こんなに初日の幕が上がってすぐに観劇するのははじめてのことです。なるべく情報を入れないようにしようと思っていても、だいたいがあちこちから入るいろんな感想が目に止まって、なんとなくイメージができてくるものなのですが、4日しか経ってないので「ネタバレ慎みます」という但し書きが多く、いつもに増して雲をつかむような印象のまま、幕が上がってしまいました。
そして私の拙い文章ではネタバレを回避しながら感想を綴ることは難しいので、自分で観るまで知りたくないかたはここで引き返してください。

1/5、13時。2階前方センターで観劇です。

初見の感想は「望海さん、爆発だ~ 爆弾 」
そしてだいもん、歌いまくります。

ベートーベンとナポレオンとゲーテ。
どの人物も誰もが知る巨人ですが、生きていた時代と場所はどの程度重なっていたのか、交流はあったのかについては私は無知です。個人的に最もなじみがあるのはベートーベンでしょうか。小さい頃からピアノを習っていたし、20代までクラシックばかり聞いていたので。
この一人一人がひとつの物語になってしまうような巨星たちを、一時間半の中にどう詰めこむか…ウエクミ先生が挑んだのはそんな挑戦かと。

芝居は天国の裁きの場から。「人生お疲れさま~」という優しい調べの中で次々と亡者が天国の門をくぐっていく(ん?アナワかww)。そこで留められる三人の音楽家、モーツァルト、ヘンデル、テレマンが全体を通しての狂言回しを担います。この三人はいろんな場面に通し役で出ているので、お得な役どころ。特に彩みちるちゃん、モーツァルトの子どもっぽい側面をかわいらしく演じてます。ほかの二人もサンコイチのような感じで場面の外で小芝居をしているので、ふと気がつくと笑えたり。

ベートーベンはその三人の後継者という事で、オーケストラピット辺りにバーンと登場。実際の演奏会の様子を再現しているところが、オーケストラピットに本物のオーケストラが入っていない今だからできる演出で、なんだかそれも痛し痒しというか。クラシック界の巨匠を描く芝居なのに、本物のオーケストラが今こそ欲しい時なのに、いないことでできるというパラドックス。いや、逆境を逆手にとってとポジティブに考えた方がいいんでしょうね。

きぃちゃんもひそかに登場します。「謎の女」。いや、なに?トップ娘役で真っ黒な衣装、影のようにつきまとう不思議な存在。相手役でいて、そうでない。難解なお役を振りましたね~。これまではどちらかと言えば、望海さんの方がつきまとう(と言うと語弊がありますが)役でしたが、今回はきぃちゃんがつきまとうポジション。ベタなラブラブではありませんが、この二人らしいと言えるのかも。あ〰️!でも二人のファンにはきっとストレスのたまる脚本。どうして最後くらい、ベタなラブストーリーをみせてくれないの~?という本音の部分は胸にしまって。

ベートーベンとナポレオンの邂逅は史実では無いようで、時代背景としてヨーロッパの歴史が描かれ、時の英雄ナポレオンの生涯がバックに流れていきます。このあたり、ヅカファンとしては得意な時代(笑)、フランス側からだけでなく、ヨーロッパの他の国(主に貴族階級)からどう思われていたかを多角的に見ると、こんな感じなんだ~と。
ベートーベンとナポレオンは熱量の点で似た人物として描かれていて、とりわけ後半の、ベートーヴェンが失意のうちに見た夢の中で、「音楽と戦略が似ている」、とナポレオンと意気投合する場面では二人の熱量がシンクロするのがおもしろい。兵士の動きを楽譜として展開し、音楽に合わせてフォーメーションを作っていくのを、個人的にはもっと見ていたかった。

ゲーテとはからみが最も難しいところで、実際は年齢的にはかなり上のゲーテは、本作ではベートーベンの良心?として心の拠り所となっている(らしい)。当時の文化人として成功していたゲーテは、非常にオトナの対応ができた人らしく、支配階級からも尊敬され、さりとてそれを自身の私利私欲に利用するわけでもなく節度を保ち、ある種の突き抜けた孤高の人物として評価されていた模様。ベートーベンは自分の理解者はゲーテだけと思い詰めて迫るものの、彼からは分別を持つように諭されてがっかりしてしまうのが若干かわいそうショボーン  翔ちゃんは望海さんよりは学年下ですが、トップを陰で支える立場としてそういう役回りもあったと思うので、現実も少しだけ重なって見えてくる気がします。

ほかにもいろいろ書きたいことがありますが、長くなるので詳細はまた次に譲って。
しかもショーについてはまったく書けなかった…

最後に。
ラストに向かって雪組生が望海ベートーヴェンを囲み、次第にせりあがる指揮台の上で、頭を、全身を振り回して指揮パフォーマンスをする望海さんは正に、「爆発だ~  !!

最後まであら筋や役中人物の気持ちを追って集中していた私の心も、そこでほっと気が緩んで決壊しました。正直(よかったね~)、と気持ちが浄化される思い。ずんと沈みこむラストでなくて心底よかったわ。

未来に希望を。
ウエクミ先生らしいはなむけ。