人間は「感情の動物」と言われる。これはクールな人でも例外ではない様子だ。50年以上生きているが、「絶対に笑わない人間」「絶対に怒らない人間」のそんざいは聞いたことがない。ギャンブラーの中にはポーカーフェイスの人もいるだろうが、ウソ発見器を使えば、行動から感情のブレが分かることだろう。
ところで、人間を一撃で笑わせるものがある。良い例がコメディアンの一発ギャグ。非常に短い言葉や仕草なのだが、一撃で観客を笑わせる。大物になるとテレビを通して日本中を笑わせるのだから、それは、とにかく凄い。
しかし、人を笑わせるのは、何もコメディアンの専売特許ではない。誰でも可能なものがある。
良い例はカツラの装着だ。「誰でも」は言い過ぎだろうが、「誰でも」と言っても間違いとは言えないだろう。
ちなみに、男のカツラは見る人が見れば装着が分かるようだ。微妙なズレを見破るらしい。実際、自分の会社の後輩は出入り業者のカツラ装着を見破った。その後輩に言わせれば、そのスジでは一騎当千の百戦錬磨らしい。カネにならない特技ではあるが、ある意味で男性諸氏を恐怖に突き落とす必殺ワザのようである。
さて、そこで考えたい。あくまでもフィクションだが、考察の価値は少しだけあると思う。
それは、精神科医のカツラ装着だ。
前にも述べたように、カツラ装着を見抜く天才は案外いる。その人が仮に、そのような医者の診察を受けたならば、誤診のリスクがないだろうか……と疑ってしまうのである。
だって、仮に鬱であったとしても、目の前にカツラ装着の医者……しかも何食わぬ顔で診察をしている医者がいるならば、十分に笑いのネタになる。ついつい笑ってしまうかもしれない。
ところが、そこに悲劇は発生し得る。……必要以上にテンションが高いと評価される可能性がある。と言うことだ。
例えば、ストレスのために気分が落ち込んだ人がそのような精神科医に掛かった場合。仮に、その装着を見破ったならば、どうなるだろうか。恐らくであるが笑いをこらえるだろう。
それを見た医者はどんな診断を下すだろうか。もしかしたら、適応障害のような疾患を双極性障害と誤診をする可能性が……多分ある。
適用障害と双極性障害は薬が違うはずだ。そして、間違った投与をすると危険だろう。
そして、その誤診が医師のカツラの装着だとしたならば……笑うに笑えない事態になるかも知れない。
それを考えると、医師のカツラ装着は倫理規定として禁止して欲しい、とも思うのではあるが、極めて困難な気がする。当の装着医師の断固たる反対によって、否決されることだろう。
つまらんなぁ。
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