彩凪さんらと同期。入団時の成績は振るわなくて、スター路線からは外れたものの、キャリアを積み重ね居場所を得てきた苦労人ですよね。それでキザキ、歌うまくないですか?!ショーのほうで独唱するシーンがあり、こんなに長いフレーズを聞いたのは初ですが、よくもこんなシンガーが今まで隠れていたもの、と。かなりハスキーでなんともすてきな声です。
で、幕間に宙組の退団者発表。
いろいろショックで、おかげでショーの記憶があまりありません…
拍手や手拍子のタイミングが難しいな~と考えながら、音と光に身を任せて過ごしました。気がつくとフィナーレで…
こっちゃんとひっとんの持ってるシャンシャンに付いてる房が、ウクライナ国旗の色だな~ということがとても印象に残りました。他の人のは青と銀色のリボンでしたので、トップコンビだけ色と素材を変えたとも見えますが、このご時世で有名になった黄色とブルーのウクライナ国旗。重ねて見るかもしれないということは、想定内の演出だったのではないのかなー?
反戦メッセージと言っては勘ぐり過ぎかもしれませんが、芝居の舞台となった(同じような立場の)ジョージアに呼応していた気がしました。
エンタメと言えども、時代に無関係ではいられない。作る人も、見る人も。