後先になりましたが、芝居の話です。
シャーロック・ホームズと聞いて、子どもの頃のことをいっきに思い出しました。本を買うのにお金を惜しまなかった父のお陰で、私の本棚にはぎっしり名作全集的なものが詰まっていました。その中にシャーロック・ホームズも。小学生の私にとっては気味悪い話だった『まだらの紐』や、『緋色の研究』もたしか。後に推理小説を好きになっていった礎かなぁ、と。
そしてそんなホームズのイメージは、(映像の影響もあると思いますが)痩せていて、背が高く、パイプを手にもち、インバネスコートに鹿打帽、気難しそうな人物というもので、どう考えても真風のイメージと重ならなかったのですが、舞台上に彼女を見ると、(あ、こんな感じかもしれない)と思えてしまう説得力。笑
小説のイメージよりずっと、ソフトで人間味溢れる感じにつくってて、生きて血が通ったホームズに、魅了されました。
私は特にイギリス好きでもないので、19世紀後半に世間を騒がせた切り裂きジャックについてもその詳細を知らず、聞いたことがあるくらいのレベル。娼婦ばかり狙われたことのみセンセーショナルに伝えられていますが、今手元で調べてみると犠牲者は5人という未解決事件。一言で説明すれば、その未解決事件を国家的陰謀に絡めてホームズの活躍を描いている作品。
巷(ヅカ界隈)で噂の『鎖』というワードは、その悪党集団の符丁(暗号)が鎖の輪の数で決められていたということのようで。それと、人を縛るシガラミと重ねて効果的に使われています。
なにしろ初日開けて2日目ですのでほぼなんの情報もなく、見始めたときには、(舞台上に)人が多いのにかるく混乱。誰が主要人物なのか?衣装が敵も味方もダークスーツが多いために、人の判別が付きにくくて…プロローグは導入をただ楽しむだけであまりなにか考えない方がいいかと。
そんななかで潤花ちゃん目立ちます。まったく堂々としたもの。スカイレポートでも、落ち着いてますね、と上級生から感心されていた度胸の良さ!本人の心内は本当にはわかりませんが、舞台度胸は抜群です。
プロローグが終わると、段々キャラクターがハッキリしてきて、退団者に目立つ役が振られているのがわかって泣けます
浮浪者の少年役の子達が数人~10人以下くらいいるのですが、たぶん下級生でしょうが(区別つかずで申し訳ない)それぞれメガネやら、髪型やらで個性を演出していてまったくかわいらしい。
この後専科に組替予定のりんきら、いい役付きで熱演。個性的で歌もうまいし、専科での活躍が期待されますね。
きゃのんさんは通し役ではないのかもしれないですが(スミマセン、まだプログラム確認してません)、とにかくどの場面でも目立つ位置で、何度も何度もお顔を認識しました。次作品からはこの優しい丸顔がいないと思うとさみしいです。
次第にうまいこと話しに引き込まれていき、満を持してモリアーティが登場します。いつものききちゃんより、テンション高め声も高めの、一種狂気の人を演じています。頭がよく、エキセントリックで、数年前事件になったM某の言動を思い起こしました。この時代だから暴力の方に向かっていますが、現代なら経済犯罪に向かいそうな人物です。
分かりやすい善と悪の対立でしたし、宝塚をあまり見ない娘も、わからなかったと言うことの多い夫も、筋書きはよくわかったとのことで、生田先生のメッセージもストレートに伝わりました。
最後にモリアーティを道ずれに滝に飛び込むホームズが、「愛する人の為に死ねるのが、人間の本質だ!」(←大意)と叫ぶのに、思わずジンとくる単純なワタクシなのでした。
真風、潤花、ききの三人がラストシーンで(夢か幻のように)舞台に立ち、暗転して普通ならそれで幕だと思うのですが、一度明るくなって人が一人もいない舞台が現れ、真風の荷物と、ききちゃんの帽子だけがポツンと残ってから幕が降りるのが思わせぶりで、(え?これからの宙組の暗示か?と)そっちの方の結末の続きをグルグル考えてしまいました。
7月後半にもう一度大劇場に行く予定でいます。それまでにもう少し消化できるかな。
最後に、芝居の前に107期生の口上がありました。
千秋楽までにそれぞれ4回ずつ登壇しますが、まだどのこも初の口上。みんな緊張して上気して声を張り上げて述べるのに、(うんうん)と頷きながら、オバサン感動でうるうるしました(;_;)
寿組長が初舞台生を率いて出てきて、「右も左もわからないひよっこでございますが、隅から隅までズズズイーっとよろしくお願い申し上げます」というのを期待していましたが(笑)、組長の挨拶は初舞台生を紹介する放送のみ。
コロナの関係か、幕開けすっしーさんに出番があるかなのかはわかりませんが、これから羽ばたく雛鳥たちは、組長の先導もなく同期だけで舞台に出てきて立派にご挨拶を果たしました。
いや~、おみごと