このジョニー阿部という男。なんといきなり、僕を売れない営業と決めつけ(当たっているが)自分に営業をするよう、持ちかけてきた。さらに、商品が気に入れば買ってくれるということだ。

 

なんだかよくわからない展開だが、これはラッキーだ。そう考え、僕はカバンから早速商品の資料を取り出した。そして、いつものように、熱く、熱心に商品をジョニー阿部氏に説明した。

 

どれだけ話しただろうか。5分?10分?いやそれ以上?とにかく僕はガムシャラに商品をプレゼンした。自慢ではないが、商品に関しての知識は、ベテラン社員にも負けてはいないという自負はある。

 

それだけ僕は、商品を熟知しているし、その良さもわかる。しかし、その良さをみんな解ってくれない。もしかしたら、商品説明が足りないのかもしれない。僕はそう思い、特に僕のことを売れない営業マンと認定した、このジョニー阿部氏に対しては、いつもよりも詳しく商品を紹介した。

 

自分で言うのも変だが、今回は会心のプレゼンだった。自分の中にもやりきった感が満載だ。手応えあり。そう思い、ジョニー阿部氏の表情を伺うと、ジョニー阿部氏も驚いた顔を見せていた。

 

「いやいや驚きました。どうやら私は思い違いをしてたようです。あなたは熱心な営業マンですね・・・」

 

どうだ。と心の中で叫び、僕は少し得意げに尋ねた。

 

「ありがとうございます。それで、いかがでしょうか?この商品は?」

 

うん。とジョニー阿部氏は頷き、こう言った。

 

「あなたは熱心な営業マンだ。しかし、やはり売れない営業マンだ」

 

僕は頭をハンマーで殴られたような感覚を覚えた。なぜだ。今回は会心の出来だったはずだ。それに今、熱心だと褒めてくれたじゃないか!?

 

「え!?なぜなんですか?自分で言うのもなんですが、結構いい線いってると思いますよ!!」

 

こんなこと、もちろん顧客には言わない。しかし、このジョニー阿部とかいう、さっき会ったばかりの顧客でもない人物には、本音を言ってもいいだろう。

 

「その考えがダメなんです。だからあなたは売れない営業マンなんですよ」

 

ジョニー阿部氏の顔から笑顔が消え、多少厳しい顔つきになった。

 

「え・・・なにが?なにがダメだったんですか?」

 

その気迫というか雰囲気に押され、僕のはトーンダウンする。

 

「あなたは誰に、何を紹介したいのですか?」

 

続く