劇団四季でクラウドファンディングが始まって話題になっていますね。以前からファンの間では、宝塚歌劇でも寄付させてほしいというTwitterでの呟きなどを散見しました。きっとこれでまた、宝塚でもクラウドファンディングをというような希望も出てくるかもしれませんが、しかし今のところ、Blu-rayなどのグッズを買ったり、スカステに加入したりするなど合法的なお布施をして貢献する以外にないようです。

ご存知の通り、宝塚歌劇は阪急阪神ホールディングスのエンターティメント事業の一つであり、阪神タイガースと立ち位置的には同じです。鉄道などの都市交通、不動産事業、旅行、ホテル、情報通信事業と、多角的な経営をしている巨大な企業で、コロナ禍で打撃を受けたことはまちがいないでしょうが、正直母体が大きすぎて、経営の全体像が見えないですね。何をどこにどう持っていって、収支を最終的にどういうふうに落し込むのか、いずれ決算を見るしかありません。

「演劇だけで生計を立てることを活動の根幹の一つとしている」(←この度のクラウドファンディング公式より)劇団四季とは、根本的に寄って立つところが違うのですね。劇団四季は1億円を目標としているそうで、残り105日という今で、既に5000万円以上が集まっていました。もちろん一時的には助けにはなると思いますが、宝塚歌劇団の場合でいえば、阪急阪神ホールディングスという企業において、その額がどの程度の支えになるかはビミョーかもしれません。
すごくざっくりですが、チケットが一枚10000円という概算で、一回公演すればチケットだけで2000万円の売り上げが立ちます。単純計算ですが5回の公演で1億円に達します。クラウドファンディングで寄付を募っても、リターンを用意すれば半分は観客のチケット代金として回収されるとはいえ、性格的には前受金ということですから、負債を背負うことになります。10万円寄付して権利を放棄するという少数派もいるかもしれないし、寄せてくれるお気持ちはありがたいとはいえ、興行再開に勝るカンフル剤はないということです。


劇団四季では寄付のリターンとして、寄付額の半額分のチケット購入補助クーポンを用意するそうですが、あくまで補助クーポンであって、チケットの確保を約束するものではなさそうです。もちろん、全て寄付してもいいという熱烈な支持者にとっては惜しいお金ではないと思いますが、たとえば宝塚で、10万円寄付してチケットの購入時に5万円分を使えますと言われても、そもそもチケットが手に入るの?と思いますよね。寄付するなら見返りを求めないことがお約束にならないと、不満が残っては元も子もなくなります。

結局のところ感染防止にできるだけ配慮した上で、周りの様子を見ながらソロソロと動き出すというのが今できるベストなこと。
そして何度となく言ってますが、宝塚の観劇スタイルとして客席降りさえなければ、観客からの感染はほぼ考えられない。あるとしたら最も可能性が高そうなのは、舞台の上。もしくは、舞台から最前列の観客。最近の新宿歌舞伎町のしらみつぶしの検査でもわかるように、若い人たちは無症状の場合が多い。だとしたら、稽古を含めて舞台での接触機会を極力避ける演出にせざるを得なくなるでしょう。考えたくはありませんが、組んでのデュエットダンスや、ラインダンスがなくなるかも、と思っているのは私だけではないのでは?生オケがしばらくないのと同じく、セリフや歌唱も録音に(いわゆる口パク)なるのでは?とまで考えたりします。まさかマスクやフェイスシールドをして舞台に立つことはないとは思いますが…

演劇としても生の舞台の良さを残しつつ、宝塚歌劇の宝塚歌劇たる所以を損なうことなく、どうしたら再開できるのか?暗中模索のなかで、今はそのスタートを息をのんで見守っています。

順調にスタートできますように。
なにごともなく千秋楽を迎えられますように。

もはや祈るような気持ちです。