12/16(金)1330。雪組『蒼穹の昴』。団体観劇のお誘いに娘と。
14列目の下手にて二回目の観劇。

人物の相関関係は心配していたほどわかりにくくはなく、架空の人物文秀と春児(原作では後者が主人公)を軸に、歴史をからめた大河ドラマといった出来。

公開前から話題だった5人もの専科生の出演。豪華な衣裳に加え、楽曲も壮大で天下国家を語る作品にふさわしい歌い上げ。

今日はセンター付近のことを。

私は咲ちゃんにはあまり柄の悪い出自のよくない役は似合わないと思ってて、庶民より貴族、貧乏人より金持ちのぼんぼん。シュッとスマートで優男ふうなのが似合うのではと感じていたので、シティハンターや夢介のような役は持ち味が活かしきれずもったいないなーと思っていた。今回はそこそこお金もある家の(でないと、科挙が受けられない)次男坊(少なくとも長男でない)という設定なので、ドンピシャ。
贅沢を言えば、中国の衣裳よりは西洋の宮廷服の方が似合いそうなスタイルではあるが、ストンとした中国風の衣裳もそつなく着こなしていた。歌唱にすこーし難があると言えば難があるが、銀橋での主題歌のソロは堂々としたものだったし、この程度なら許容範囲。ほかにダンスやビジュアルや埋め合わせできるものがいくらでもある華やかなスターだし。

この公演で退団の希和ちゃん、出番も少ないし一幕ではほとんどボロをまとった姿で残念でしかたないが、控えめな希和ちゃんらしい最後だったかなと妙に納得。ゆったりした曲のソロは高音がとてもきれいだったし、フィナーレでのデュエットダンスは咲ちゃんとの信頼関係が現れているようで胸熱。

あーさは、これまでわりにふざけた役が多くて実力をはかりかねていたが、今回の体当たりの汚れ役?で真価を見られた気がする。本気の演技、本気の歌唱に触れて(トップもありかも)と初めて思えた。顔だけじゃないことを証明したかたち。京劇を演じるときの引き締まった表情はよかったなー。

そらは望海さん去りしあと、たぶん歌唱補強で雪組にやってきた。その期待にいかんなく応えてそれ以上。歌ってよし、しゃべってよし、踊ってよし。いるだけで場がしまる存在感を発揮。つい目が寄っていってしまう。女官(夕夏ちゃん)に迫られて「私には妻と子がおります。」とバッサリ。妻子持ちはデフォルトなのか?そんな雰囲気を醸し出す色気がある。

実は私は大の上級生好き。
なので、舞台の始まりの居酒屋の場面がすごいツボ。咲ちゃんを囲む悪友たち、まなはる、あすくん、しゅわっち、それに酒場の店主が汝鳥さん、合格の手紙を持ってくるのがにわさんときては、もうマスクの下で頬が緩みっぱなし。

豪華な衣裳の陰で意外と地味だったのがセットかと。大階段を使った宮廷の場面以外は盆や走行式舞台などの大がかりな転換はあまり使われず、映像も空や水辺などほぼ背景のみ。
室内での芝居のときは、壁が三方から寄せ集まって部屋を作り、そこでの芝居が終わると壁を(人力で?)動かしてセットを崩す。市場もそれぞれの露店は可動式になっていて、場面が変わるときには自走して?(あるいは裏で人が押して)袖に収納。いかにも昔ながらの大道具の仕事っぽくて職人技とでも言うべきか。
最たるものはラストシーンで、赤い壁が遠くから続いている中を春児が走ってきて文秀を見送ると、その赤い壁を裏返して船の胴体に変わるというだまし絵みたいなセット。船の帆先を形作りながら現れるのが士官(船員)たちなので出航を演出するには自然なかたちに見えて、裏方も役の一部として利用する工夫に感心するばかり。舞台装置を使った派手な転換をしなくても魅せるのは可能なことを証明した。

国のこと、民のことを考えて行動する情熱家で、頭もよくて、顔もいいという、本当に正統派の主人公。咲ちゃんが演るとはまりすぎるほどのはまり役。原作が長編、壮大過ぎて二時間半に縮めて完結するようにまとめるのは至難だったと思うが、なんの予習なく見て問題なかったし、セットのさまざまな工夫も楽しめたし、じっくり少人数での芝居も長くなく短すぎず場面の転換も自然で、わずかな出番でも演者のそれぞれの本気も見られて、かなり良作だったと思う。
ただ東京でも交換譲渡サイトにチケットの売却がたくさん出ていて、評価が割れたようで残念。やはりとっつきにくい素材ではあったかな…

来週日曜には千秋楽。無事に西東で完走走できそうでよかった。
来週もう一回観て、今年の観劇納めとなる予定。